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ずーっと好きです。

◆◆◆◆ 中断していた引っ越しの続きを始める3人。 碧はクローゼットから洋服を全て出し、たたんで箱に詰めている。 詰め終わった段ボール箱に封をしている西島の横に段ボール箱を抱えた神林がきた。 「ほんと、碧ちゃんって可愛いよな。」 「うん、そうだな。出会えて本当に良かったよ。あと、神林も」 「へ?」 急な言葉に力が抜けたような間抜けな声を出す神林。 「1番感謝してる。神林だけだからな、中学からずっと、クソ生意気な後輩を可愛がってくれたのは」 「と、突然どうした?お前、雨、降らせる気か?」 神林は思わず外を見る。 「お前なあ、人がたまに素直になると、そうやって……まあ、いいけど」 少し拗ねた表情は中学の時と変わらない。 「あはは、冗談だよ。俺はさ、いいんだ。ちひろと友達やってるだけで、俺だって色々助けて貰ったし」 そう、友達として側にいれるだけで、いい。 他はもう望まない。 「あ、そうだ、たまにはミサキちゃんも誘ってさ飲まないか?」 「えっ?なんでミサキ?やだよ、姉弟で飲み会とか、それに碧を1人に出来ない」 「碧ちゃんは子供じゃないんだから、留守番くらい出来るさ!ミサキちゃん、お前をいつも心配してるしさ、今日も昨日もお前の体調を気にしてマンションの側まで来てたんだからな」 「うえ~、あいつ、ストーカーかよ」 「ちひろ、お前な、心配してくれてる人をそうやって!」 「あ~、ウソ、冗談だよ。まあ、飲み会は考えてやる。でも、マジで遅くまで飲まないからな」 西島が承諾した。 神林はよし!!と心でガッツポーズ。 ミサキに頼まれた食事会。嘘でもついて、連れていかないと、西島は来ない。 問題はその後。素直に食事はしないだろう。 どうやったら、素直に食事してくれるだろうか? 親父さん、ちひろが思ってる程、悪い人じゃない。 そう思うからこそ、ミサキに協力したいと思う。 ◆◆◆◆ 夕方近くには碧の部屋のモノは全て段ボール箱へと収まった。 後は掃除。 「僕、雑巾買ってきます!」 碧が元気よく立ち上がる。 「いや、いいよ。もうそろそろ、佐々木達が来る時間帯だから」 そう言った時に西島のスマホがバイブする。 着信は佐々木から。 アイツ、この部屋に盗聴機とか仕掛けてないか? そう疑いたくなる程のタイミング。 「もしもーし、ちひろたん?碧ちゃんの好きなモノを3秒以内に答えろ!」 命令口調とちひろたんにイラっときたが、これで怒れば向こうの思うツボ。 そこはこらえて。 「ハーゲンダッツ3人分。碧はストロベリー味だ!それと、雑巾と床とかの洗剤も一緒にお願いしたい」 「碧ちゃんのアイスは了解、でも、野郎2人のはお断り!あ、雑巾と洗剤なら星夜が使うかもと持ってきてるぞ?」 斉藤………アイツはチャラいけど意外と気が利く。 「斉藤にグッジョブと伝えてくれ」 西島はそう言うと電話を切った。 ◆◆◆◆ 「お~す、碧!」 あの電話からしばらくして、斉藤と佐々木が碧の部屋に来た。 「星夜くん来てくれてありがとう。佐々木部長も、すみません、僕の引っ越しなのに」 碧は斉藤と佐々木、それぞれ交互に頭を下げる。 「碧ちゃーん、相変わらずちゃんと挨拶できて偉いね!そんな偉い碧ちゃんお土産」 佐々木は碧の頭をグリグリ撫でた後にアイスが入った袋を渡す。 「碧に触るな!」 碧の頭を撫でられ、ムッとする西島。 「わあ~、ちひろさんアイスですよ!アイス!苺味です!」 袋の中をみた碧は目をキラキラさせて西島を見上げる。 碧はアイスが大好きなのだ。 夕食前にはダメだとか、1日1個しかダメだとか西島に注意される程。 「アイス、向こうで食べてきなさい。」 「えっ?いいんですか?いつもは夕食前はダメって」 「今日は特別」 西島に許しを貰い碧はさらに目をキラキラさせた。 「皆の分もあるみたいですよ。ありがとうございます佐々木部長」 碧はまた、頭を下げる。 アイス1つに大きい目をキラキラさせてお礼を言う碧をぎゅーっと抱きしめたいが我慢! なんせ、超過保護な保護者が目の前でギラギラと目を光らせているから。 「星夜くんも一緒に食べましょう!」 ニコニコと嬉しそうに斉藤を誘い向こうへいく碧。 「ほんと、碧ちゃん可愛いなあ」 「あんま見るな!変態が感染る」 「変態になってくれた方が夜が楽しいぞ?」 ニヤリと笑い佐々木は持ってきた雑巾と洗剤が入った袋を西島に渡す。 何か言い返そうとする西島を止めるのは神林。 「碧ちゃんの前で喧嘩するなよ」 そう言われ、グッと我慢。 「ちひろたんは神林の言う事は利くんだよなあ、昔っから。調教師になれるぞ神林」 神林の肩を叩く佐々木。 また、ソレでムッとする西島。 「だから、煽るなって!!」 2人の間に入る神林。 「なんか、ゆうちゃんから聞いたんですけど、3人って昔っからそんな感じなんですか?」 3人の戯れあいを見ながらアイスを食べている斉藤がそう言った。 「おうよ!星夜、俺の分くれ!」 佐々木が斉藤に手をだすと、その手にアイスを乗せてくれた。 「はい。ちひろさん。それと神林先生の分です」 碧は西島と神林にアイスを配る。 「羨ましいです。僕はこっちに同級生いないし、ずっと仲良しの子も居ないから」 「なんだよ碧、俺が居るじゃんか!仲良しの子」 不満そうに自分を指差す斉藤。 「えへへ、星夜くんはこっちで出来た友達です。幼馴染とかいいなあって思って」 西島はふと、思い出した。 仲良しだった子に嘘つきって言われてショックだったと言っていた事を。 碧はそれから仲良しの子を怖くて作れなかったのかな?なんて思った。

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