195 / 526
ずーっと、好きです。 2話
◆◆◆◆◆
アイスを食べ終わると掃除スタート。
意外と掃除が上手いのは斉藤。
「斉藤くんってさ、掃除好きなの?」
思わず神林が聞いたくらいだ。
「俺、学生時代に掃除のバイトやってたんですよ。ビルとか、こんな風に引っ越した後のアパートの部屋とか」
「ああ、道理で手際いいわけだ」
「ありがとうございます」
嬉しそうに笑う斉藤。
「おかげで、俺の部屋はピカピカだよ。いい嫁貰ったって感じ」
佐々木はそう言うと斉藤を引き寄せる。
「ちょ、ゆうちゃん、掃除の邪魔しない!!」
嫌がる素振りを見せるが斉藤もまんざらじゃない顔をしている。
「嫁?ええっ?2人結婚したんですかあ!!」
トンチンカンな事を言い出し驚く碧。
「あ~~、さすが碧ちゃん。純粋な質問。ほら、最近言うだろ?アニメとか好きな自分のキャラを嫁とか………そんな感じ。まあ、実際嫁に貰ってもいいけどな」
佐々木はそう言って斉藤の頭をグリグリ撫でる。
好きなキャラを嫁………
確かに碧の3番目の兄がアニメが好きで、そのキャラのフィギアを嫁と呼んでいたのを思い出す。
そうか、佐々木部長は星夜くんを好きだから嫁………
嫁かあ。さすが大人の2人です。
ぼくも………
ぼくもちひろさんに嫁とか、
「俺の嫁の碧」
そんな風に紹介されたいかも!!
碧は妄想しながら、顔を赤くして興奮している。
「碧、どーした?疲れた?顔赤いけど?」
ボーッと2人を見たまま動かない碧を心配して西島は側に寄る。
疲れ過ぎて熱でも出したかな?と額に手をあてた。
「いえ、あの、大丈夫でふ」
慌てたので、語尾を噛んでしまった。
ちょっと恥ずかしい。
「碧、諭吉にご飯あげる時間だろ?」
「あっ!そうだ!」
「ここはいいから、諭吉にご飯をあげておいで」
「は、はい!諭吉おいで!」
碧は隅っこで1人遊びをする諭吉を呼び寄せると抱き上げる。
「あの、ごめんなさい。ぼく、諭吉にご飯あげてきます!」
佐々木、斉藤、神林に頭を下げる碧。
「いいよ、ゆっくりしておいで、こっちには掃除のプロがいるから」
佐々木はそう言って碧に微笑む。
碧は再度頭を下げて、西島の部屋へと戻っていった。
部屋へ碧を戻した理由は神林達にも分かる。
碧は疲れていても、我慢をするタイプ。
決して自分から休憩したいと言わない一生懸命な子。
でも、自分の体力を分かっていない。
「碧が戻るまでに掃除しちゃえばいいんでしょ?西島部長」
斉藤ももちろん、それを分かっている。
「悪いな。今度なんか奢る」
「マジすか部長!部長を酒に酔わせていいんですかあ!!」
めっちゃ食いついて来る斉藤に少し引き気味な西島。
「あ~、いや、酒、そんな飲まないし……」
「こら、浮気モノめ!」
佐々木が斉藤の額を指先で弾く。
「冗談です!ごめんなさい。」
素直に謝る斉藤。
◆◆◆◆◆
「諭吉、ごめんね。ご飯遅くなって」
碧は諭吉の皿にキャットフードを入れた。
「マグロううう!!」
キャットフードが不満なのか諭吉が雄叫びをあげる。
「マグロはだーめ!」
「いやばい、マグロば食いたか!」
「だから、ダメだって…………えっ?」
いま、会話が成立した気がした。
諭吉が人の言葉を喋った……よね?
「諭吉、いま、イヤって言った?」
「にゃ~ん」
今度は猫の鳴き声にしか聞こえない。
「マグロって言ってみて?」
「マグロううう!」
マグロは聞こえる。
「じゃあ、食べたいって言ってみて?」
「にゃーん」
あれ?やっぱりさっきのは聞き間違い?
でも、でも、ハッキリきいた。
そして、胸の奥がツーンときた。
懐かしくて、切ない気持ちが交互に碧の中を埋め尽くす。
「諭吉……」
なんでだろう。涙がポロポロとこぼれてくる。
その涙を諭吉がぺろぺろと舐めてくれた。
「諭吉」
碧はギュッと諭吉を抱きしめた。
なんで、自分は泣いているのだろう?
なんで、凄く懐かしくて、寂しくなるんだろう?
心がギュッと締め付けられる。
◆◆◆◆
「良かった!碧が戻る前に終わって」
斉藤は雑巾やバケツを片付ける。
「ちひろたん、もちろん、飯は出してくれるんだよね?」
ニヤニヤする佐々木。
「分かってるよ!何か頼むから食べたい物を言え!!」
「やったあ!!俺!寿司食べたい」
斉藤が嬉しそうに両手を上げる。
コノヤロウ!と西島は思ったが、わざわざ掃除に来てくれたし、碧の友達だし……と、寿司の出前を頼む事にした。
「それにしても碧ちゃん遅くない?あの子の事だから直ぐ戻って来ると思ってたのに」
神林の言う通り、諭吉にご飯を与えるだけなのに時間がかかっている。
「寝ちゃったんじゃない?疲れて」
斉藤に言われて、そうかも。なんて思った。
とりあえずは4人で部屋に戻る事にした。
ともだちにシェアしよう!