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ずっーと好きです。 7話

諭吉は碧の顔をペロペロ舐める。 「くすぐったいよ諭吉」 諭吉は碧が泣く度にこうやって顔を舐めてくれた。 元気だせ!って言っているかのように。 実際言ってくれていたのだと気付くと、益々涙が出てくる。 泣くな碧、泣き虫だな碧は……って。 諭吉はずっと自分に声を掛けてくれていた。 「僕が泣くと諭吉はいつも側に居てくれてて、きっと、届かない声で励ましてくれてたんですね」 「うん。そうだよ……碧だって、ずっと、諭吉に声掛けてたんだろ?心の奥では会話出来てたんだよ。だから、大丈夫!また、話せる」 西島は碧の頭を優しく撫でる。 「はい!僕、これからも諭吉に話しかけます!声が聞こえるまでずっと」 「俺が通訳してやるから」 「はい。いっぱい、いっぱい、話したいです」 そう言って碧は笑う。 ようやく碧が笑ってくれて、西島も安心した。 頭を撫でているうちに碧は寝息を立て始める。 安心したのか、また、泣き疲れたのか…… 本当に可愛いと思う。 碧の寝顔は可愛い。 起きている時より幼くなる。 「ニッシー残念やったな、碧にパンツはかせんやったとはエロい事する為やろ?」 くっ、この猫は!! 「本当、お前はどこでそんな事覚えてくるんだ!」 「顔ば赤こうして、図星か」 こんにゃろ!!って思うが言い返す言葉が出て来ない。 「碧が思い出してくれたとはニッシーのおかげばい。ありがとうな」 「諭吉……」 「碧は一生懸命で可愛かろ?泣かしたらいかんばい!泣かしたら猫パンチ炸裂するけんな!」 「猫パンチって………」 可愛いだけだろ?って思ったら笑ってしまった。 眠る碧につい、見惚れる。 「泣かさないよ。碧と付き合うって決めた時、ちゃんと覚悟を決めたから」 諭吉はじっと西島を見つめ。 「ニッシーなら、そげん言うと思っとった。動物にはちゃんと分かる、嘘ばついてないってな。ニッシーは碧と巡り会う運命やったとな。」 「そう思うか?」 「思うばい。惹かれおうとると。いま、出会わなくてもこの先でも会うとったやろうな。」 「うん、碧を幸せにするよ」 「なんば言いよっとか、ニッシーも幸せになれ!ニッシーも心に抱えとるとば取っ払ってちゃんと幸せになれ!自分が幸せにしてやらんば幸せにはなれんとぞ?」 「………何も抱えてないよ」 「抱えとる!ワシば舐めたらダメばい。ニッシーが思うより、周りはニッシーば心配しとる。佐々木のエロジジイも何だかんだって世話するやろ?神林なんか特に!」 「……そうだけど」 西島はなんで、自分は猫に説教されているんだろう?ってふと、思ってしまった。 「と、とにかく寝よう」 「誤魔化すとか?」 「いやいやいや、誤魔化してないし、諭吉も寝ろよ」 「ワシは夜行性ばい?」 そうでした………。もう、これは無理やり寝るしかない。 西島は碧を抱き寄せて寝る体制をとる。 「なんや、タヌキ寝入りか?」 諭吉は西島の上に飛び乗り肉球でプニプニと顔を触る。 くう!!肉球攻めかよ~。 子供の頃、動物を飼いたかった。 でも、母親が動物の毛アレルギーで飼う夢は叶えられなかった。 新しく住む事になった家でペットを飼いたいなんて言えるわけもなく。 でも、いま、諭吉がいる。 小さい頃の夢が叶っている。 ちょっと普通の猫じゃないけどね。 「そのに肉球反則だぞ?人間がそれに弱いってお前知っててやってるな?」 「当たり前たい。」 「俺さ、ずっとペット飼いたかったんだ」 「暇さえあれば猫の動画見よるもんな」 「うるさい!でも、諭吉のおかげで叶ったよ。ありがとう」 「ニッシーは親ば恨んどるとか?」 「………ほんと、お前ってストレートに聞いてくるよな?俺には親なんて居ない………あの時からそう思うようにしてきた。期待しても裏切られる、それなら期待しなきゃいいし、元から無かった事にしてれば傷つかずに済む」 「猫は父親がどんなのか知らん。産まれた時は母猫しかおらんし、顔ば見たかとは思わん、興味がないけんな。ただ、繁殖期がきて子供ばつくるサイクルばこなしよるって感じやな……ばってん、人間は違うな。期待とか傷つくとか、そげん自分の事ばっかやん?相手の気持ちは無視か?理由があるとかも知れんぞ?」 「理由があっても知りたくないね」 「ニッシー、少しづつ、心ばちゃんと見せてくれな?今のでニッシーの気持ち、少し聞けたばい。」 諭吉はそう言うと碧が持ってきた自分の寝床へと行ってしまった。 ………ほんと、なんで猫と人生相談してるんだ?俺は? なんて、考えてしまった。

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