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僕が寂しい時も側にいます。 19話

猫にまで似てるって言われるくらいに似てるのか? 自分は似てないと思うのに、似てると言われる。 神林もそうだった。 ミサキと顔合わせした時に似てる!!って何か嬉しそうにしてやがったもんな。 ミサキは嫌いじゃない。 でも、ミサキに似てるって事はあの人に似てるって事になる。 だって、ミサキはあの人に雰囲気とか、色々と似てる。 ああ!!嫌になる。 「詰め込んだ箱、持って行ってくる」 段ボール箱を手にする。 「あ、僕もいきます!」 慌てる碧。 「碧はまだ、ジュース飲んでなさい」 ニコリと碧に微笑む。 碧を見ると心が和む。 アイツの事なんて考えている暇ないじゃないか、今は引っ越しだろ? 頭の中の邪念を振り払う。 段ボール箱を抱え、自分の部屋のドアの前にきた。 鍵を取り出す為に段ボール箱を足元へ置くとぴょんと諭吉が飛び乗ってきた。 「お前、いつの間に!また、碧が捜すだろ?」 「ニッシーが出た時に一緒に出たけん、碧はニッシーと一緒に行くと確認したけん、心配はせん。」 「あ、そっ、」 西島は鍵を開ける。 「ニッシー機嫌悪かやろ?ワシが似とる言うたけんや?」 ドアが開くと諭吉は先導するように中へ。 「ちがう!機嫌悪くない!」 西島は段ボール箱を抱え、部屋へ。 「ほんと、ニッシーはわかりやすか男やね。」 尻尾で軽く叩かれた。 くそう!なんか小馬鹿にされているようだ。 「この部屋には一切、姉ちゃんのニオイがせんけん、入れた事なかとやろ?」 うっ!さすが動物!鼻が効く。 「成人したらそんなもんだろ?」 「ニッシーは家族の事、言わんな。」 「たいした家族じゃないし」 「碧には全部話してやれよな。恋人やろ?」 「はっ?」 「ニッシーが全部話してない事くらいわかるとぞ。親とか」 「親はいない!!」 西島は途端に不機嫌になる。 「その言い方だと、おるな。」 ああ!くそ!動物は勘が良すぎて嫌だ! 「親だって思ってないから、居ないも同然」 「人間は面倒くさかね。ワシら猫は1年も経たずに親から離れるとけど、ワシの親は車に跳ねられて死んだ。公園の猫と同じばい。ばってん、他の野良の母猫がワシを拾うてくれてな。生き長らえた。ニッシーだって、成人するまで育ててもろうたとじゃなかや?」 諭吉も公園の猫と同じ。 西島はしゃがむと諭吉の頭を撫でた。 「確かに育てて貰ったよ。留学したいって言えば金出してくれたし、色々とワガママいっても文句言わずやってくれた……だから、余計に嫌いなんだよ。心の中では何考えてるか分かんないだろ?俺は愛人の子だし。引き取られたのは小学生くらいだった。突然現れて……父親って言われても実感なくて……母親には再婚相手がいて、その人が父親だって思ってたから。だから、裏切られた気持ちになった……引き取りたいって言われた時、母親も義父も手放さないって思ったのに、アッサリと……金積まれたんだ。金で俺は買われていった。バカみたいだろ?」 西島は諭吉の頭をグリグリと撫でまくる。 「ニッシーは母ちゃんとおりたかったんか?」 「………そうかも。それなりに幸せだったから。義父は俺を可愛がってくれてて、本当の父親だって疑わなかったくらいに」 「ニッシーが愛されて育ってたってワシには分かっとったぞ。碧ばみてみろ。可愛がられて育った子は素直で純粋ばい。ニッシーもそうやろ?公園の猫を可愛がったり、碧を大事にしたり。動物はな鼻が効く。この人は良い人か悪い人か。猫達は誰カレ構わず媚売るわけやない。優しい人ば嗅ぎ分ける」 諭吉はゴロゴロと喉を鳴らす。 「あの子猫はニッシーのニオイばちゃんと嗅ぎ分けとる。だけん、ニッシーに懐いとる」 猫に………慰められてしまった。 西島は少し笑って、 「ありがと諭吉。俺は要らない子なのかな?って貰われて直ぐ、ずっと泣いてた。ショックで……いつか、気が変わって迎えにきてくれるんじゃないかって、期待もした。迎えなんて来なかったけどさ。……しばらくして、住んでた所にコッソリ戻った事あるんだ。でも、もう引っ越してた。その時に悟った。ああ、もう、完全に捨てられたって」 「ニッシー、ちゃんと碧に話せよ」 「………」 「気持ち、全部言って楽になれ。ニッシーの中にはまだ泣いてる子供が住んでる。大人にしてやれ」 「なんだよ、ソレ?」 「心に閉まったモノを全部だせば、スッキリするやろ?それに碧に隠し事とかすんな。」 ……なぜ、俺は猫に人生相談してるんだろ?って思って笑ってしまった。 ◆◆◆◆◆ 「ちひろさん、何か元気なかった気がします」 荷物を詰めながら碧はそう言った。 神林には元気がない理由はわかっていた。 ミサキに碧が会った事。 いつかは紹介するつもりだったんだろうけど。 ミサキ経由で父親に碧の存在を知られるのを嫌がっている。 けれど、理解ない人ではないと神林は知っている。 西島の意地と、父親の気遣いのズレ。 本音で語り合わずに随分と月日が経っている。 いい加減になんとかしてやりたいんだけどな。 神林は悩む。 ミサキに言われた食事会も素直に行かないだろう。 「神林先生はちひろさんと中学生の時から仲良しなんですよね?ちひろさんはどんな子供でしたか?」 瞳をキラキラさせて聞いてくる碧。

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