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ずーっと、好きです。 2話

◆◆◆◆◆ アイスを食べ終わると掃除スタート。 意外と掃除が上手いのは斉藤。 「斉藤くんってさ、掃除好きなの?」 思わず神林が聞いたくらいだ。 「俺、学生時代に掃除のバイトやってたんですよ。ビルとか、こんな風に引っ越した後のアパートの部屋とか」 「ああ、道理で手際いいわけだ」 「ありがとうございます」 嬉しそうに笑う斉藤。 「おかげで、俺の部屋はピカピカだよ。いい嫁貰ったって感じ」 佐々木はそう言うと斉藤を引き寄せる。 「ちょ、ゆうちゃん、掃除の邪魔しない!!」 嫌がる素振りを見せるが斉藤もまんざらじゃない顔をしている。 「嫁?ええっ?2人結婚したんですかあ!!」 トンチンカンな事を言い出し驚く碧。 「あ~~、さすが碧ちゃん。純粋な質問。ほら、最近言うだろ?アニメとか好きな自分のキャラを嫁とか………そんな感じ。まあ、実際嫁に貰ってもいいけどな」 佐々木はそう言って斉藤の頭をグリグリ撫でる。 好きなキャラを嫁……… 確かに碧の3番目の兄がアニメが好きで、そのキャラのフィギアを嫁と呼んでいたのを思い出す。 そうか、佐々木部長は星夜くんを好きだから嫁……… 嫁かあ。さすが大人の2人です。 ぼくも……… ぼくもちひろさんに嫁とか、 「俺の嫁の碧」 そんな風に紹介されたいかも!! 碧は妄想しながら、顔を赤くして興奮している。 「碧、どーした?疲れた?顔赤いけど?」 ボーッと2人を見たまま動かない碧を心配して西島は側に寄る。 疲れ過ぎて熱でも出したかな?と額に手をあてた。 「いえ、あの、大丈夫でふ」 慌てたので、語尾を噛んでしまった。 ちょっと恥ずかしい。 「碧、諭吉にご飯あげる時間だろ?」 「あっ!そうだ!」 「ここはいいから、諭吉にご飯をあげておいで」 「は、はい!諭吉おいで!」 碧は隅っこで1人遊びをする諭吉を呼び寄せると抱き上げる。 「あの、ごめんなさい。ぼく、諭吉にご飯あげてきます!」 佐々木、斉藤、神林に頭を下げる碧。 「いいよ、ゆっくりしておいで、こっちには掃除のプロがいるから」 佐々木はそう言って碧に微笑む。 碧は再度頭を下げて、西島の部屋へと戻っていった。 部屋へ碧を戻した理由は神林達にも分かる。 碧は疲れていても、我慢をするタイプ。 決して自分から休憩したいと言わない一生懸命な子。 でも、自分の体力を分かっていない。 「碧が戻るまでに掃除しちゃえばいいんでしょ?西島部長」 斉藤ももちろん、それを分かっている。 「悪いな。今度なんか奢る」 「マジすか部長!部長を酒に酔わせていいんですかあ!!」 めっちゃ食いついて来る斉藤に少し引き気味な西島。 「あ~、いや、酒、そんな飲まないし……」 「こら、浮気モノめ!」 佐々木が斉藤の額を指先で弾く。 「冗談です!ごめんなさい。」 素直に謝る斉藤。 ◆◆◆◆◆ 「諭吉、ごめんね。ご飯遅くなって」 碧は諭吉の皿にキャットフードを入れた。 「マグロううう!!」 キャットフードが不満なのか諭吉が雄叫びをあげる。 「マグロはだーめ!」 「いやばい、マグロば食いたか!」 「だから、ダメだって…………えっ?」 いま、会話が成立した気がした。 諭吉が人の言葉を喋った……よね? 「諭吉、いま、イヤって言った?」 「にゃ~ん」 今度は猫の鳴き声にしか聞こえない。 「マグロって言ってみて?」 「マグロううう!」 マグロは聞こえる。 「じゃあ、食べたいって言ってみて?」 「にゃーん」 あれ?やっぱりさっきのは聞き間違い? でも、でも、ハッキリきいた。 そして、胸の奥がツーンときた。 懐かしくて、切ない気持ちが交互に碧の中を埋め尽くす。 「諭吉……」 なんでだろう。涙がポロポロとこぼれてくる。 その涙を諭吉がぺろぺろと舐めてくれた。 「諭吉」 碧はギュッと諭吉を抱きしめた。 なんで、自分は泣いているのだろう? なんで、凄く懐かしくて、寂しくなるんだろう? 心がギュッと締め付けられる。 ◆◆◆◆ 「良かった!碧が戻る前に終わって」 斉藤は雑巾やバケツを片付ける。 「ちひろたん、もちろん、飯は出してくれるんだよね?」 ニヤニヤする佐々木。 「分かってるよ!何か頼むから食べたい物を言え!!」 「やったあ!!俺!寿司食べたい」 斉藤が嬉しそうに両手を上げる。 コノヤロウ!と西島は思ったが、わざわざ掃除に来てくれたし、碧の友達だし……と、寿司の出前を頼む事にした。 「それにしても碧ちゃん遅くない?あの子の事だから直ぐ戻って来ると思ってたのに」 神林の言う通り、諭吉にご飯を与えるだけなのに時間がかかっている。 「寝ちゃったんじゃない?疲れて」 斉藤に言われて、そうかも。なんて思った。 とりあえずは4人で部屋に戻る事にした。

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