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15話

◆◆◆ 専務の家はかなり立派な日本家屋だ。 「凄い!!」 家をみた碧は大きな瞳をさらに大きくして家を見ている。 「碧んちも大きいだろ?」 「うちは農家やってるから」 西島の問いかけに答える碧。そういう西島の実家もかなり大きいのだが日本家屋ではないので、西島も圧倒されていた。 2人が車から降りると丁度、此上と神林も到着する。 「おはよう。千尋、碧ちゃん」 運転席から顔を出す此上。 「此上さんおはようございます」 深々と頭を下げる碧。 「おはよ、碧ちゃん、千尋。そして諭吉」 助手席から神林が降りて来た。 「神林先生おはようございます」 神林にも深々と頭を下げる碧。 「ふふ、可愛いねえ碧ちゃん」 神林が笑いながら近付いてきた。 そのタイミングで専務が顔を出す。 「お揃いで!ごめんね、わざわざ」 「お、おはようございます」 碧は緊張気味に挨拶をする。 「おはようございます」 西島と神林、此上も挨拶をする。 「諭吉も来てくれたね」 専務は碧に抱かれた諭吉の頭を撫でる。 「この子マグロ好きだったよね、マグロ買ったんだ」 専務のその言葉で諭吉の目がキラリと光った。 「なんや!マグロ!!マグロおおおお」 ソワソワしながら叫ぶ諭吉。 「こら、いい子にするって約束しただろ!!」 西島は慌てて諭吉の口を塞ぐ。 「あはは、可愛いねえ。マグロって言えるお利口さんなんだね。はい、じゃあ、マグロあげなきゃいけないから皆入って」 専務に促され、4人と1匹はお邪魔しますと言いながら中へと入った。 部屋も畳の部屋もあるし、リビングは広いし、キッチンも凄く広い。 碧は物珍しそうにキョロキョロしてしまう。 「流石、家大きいですね」 此上が持ってきた土産を渡しながらに言う。 「そう?友人から譲り受けたんだよ。でも、僕がだけだから広すぎるんだけどね」 碧は専務は結婚していないのかな?とふと思った。 でも、聞いてはいけないような気がして何も言わない。 「……専務、私に見合いすすめてきてましたけど、ご自分は?」 碧の疑問を西島が言葉にしたのでつい、聞き耳をたてる。 「僕?ふふ、僕は1度失敗してるんだ……なのに見合いすすめるのは確かに変だね」 クスクス笑う彼は照れたような顔で碧はその顔にこの人は本当に優しい人なのだなって感じた。 嫌味がない笑顔というか、裏表ない感じがする。 「あ、諭吉にマグロだったね」 専務は冷蔵庫に手をかける。それを待ってました!!と碧の腕からピョンと飛び降りてネコまっしぐら。 「マグロおおお!!!」 早くくれと催促する諭吉を慌てて捕まえる西島。 「こ、こら!恥ずかしいだろーが」 「さすがだな諭吉」 クスクス笑う此上と神林。 「さっき、大人しくするって言うからマグロ買ったのにお前は!」 抱き抱えて冷蔵庫から離れる。 「ふん、ニッシーのケチクサレ」 プィと横を向く諭吉。 「ふふ、西島くんは猫の言葉でも分かるのかな?」 諭吉と西島の掛け合いに笑い出す専務。 喋ってます!とは言えず笑って誤魔化す。 諭吉を黙らす為にマグロが与えられて、持ち寄った材料をキッチンで広げて料理作りがスタート。 作るよって言っただけあって専務は手際も良くて碧はついつい、お母さんの料理を見つめる子供みたいに横でキラキラした瞳をしている。 もちろん、手伝いもするのだが見入る碧。 「凄いですね。此上さんもちひろさんも料理上手いんですけど専務は料理人みたいです」 興奮しているせいか西島を西島部長ではなくちひろさんと呼んだ事に気付いていない碧。 「ありがとう。本当はねコックになりなかったんだ」 「えっ!そうなんですか?どうして諦めたんですか?」 「うーん、どうしてだろうね?修行は何年もかかるし、お金が続かなかったからかな?あー、これは言い訳だな。きっと、本気でなりたかった訳じゃなかったのかもな」 碧に笑いかけてそう言った。 「何年もかかるんですか……勿体無いですね。こんなに包丁捌きとかカッコイイのに」 「カッコイイかい?ありがとう碧くん」 「はい。カッコイイです」 碧はニッコリ微笑む。 そんな2人を見ながら大人3人は感心するのだった。 碧はどんな大人も虜にしてしまうんだなあと。 ◆◆◆ 料理が出来たのでテーブルの上が豪華になった。 マグロを食べたばかりの諭吉もソワソワ。 くれ!と言わんばかりに専務の足元に身体を擦り寄せて可愛く鳴く。 「諭吉いい!!お前、マグロ食べただろーが」 西島はこっち来いと手招きする。 「いやばい!ワシもご馳走食べたかもん」 専務の横にピタリとつく諭吉。 「ふふ、可愛いねえ諭吉」 専務はひょいと抱き上げて諭吉を椅子に乗せた。 「うひょーー!!こいは豪華ばい」 ニャーニャー騒ぐ諭吉。 「諭吉ダメだよ?他所のお家で騒いじゃ」 碧も注意する。 ニャーと鳴くだけで料理には手は出さない諭吉。 「諭吉には別のをあげるよ。これは味が濃いから君には毒だ」 魚のアラを水炊きにしたものを冷まして容器に入れる専務。 鶏肉も味付けなしで諭吉用に作ったようだった。 「昔飼ってた時にね手作りのご飯あげてたんだ、懐かしい」 そう言って微笑む専務。 諭吉が来て本当に嬉しそうにしてくれるから来て良かったな、と西島と碧は思った。

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