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第20話

◆◆◆ 「じゃあ、碧、後で」 西島は会社の入口で碧と別れた。 「にっしじまくんっ!」 碧と別れた直後に真後ろから軽快な声。もちろんその声は専務。 「おはようございます……あの、すみません昨日」 西島は頭を下げようとしたが専務に止められる。 「いいよいいよ、心許してくれたって感じで僕は嬉しいよ」 ニコッと微笑む専務。 「車、夜に取りにいきますから」 「碧くんも一緒においでよ、ご飯食べて行ってよ、1人で食べるのは寂しいからさ」 専務は狡いと西島は思った。そう言われたら断れない。 「はい」 思わず返事をしてしまった。 「何作ろうかなあ?碧くんも西島くんも美味しそうに食べてくれるから作るの楽しいよ」 凄く嬉しそうな彼を見ると和む。普段はめんどくさいと思う付き合いもめんどくさいと思わないから不思議だった。 ◆◆◆ 「オッス、千尋」 専務と別れた後に佐々木に声をかけられた。 「お土産使った?」 ニヤニヤされたので仕事場で!!とキッと睨む西島。 「ああいうのも萌え……」と言いかけた時に西島は彼の口を手で塞ぐと「お前、こっちこい!」とトイレに連れ込む。 「何する気だよ?俺は新婚ですけど?」 分かっているくせにそう言ってニヤニヤする佐々木。 「誰が聞いているか分からないとこで変な事を言うな」 「ここならいいわけ?」 「そういう事じゃないだろ?本当に……」 はあ~とため息をつく西島。 「専務と仲良さそうだったじゃん?何話してたんだ?」 話を急に変えられる。 「昨日、専務の家で飲んで……車……が」 うーん、どう説明したらダメっぷりをフォロー出来るだろうか?と悩む西島。 「ああ、お前、酒弱いからな……また寝たのか?」 「また言うな!!」 キッと睨む西島。 「寝たんだ……いいじゃん別に?いつも怖い西島部長がお酒に弱くて寝てしまうとかギャプ萌でモテるぞ?」 「別にモテなくていい」 「碧ちゃんにヤキモチ妬いて貰えるぞ?」 ニヤニヤする佐々木。 「俺は碧の気持ちを試すような事は絶対にしないし、不安になる事もしない」 キッと睨みつけるように言う西島。 「西島部長カッコイイ!また、碧ちゃんに惚れ直されるぞ」 佐々木は個室を指さす。 そこには個室から出るに出れなくなった碧がドアの隙間からこちらを見ていた。 「碧」 驚いて佐々木と碧を交互に見た。 お前、わざと……的な顔で佐々木を見る。 「偶然だよ、鏡にチラリとドアの隙間からこっち見る碧ちゃんには気付いたけどな」 確かに連れてきたのは自分でまさか碧が居るとは思わなかった。 かなり恥ずかしい。 「千尋、顔赤いぞ?お前、ほんと、わかりやすくていいよなあ」 ニヤニヤされて言い返せない。 「碧、おいで」 赤い顔のまま碧を呼ぶ。 「あ、あの、僕……出るタイミングが」 碧が個室に居た時に足音が聞こえ、同時に話し声も。 それは佐々木と西島の声。 出ようと思えば出れたのだがタイミングを失ってしまったのだ。 「いや、いい」 少し照れながらに言う。 「専務が今夜、ご飯食べて行けって、碧も一緒に」 「えっ?本当ですか?」 笑顔で答える碧。 「えっ?あれ?2人付き合っているの専務知ってるの?」 佐々木は碧と西島を交互に見る。 「き、聞かれたので僕が言っちゃいました」 顔を赤らめる碧。 「へえ、そっか、反対されなかっただろ?」 「はい……えっ?どうして分かるんですか?」 驚いた顔で佐々木を見る碧。 「だって、俺も反対されなかったし?パーティ事件って専務が率先してやったしな、あの人は凄く理解してくれる人だから」 ニコッと笑う佐々木を見て碧も笑顔になる。 「はい。凄くいい人です」 「で、今日行くんだ?俺と星夜もいいだろ?」 「は?勝手にダメだろ?」 「本人に許可取ればいいんだろ?」 ニヤリと笑うと西島が止めようとするのを交わしてトイレから出た。 アイツ、来るな……絶対に!!と西島はため息をつきたくなった。 「あ、あのちひろさん」 「ん?」 佐々木が出ていくと直ぐに碧が名前を呼ぶ。 「僕、凄く嬉しいです!僕もちひろさんを試そうとか思いませんし、心配とかかけません!不安になる事も……」 真剣な眼差しで見つめられて西島は照れてしまった。 「うん」 抱き締めたい衝動に駆られたが我慢した西島だった。

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