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ずっーと、好きです。 4話
「ご、ごめんなさい!僕の部屋なのに」
すっかり目が覚めた碧は今度は謝りに徹する。
「碧は随分頑張ってただろ?自分からキツイとか言わないし、それにあと少しだけだったんだし、直に終ったぞ」
西島にフォローされる。
「すみません!……ありがとうございます」
ペコリと頭を下げる碧。
「いいよ~、碧ちゃん、ヤらせてくれたら」
「殺されたいのか佐々木?」
低い声で威嚇する西島。
「やだなあ、ちひろたんは直ぐ本気にして。じゃあ、2人やってるとこ見せてくれたらいいよ」
「お前もう帰れ!!」
拳をグッと握る西島。
「ゆうちゃん、部長が本気で怒り出す前にそれくらいにしといて」
斉藤が西島と佐々木の間に入った。
「でも、まあ、そろそろ帰らないとな」
神林はチラリと時計を確認する。
「え~、いいじゃんもうちょっと、ほらお酒」
佐々木は持ち込んだ酒を袋から出す。
「酒なんていつの間に? 」
「碧ちゃんも!」
手招きをする佐々木の手を素早く弾く西島。
「碧は未成年だ!酒盛りする気か?持って帰れ!」
「いいじゃんよ~、引っ越し祝いだよ」
「ダメだ!ダメ!」
頑なに拒む西島。
「西島部長~………もしかして、お酒弱いんですか?」
佐々木のようにニヤニヤ顔の斉藤。
「部長って飲み会じゃ飲まないですもんねえ」
「飲み会はお前らの世話しなきゃいけないだろ?誰かがまとめないと」
「西島部長の酔うとこみたーい!碧も見たいよな?」
斉藤に話を振られた碧は、よく分かんないと首をかしげている。
「碧ちゃん、酔った西島はかなりエロぞ!!」
「えっ?」
佐々木の言葉に物凄く反応する碧。
エロい………カッコいいちひろさんがエロくなる……んですかあ??
「みたい!!」
激しく反応したのは碧ではなくて斉藤。
「西島部長!飲みましょう!!」
目をギラギラさせている斉藤が凄く怖い。
「断る!!」
西島は佐々木をつまみ出すように襟首を掴むと、
「いい加減に帰れ!」
なんて、威嚇。
「はいはい、お前らそこまで!」
神林がエスカレートする前に止めに入った。
「あんまりからかうな。ほら、2人とも送ってやるから!」
神林に促され、仕方なく立ち上がる2人。
◆◆◆◆
「じゃーな碧。ラインすっから」
玄関で靴を履きながら斉藤がそう言った。
「ありがとうございます。星夜くんも、佐々木部長も神林先生も!」
何度も頭を下げる碧。
「またね、碧ちゃん」
神林は碧に手を振る。
「じゃーね。碧ちゃん」
佐々木はそう言いながら手招きをする。
側に寄ってきた碧の耳元で、
「酒、置いていくから西島に飲ませな。マジでエロくなるからさ。碧ちゃん、楽しめるよ」
と言った。
ちひろさんがエロくなる。
うわわ!!ドキドキしてきた。
「碧に何吹き込んでるんだよ?」
邪魔しにきた西島に、
「お前の弱点教えた」
とニヤリと笑って玄関を出ていった。
あんにゃろおおお!!弱点ってなんだよ!!
チラリと碧を見ればほんのり顔が赤い。
何吹き込んだんだよ!!ばか佐々木。
ドキドキする西島であった。
「碧、何言われた?」
「えっ?あ、あの、お酒置いていくから、ちひろさんに飲ませなさいって……エロくなるからって」
恥ずかしそうに答える碧。
さーさーきーいいいい!!
余計な事を吹き込みやがって!
「よ、酔ったらエッチになるんですか?ちひろさん」
「ならないよ。佐々木の言う事を信じるんじゃない!ほら、おいで、そろそろお風呂入ろう」
西島は手招きをする。
自然にお風呂に入ろうなんて言えるようになっていた。
「あ、荷物」
箱詰みになっている自分の荷物の存在を思い出す。
「ゆっくりでいいよ。もう、ずっと、一緒に暮らすんだから」
そう言われて改めて一緒に暮らすのだと実感してしまった。
「あ、あのちひろさん!」
碧は西島の目の前に立つ。
「なに?」
「これから、よろしくお願いします」
碧は深々と頭を下げた。
「碧……」
碧の行動は本当に心を和ませる。
さっきまで、佐々木に腹を立てていたけれど、もう、どうでも良い。
「こちらこそ、よろしく碧。俺と一緒に住んでくれてありがとう」
西島は碧の頭を撫でた。
「ちひろさん……」
優しい手のひらの温かさにウルぅ~と、涙がジワと滲んでくる。
「ほんと、泣き虫だね碧は……ほら、おいで、抱っこしてあげる」
両手を広げられ、碧は迷う事なくその腕の中へと入り込む。
ギュッと抱きしめられると、安心する。
ちひろさん、だいすきです。
何度も心で呟く。
◆◆◆◆
「ねえ、西島部長ってどんな風にエロくなんの?」
神林の車の後部座席、興味津々の斉藤。
「ちひろ?碧ちゃんには内緒な!」
「えっ?内緒にするくらいにエロくなんの?」
うおおお!!とテンションが上がる斉藤。
「高校の最後あたり、西島ちょっと変だったんだよ、覚えてるだろ神林も」
佐々木は運転中の神林に声をかける。
「えっ?あー、学校休みがちだったり、来ても話さなかったりとか?あれは中学からあんま変わってないと思うけど?」
「なに?中学ん時もかよ?まあ、それはおいといて、俺ね、高校からアパートで1人暮らしだったんだよ。家から遠かったし、で、溜まり場だったんだけど、珍しく西島が来たんだよ、で、様子変だし……まあ、ノリで酒飲ませたわけよ。そしたら、まあ、凄いの」
ニヤニヤする佐々木。
「ちょー、ゆうちゃん、自分ばっかり思い出してるんだろ?早く話してよ!」
焦らす佐々木を急かす斉藤。
「飲んだら、あいつ、妙に色っぽいんだよ。ガキん時からアイツ、美少年ってやつ?その美少年が酒飲んでアツイとか言って服脱ぎだすわけよ。いやあ~、いいもん見たわあん時は」
「あ、もしかして、部長のちんこ見たって言ったのはこの時?」
「そう!んで、さあ、下着って時に寝ちゃったわけよ」
「えっ?まさか、ゆうちゃん脱がせたの?」
「当たり前だろ?」
当然のごとく言う佐々木。
「俺さ、この頃からバイセクシャル目覚めてたから、男経験あったんよ。目の前に裸の美少年って、据え膳食わぬはナントカってやつだろ?…ベッドに運んでさあ、ヤろうって時に起きたわけ」
だから未遂?と斉藤は思った。
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