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僕の一番はちひろさんなのです。9 話

碧が自分の知らない男と親しそうに話している。 見たところ碧と同じ年代。 目立ってイケメンってわけではないが、一見爽やかそうな感じで、背も平均を少し上間っているようだが西島よりは低い。 誰だよ!そいつはあああ!!! ジェラシーめらめらで2人に近づいた。 すると、まさかの直樹くんですよ。と碧の説明に、コイツかあ!!!と相手をみた。 直樹は西島を上から下までみて、雄叫びをあげた。 うるせえーーー!!! と思わず斉藤を扱うようにゲンコツを落としたい衝動に駆られたが我慢した。 ◆◆◆ 「うそ、マジでちーちゃん先生?」 直樹はマジマジと西島をみた。 確かになんとなく、記憶の片隅にいた昔の西島の面影を持っている目の前の男性。 自分より背が高くて、なにより……… イ、イケメン!!イケメンやないですか!! 何かテレビに出てきそうな感じのイケメン。 「そうだけど?そんなガン見されたら困るけど?」 西島の言葉に、 「えっ、あっ、すみません。カッコイイなあって思ってつい。だって、こんな田舎では見ないから」 と答えた。 こ……こいつ、意外と良い奴かも。 単純な西島は機嫌が良くなる。 「懐かしいですよね。また、3人で会えましたね」 碧がニコニコと嬉しそうに二人をみている。 「た、立ち話も何だからさ、どっか入らない?この先に喫茶店あるよ?」 「えっ?でも、諭吉いるから」 直樹の申し出にそう答える直樹。 「そこ、オープンカフェだから猫大丈夫だよ?」 「えっ?そうなんですか?ちひろさん、どうしますか?」 チラリと西島をみて、様子を伺う碧。 何だか行きたそうだし、久し振りに会った友達だもんな。 西島は、「いいよ?行こうか」とカフェへ行く事にした。 ◆◆◆◆ カフェへと来た3人。 4人席に座ると碧は当然のごとく西島の隣。 先程たらふく碧の実家で食事をしたので、飲み物だけを注文する西島と碧。 店員に「猫ちゃんのメニューもありますよ?」 とメニューをくれた。 ペット連れ込み可みたいで、犬、猫用のメニューが豊富だった。 諭吉がピクッと反応したので、西島は慌てて諭吉の口をおさえ、「猫用ミルクください」と言った。 いま、コイツ、絶対にマグロと叫ぶつもりだった!!と注文した後に諭吉をみると、なんだか睨まれていた。 やっぱりマグロと叫ぶつもりだったな。 手を離すと、「まあ、ミルクでも良かたい」と鼻を鳴らした。 直樹も飲み物を注文。 つもる話をしたいけれど、この2人ってどうして一緒に居るんだろ? しかも何か、………何か空気がピンクっぽい。 ちひろさん、碧と呼び合っているし…… そこから質問するか? いや、それよりも、急に引っ越したから心配したとか、色んな話あるだろ? 直樹はグルグルと色んな考えを巡らせていた。 「あのさ碧……」 「はい?」 名前を呼ぶと碧は直樹の方へ視線をむける。 自分を見つめる大きな瞳。 小さい頃の碧の面影を残している。 まだ、あどけなさが残ってて、あれから随分経ったなんて信じられなかった。 「はい?直樹くん、どうしたんですか?」 なかなか言葉を出さない直樹に首を傾げる碧。 その仕草もたまらなく可愛くて、直視出来ず俯く。 「いや、碧、昔のまんまっていうか、えっと、元気だった?」 もっと気の利いた言葉を言えたかも知れないけれど、今の直樹にはそれがいっぱいいっぱい。 「元気ですよ?直樹くんも元気でしたか?」 「う、うん」 そして、会話に間があく……こういうのなんて言うんだっけ?天使が通る? 次、次の言葉!!! 直樹は必死に次の言葉を探す。 「直樹くん、なんか、大人しくなったっていうか、前は凄くヤンチャなイメージあったけど、大人になったんですねえ、時間ってやっぱり過ぎてますね。よしこ先生に会った時は時間経ってないような感覚になりましたけど」 直樹が話さないからか、それとも碧が話したいのか、どちらにせよ、碧が次に繋がる言葉をくれたので助かった。 「えっ?そう?家とか大学では煩いって言われるよ、た、多分、碧に久し振りに会ったから」 「そうですね、久し振りですもんね」 碧がそう返事を返した時に飲み物が運ばれてきた。 西島が飲み物を配ってくれた。 「わあ~、ちひろさん、僕がします!!!」 飲み物を配る西島に慌てる碧。 「ん?いいよ?別に会社でもなんでもないし」 西島はクスクス笑いながら碧が頼んだ飲み物を渡す。 会社? いま、気になるキーワードが……… そう言えば何で2人一緒なんだろ? 「あの、ちーちゃん先生」 「は?そのちーちゃん先生はやめろ!」 西島はつい、斉藤に話す口調で直樹に答えた。 「えっ?あっ、すみません。えっと、ちーちゃん先生って苗字なんでしたっけ?」 テンパってしまい直樹はしどろもどろ。 テンパる直樹をみて、あっ!しまった。と思った。 初対面の相手……いや、初対面じゃないな。 「西島だよ。西島千尋」 「あっ!!そうだ!西島さんだ!あの、西島さんって今何してるんですか?先生?」 「先生って………」 なんで?って思ったけれど、あっ、そっか、ちーちゃん先生って呼ばれてたから記憶の中では先生なんだな。と自己解決。 「いや、先生じゃないよ?元々先生じゃないし、あの頃はまだ15だったし」 「あっ!!そうだ!ちーちゃん先生って若かった!」 また、ちーちゃん先生って呼んでしまい直樹は小さくすみません。と謝った。 「今は福岡の会社で部長してる」 西島は名刺を出した。 「わあ!!ちひろさんの名刺!!あれ?デザイン変わりましたか?」 碧は名刺を覗き込む。 「うん、良く気付いたな」 「えへへ」 褒められて碧は嬉しそうだ。 その反応も気になるけど、 「すご!!ちーちゃん先生って部長なの?えっ?まだ29ですよね?すげえ!!あ、この会社知ってる先輩が受けてました。落ちたみたいですけど!俺もこの会社いいなって思ってて」 直樹は名刺に書いてある会社名をみて、興奮している。いや、それよりも西島の役職に興奮しているのかも知れない。

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