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第19話

◆◆◆ ケーキを食べ終わったら諭吉が前足をペロリと舐めて顔をゴシゴシとやっている。 喋るけれど普通の猫の仕草につい、顔が緩む。 頭を撫でて「また、専務の家に遊びに行くか?」と聞く。 「おお、行くばい!良かマグロばくれるしな、アイツはニッシーと似たような臭いするばい、他人やない感じ」 顔を上げて西島を見上げる。 「何だそれ?同類って事?まあ、猫好きだから同類かな?」 「アイツから凄く優しい気ば感じる。ニッシーば好きな臭いする」 「は?」 どういう意味だろうとキョトンとなる。自分を好きな臭い?えっ?好意って事? 「此上とか神林とかがニッシーば構うとと同じばい、アイツはニッシーば子供でも見ているような目で見とる」 「はああ?」 ますます分からない。 此上や神林は分かる。神林は学生時代からの友人だし、此上は世話係だ。 「あとな、良か臭いばどこからかつけてきとったばい。ニッシーの体臭と似とる」 「何だよ、体臭とか臭いみたいな言い方!」 「動物は鼻がきくけんな微妙な臭いもわかるとぞ」 「確かに、マグロとかの臭いに敏感だもんな」 西島は笑って諭吉の頭を撫でた。 「ちひろさん……おはようございます」 碧が眠そうにフラフラと歩いてきた。 「おはよう碧、まだ早いから寝てていいぞ?」 西島の言葉に首を振ると「ちひろさんが居ないから」と座っている西島に抱き着いてきた。 西島はそのまま碧を膝の上に座らせる。 「昨日は寝っちゃってごめんね」 「いいんです。此上さんのお姫様抱っこ見れましたから」 その言葉にまたか!!とお姫様抱っこされた事に顔が熱くなる。 「ま、まさかと思うけど此上って専務の前でやってないよな?」 「やってもカッコイイじゃないですか?」 碧には西島の恥ずかしい気持ちは分からない。なんせ、姫を抱く騎士みたいに思えるから。 「それは碧がされたら見映えが良いだろうけど、俺はオッサンだぞ?ガタイも結構あるし」 「此上さん軽々抱っこしてましたよ?それにちひろさんはオッサンじゃないですもん」 ニコニコと笑う碧。 やっぱ、酒飲むのは控えなければ……と思う西島だ。 「あ、僕……昨日専務にちひろさんと付き合っているのかと聞かれてはい。って答えてしまいました……ダメだったですかね?」 少し様子を伺うような碧の表情。思わず付き合っていますと答えたものの、肝心な西島は眠っていて、彼の了承は得ていない。 上司に自分達の関係をウッカリと言ってしまって大丈夫なのだろうかと不安になるし、男同士だ。 前に見合いを勧めてもいたし……ダメだったかな?と西島を見つめる。 「は?聞かれたのか……」 碧の言葉ではやり付き合っている事はバレていると思った。 自分から言いたかったのだけれど、まあ……いいか。と思う。今日、ちゃんと自分の口からも伝えようと決心する。 「碧が言わなかったら俺が言ってたよ」 西島の返事に碧はホッとした顔を見せた。 「良かった」 碧はダメって言われたらどうしようと思っていたので安心し可愛い笑顔になる。 「ケーキ、碧の分残してるぞ?食べるか?」 「あ!ケーキ」 後ろのテーブルを見るとケーキの箱がある。 「ちひろさん食べたんですか?」 「うん、諭吉とね」 「はい、食べます」 碧が体勢を変えようとしたので彼を一旦降ろして「ホットミルク作ってあげるよ」と冷蔵庫へ。 ケーキの箱を碧が開けると諭吉がぴょんとテーブルに乗る。 「ケーキもっと食べたかあ」 「ちひろさんと食べたんじゃないの?」 「ニッシーはケチくされけん、ちぃーとしかくれんかった」 「ケチ言うな!!」 諭吉の声が聞こえたのか西島は反論する。 「ケチやんけ、それでな碧、ニッシーがなドライブしながらこんケーキ屋に行きたい言いよったばい?ワシも行きたかあ」 「え!!行きたい」 碧は目をキラキラさせて西島の方を振り向く。 「じゃあ、次の休みに行こうか?専務に場所を聞いておくよ」 西島はカップに牛乳を入れながらに答える。 次の休みの計画が決まった瞬間だった。

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