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ずっーと、好きです。 3話

◆◆◆◆ 「ただいま。碧、部屋の掃除終ったぞ?」 西島は玄関で奥に居るであろう碧へ言葉をかける。 シーンと静かで、あれ?って思った。 「碧、寝ちゃってるんですよ」 斉藤の言葉にそうかな?と思い、部屋へ上がった。 「にゃーん」 諭吉がトテトテ、軽い足音をさせながらやってきた。 「諭吉、碧はどうした?」 諭吉は西島の足元に擦り寄り、「寝とる」と一言。 ああ、やっぱり! でも、何故か碧はキッチンの側で横になり寝ていた。 「碧ちゃん、諭吉にご飯あげてる途中で寝ちゃった感じかな?」 神林は眠ってしまっている碧にほっこりしている。 「多分な」 西島は碧を抱き上げた。 「ほんと、碧ちゃんって期待裏切らないくらい可愛いよね」 ニヤニヤして碧をみる佐々木の目がイヤらし過ぎるので、見せるもんか!と西島は寝室へと連れて行く。 ベッドへ降ろして気付く。 泣いたあと? まつ毛が濡れている。 それに涙のあともかすかに残っていた。 「碧……?」 どうしたんだろう? 何か夢をみて、泣いているだけならいいけど。 起こして聞くわけにもいかないから、西島は碧にシーツをかけ、部屋を出た。 ◆◆◆◆ 「碧ちゃん、やっぱ、疲れてたんだ」 戻ってきた西島に声をかける神林。 「みたいだな。………そろそろ、寿司が届くから碧の分は別けておくよ」 部屋に戻る途中で出前を頼んでいた西島。 「マグロううう!」 諭吉が寿司って言葉に敏感に反応。 「おお!すげえ、諭吉!寿司に反応した」 斉藤が嬉しそうに諭吉の頭を撫でる。 「西島部長、諭吉って人の言葉理解してますよね」 その言葉にドキッとした。 「星夜、犬と猫って、結構、理解してるぞ?俺も昔、猫とか飼ってたけど、こっちの言う事ちゃんと理解してた」 「ゆうちゃん、ペット飼ってたの?いいなあ。ウチも猫か犬飼おうよ!癒されたい」 「俺は星夜で充分、癒されてるし、ペットは星夜だけでいい」 「ひどい!俺、ペット扱いかよお!」 怒っては見せるものの、どうしてもいやがってように見えない……いや、そのデレた顔はなんだよ、人の部屋でいちゃつきやがって!と西島は心で舌打ち。 ちょうど、チャイムが鳴り、寿司の出前が来たようだ。 「マグロうううう!!」 諭吉の雄叫びがけたたましく部屋に響くのであった。 ◆◆◆◆ んっ………諭吉? 夢うつつ、碧は諭吉の声をきいていた。 諭吉、喋れるよね。 でも、小さい男の子が自分に「うそつき!」と叫んだ。 違うもん!うそじゃないもん! 碧はそう叫ぼうとして、目を開けた。 しばらく、空を見ていた。 あれ?ここ………どこだっけ? キョロキョロして、寝室だと理解した。 えっ?なんで? 碧は慌てて起き上がる。 やばい!掃除!! 碧は掃除途中だったのを思いだした。 寝室を出て、リビングへ行くと、西島達がいた。 「碧、起きたか?こっち、おいで、お腹空いてるだろ?寿司あるぞ」 起きてきた碧に気付いた西島は手招きする。 「おはよ、碧ちゃん寝起き可愛いね」 ニヤニヤする佐々木と、 「碧、掃除終ったから安心しろ」 寿司を美味しそうに食べる斉藤。 「どうしたの?碧ちゃん、キョトンとしちゃって」 立ち尽くす碧に声をかける神林。 さっきまで悲しい夢をみていた気がした。 でも、4人の顔を見たら何だか元気が出た。 「まだ、寝ぼけてる?」 クスクス笑って西島が碧の側に来て手を繋いで皆の居る場所へ連れて行ってくれた。 当たり前のように西島の隣に座られられて、目の前に碧が好きなネタが乗った寿司が置かれる。 「碧ちゃん、お茶置くね」 神林が気を利かせてお茶を注いでくれた。 「碧、まだ、眠いんだろ?」 クスクス笑う斉藤。 もちろん、皆の声は碧の耳に届いているのだが、まだ夢の中だったら……なんて思っていた。 でも、西島の手が頭にフワリと乗ってきて、彼の手の温かさで夢じゃないって思った。 「眠いなら、寿司は明日食べるか?連れて行って上げるから」 西島は碧を抱き上げて、ベッドへ連れて行ってあげようと思っていた。 「ちひろさん…」 「ん?」 「おはようございます」 碧は深々と頭を下げた。 その一瞬で、野郎4人はほっこり和んだ。 「やっぱ、まだ、寝ぼけてたのか碧ってば!」 笑い出す斉藤。 「ほーんと、碧ちゃん可愛いねえ。もう、ウチの子になるか?」 佐々木の言葉にジロリと睨みをきかせる西島。 「碧ちゃん、お茶飲んで、目覚めるよ」 優しい神林の声。碧は素直にお茶を飲む。 ほんと、可愛い………碧以外、全員ガチで思った。 そして、もぐもぐと寿司を食べ始める碧。 可愛らしい小動物がご飯を食べているようだ。 「碧、美味しいか?」 「ふぁい……」 口の中にまだご飯が残っているので、変な返事になる。 食べていると段々と目が覚めてくる。 そして、「あっ、掃除」と言い出した。 「碧?さっき、終ったって言ったぞ?」 キョトンとした顔の斉藤。 「斉藤、碧はいま、目覚めたんだ。毎朝これ」 クスクス笑う西島。 「あ~~、さすが、碧」 それも碧らしいと笑ってしまえるのだ。

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