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第21話
◆◆◆
西島の思った通り、ちゃっかりと佐々木と星夜も来ていた。
「今日も若い子ばかりで華やぐね」
ニコニコと微笑む専務。
「すみません……なんか佐々木とかまで」
西島はペコリと頭を下げる。
「いいんだよ、賑やかなの好きだし……諭吉は置いてきたの?」
「迎えに行く時間なかったので。あ、でも大丈夫ですよ?諭吉は自由に水とご飯食べれるようにしているから。今頃、寝てると思います」
「そっか、そのまま来させちゃったからな。諭吉にも会いたかったけど」
少し残念そうな顔をされたので「また連れてきますよ」とつい、次の約束までしてしまった。
「本当?じゃあ、マグロ買っておくね」
寂しそうな顔からぱあっと明るい顔になったので西島も微笑む。
諭吉は本当に色んな人を魅了するよなあと改めて実感。
「専務、あの、今日はすみません」
星夜がいつ話かけようかとソワソワしている。
「ああ、斉藤くん……じゃなかった佐々木くんって2人とも佐々木くんだよね」
佐々木と星夜を交互に見て笑う。
「星夜くんって呼んでも大丈夫?」
佐々木に何故か確認。星夜本人に確認すれば良いのだが配偶者を気にしてしまう。
「大丈夫ですよ、なっ、星夜」
「はい」
佐々木に微笑まれ星夜も笑顔で承諾。
「じゃあ、よろしくね星夜くん」
「はい」
星夜は深々と頭を下げる。
「さてと、食事を作らなきゃ時間がもったいないよね」
専務は着替えを素早く済ませ、エプロンをつける。
「あの、俺も手伝います!専務って料理お上手なんでしょ?教えて貰おうかと思いまして……俺、レパートリーとかあまりないんです」
星夜は上着を脱ぎ、袖をめくる。
「あの、僕も!僕も教えて下さい」
碧も星夜の横に立ち真面目な顔。
「ふふ、2人とも熱心だね」
専務は星夜と碧の頭を同時に撫でる。
「いいねえ、佐々木くんも西島くんもこんなに可愛い奥さんが居て、あ、奥さんじゃないよな男の子だもんな」
ごめんごめんと謝る専務を見ながら碧は『奥さん!!』と奥さんの言葉に反応していた。
ちひろさんの奥さんとか!僕が……。考えると顔が熱くなる。
「碧、どーした?」
照れて俯く碧に気づく星夜と顔が赤い理由を何となく察した専務。
「碧くん可愛いねえ」
専務はさらに碧の頭を撫でる。
佐々木と西島は3人を離れた所から見ていた。入れないのだ。
なんかお料理教室というか先生と生徒みたいな可愛い雰囲気を壊したくないというか。
自分達も手伝うと言うべきだろうか?そう考えた西島も上着を脱ぐと「あの、俺も……」と何故か恐る恐る声をかける。
「西島くんと佐々木くんは座ってていいよ?」
専務に返され「いや、でも」とソワソワする。
「ちひろさん座っていて下さい。僕、お料理覚えますから」
「俺ももっとレパートリー増やしたいし、ゆうちゃんに美味しいご飯作りたい」
可愛い2人の言葉に西島も佐々木も見守るしかないのだ。
◆◆◆
料理教室が始まった。
碧も星夜も真剣だ。
「ほんと、うちの星夜可愛いだろ?」
佐々木は星夜をニヤニヤしながら見つめている。自分の為に一生懸命に覚えようとしているのが嬉しいのだ。それはもちろん西島もだ。
「俺の碧だって可愛いからな!」
負けじと言い返す。
「お前もさ、早く結婚しろよ、いいぜ?新婚って」
その言葉に西島は何故か照れる。
結婚……。碧と付き合い始めてから意識し始めた言葉。
自分はしないと思っていた。
家庭なんて持ちたくないと。
あんな風に消えてしまうなら初めからない方が良い。
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