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16話
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専務が作った料理はコック目指していただけあって美味しくて碧も美味しそうに沢山食べた。
「この料理のレシピ後で教えて貰えます?」
此上が気に入ったのか専務にレシピを聞いている。神林に作ってあげるつもりなのだろう。
「いいよう」
気軽に返事する専務。
「あ、そうだ。知り合いにワイン貰ったんだ飲もう」
そう言いながらワイン棚からワインを出す専務。
ワイン棚とかあるんだあ。凄いなと碧は興味津々で専務の行動を見ている。それに気付いた専務は「碧くんは未成年だからジュースね。山葡萄ジュースなんだけどね、これも美味しいんだよ」と碧には山葡萄ジュースを出した。
「ありがとうございます。山葡萄ジュース初めてです」
目をキラキラさせる碧。
「ふふ、君は本当に何でも嬉しそうにしてくれるし、興味津々って感じで出す方も嬉しくなるよ」
素直な碧に専務もメロメロになっているようだった。
「千尋はあまり飲むなよ?」
ニヤニヤされながら此上に言われる。
「わ、分かってるし!っていうか俺、車……」
「帰る頃にはアルコール抜けてると思うよ?それか泊まってく?僕は嬉しいけど、いつも1人だから誰か居ると楽しいし、あと代行呼べばいいしね」
1人……碧はその言葉に反応をする。
確かに1人は寂しい。西島と住む前は1人暮らしで凄く寂しくて。特に夜は寂しかった。
こんなに広い家に1人は寂しい。
「せ、専務も猫飼うといいですよ!楽しくなります」
思わず変な事を言ってしまったと自分でも思った。
「そうだね。でも、お留守番は寂しいかな?ってと思うからなあ」
「猫は留守番とか気にしとらんばい、寝て過ごすしな」
諭吉がそう言うが専務にはニャーとしか聞こえない。
「ね、猫って寝て過ごすから平気だと思います。人が寂しいかもって思うのは自分がされたら寂しいからだと思うんです。猫は単独で動くし、本当に寝てばかりです」
碧は諭吉が言った事を自分の考えのように言葉にした。
「確かに寝てばかりいたな飼ってた子も……そうだね。考えてみよう」
専務は碧に微笑む。
「あ、そうだ、美味しいケーキあるんだ」
そういうと冷蔵庫からタルトとチーズケーキを出てきた。
「わあ!美味しそう」
また、碧の目がキラキラと輝く。
「甘いもの好き?」
「はい」
「良かった。これはね、僕のお気に入りのケーキ屋さんのケーキでね。凄く美味しいんだよ」
専務は切り分けると西島の前にも置く。
「西島くんも甘い物大丈夫だよね?」
「はい」
「良かった」
ニコッと微笑む専務。
西島はケーキをじーっと見つめた後に1口食べる。
美味しい。
専務の言った通り美味しくて「これ、美味しいですね」と碧ばりに笑顔で言った。
「ふふ、気に入ってくれて良かった。神林くんと此上くんも食べてね」
専務に促され、此上達も食べる。
「本当だ、美味しい」
甘い物好きな神林も笑顔になる。
「お店どこですか?」
神林は余程気に入ったのか店の場所を聞く。
「ちょっと遠いよ?福岡にはないから」
「どこなんですか?」
「長崎」
「長崎まで行ったんですか?」
「うん、用事ついでに寄ったんだ」
「近くじゃないんですね」
場所を聞いた碧は少しがっかりしている。福岡市内なら買えに行けるのになあと。
「また、家にきたら買ってきてあげるからおいでね碧くん」
専務はガッカリする碧の頭を撫でる。
西島は一気に食べてしまって皿が空っぽ。それに気づいた専務が「タルトもあるから」と皿に乗せた。
久しぶりに美味しいケーキを食べたなと西島は満足している。
美味しいというか、懐かしいというか。
子供の頃、誕生日に母親が作ってくれたケーキの味に似ていた。
凄く凄く、美味しくて西島は何回もおかわりをした。
そんな懐かしい記憶が蘇った。
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