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僕が寂しい時も側にいます。 21話

人生の中で1番泣いたかも知れない。 声が枯れるくらいに行きたくないと叫んで泣いた。 ワガママは言わない! おもちゃも要らない! 家の手伝いもサボらない! 勉強も頑張る! 子供が思いつく置いてもらう為の条件を一生懸命考えて言葉にした。 泣いて頼んでも、お願いしても、……… 一緒に暮らす事が出来なくなってしまった。 頭の中ではどうして?って疑問ばかり。 あんなに楽しい毎日を送ってた。 自分に何か悪い所があったのだろうか? 色々と考えた。 でも、答えは見つからない。 見つからないまま月日だけは過ぎていく。 そして、自分の誕生日の月がきた。 毎年、母親がケーキ焼いてくれて、プレゼントたくさん貰って、友達呼んで誕生日会を行っていたのに、今年は1人。 前の年の誕生日に「来年の誕生日には旅行しようか?ちひろ、どこいきたい?」なんて父親に言われた。 あれは全部嘘だったの? 誕生日の日、家をコッソリ抜け出した。 もしかしたら、あの場所で待っててくれているかも知れない。そんな淡い期待を胸に。 でも……… 既に引っ越していた。 その瞬間に、ああ!もう自分は要らない人間なんだと確信してしまった。 来なければ良かったのだ。 傷つくだけなのに。 何を期待したのだろう? 馬鹿みたいだ。 立ち尽くす自分を保護してくれたのは本当の父親に雇われた男性。 ボディガードとか言われた。 泣いてる自分の頭を撫でてくれた。 そして、帰ろう。と手を繋がれた。 嫌だと拒否しけど、結局は戻るしかなかった。 本当は両親は自分を待っていてくれる。 そう信じたかったのに……あっさりと壊れたのだ。 そして、お金を積まれていた事を後から知った。 大人なんて嫌い。 でも、1番自分が嫌い。 そう思って日々を過ごした。 「だから、誕生日は嫌いなんだ。捨てられたあの日を思い出すから」 西島は過去を掻い摘んで話した。 話を聞いた碧は思った通り大きな瞳から大粒の涙を零した。 「ちひろさ……しら、しらなくて……ごめんなさ」 言葉を詰まらせながら大泣きする碧を引き寄せるとギュッと抱きしめた。 「いいんだよ。話してなかったし……それに碧が泣く事ないよ?」 腕の中で泣きじゃくる碧の頭を撫でる。 「うえっ…、ぼくは……僕が、ずっと、そばにいます……ずっと、ずっと、そばにいます!だから、ちひろさんも泣いてください」 碧の言葉にえっ?となった。 「もう、泣かないよ。十分に大人だ」 「ちが、います……次、辛いことがもし、あったら僕がギュッってしますから、ちひろさんをギュッって、寂しくないように」 そう言って碧は西島の背中に手を回すとギュッと抱きしめた。 「碧……」 可愛いな。と心から思う。 「ありがと碧」 西島もギュッと力強く碧を抱きしめる。 ◆◆◆◆ 「やっぱり僕!ちひろさんが嫌だって言ってもお誕生日会します!」 散々泣いた碧。ようやく落ち着いたら、そんな事を言い出した。 「辛い時って楽しい事で上書きするといいんだってお父……いや、父が言ってました!」 「碧……ありがと。ほんと、いいんだよ?」 西島は笑って碧の頭を軽く叩く。 「あ、じゃあ、こうしましょう!ちひろさんが僕に出会う為に生まれたお祝いの日会」 碧はドヤ顔でそう言ったものの、冷静になってみると、恥ずかしい言葉をいま、口にした? 「あ、いや、なんか図々しいですね」 真っ赤な顔で俯く。 「あはは、そうだね。それいいね。それならやってもいいかもな。」 西島は笑いながらに言う。 「本当ですか?」 言って良かったと思った瞬間。 「碧はいつも俺を元気にしてくれるよな……ほんと、ありがと碧」 碧の頬に手をあて、顔を近づける瞬間。 「あの~、もしもし、俺が居るって覚えてる?」 神林の咳払いと共にキスを静止する言葉に我にかえる2人。 「いや、いいけどね。慣れたし………でも、つくづく思うよ、碧ちゃんがちひろの恋人で良かったってさ。これからも千尋をよろしくね」 神林は碧の頭をグリグリと撫でる。 「は、はい!」 力強く返事をする碧。 「あ、あの、ちひろさん、これからちひろさんが寂しい時は必ず側にいます!それを忘れないで下さい。泣きたい時も僕がギュッって抱きしめるから我慢しないでくださいね」 そう言ってニッコリ笑う碧は大人びてみえた。 「ありがと碧」 何度お礼を言っても足りないくらいの愛情を惜しみなくくれる可愛い恋人。 本当に出会えて良かった。

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