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僕の一番はちひろさんなのです。10話
「結構新しい会社なのに知ってるんだな」
「もちろんです、だって、就活とか直ぐに来ちゃうですし」
「大変だな。まだ、大学1年だろ?」
「そうですけど、うかうかしてられないですもん、俺が就活する頃はもっと就職難になってるかも知れないですし」
「直樹って、しっかり者なんだな。斉藤とかに聞かせてやりたい」
「へ?誰ですか?」
「僕の同僚です!!でも、でも、星夜くんだってしっかりしてますよ!僕、いっぱいお世話になってますもん!」
碧も会話に加わり、斉藤を庇う。
「また、斉藤を庇う!!優しいな碧は」
西島は碧の頭をポンポンを軽く叩く。
碧はポンポンされて、嬉しそうに見える。
んーーー?あれあれ?
さっきも感じた普通ではない雰囲気。
「ちひろさん、僕にも名刺ください」
「名刺?いいけど?」
西島は碧にも名刺を渡す。
「えへへ、お守りにします」
名刺を受け取った碧は嬉しそうに財布にしまう。
お守りって碧!!!!
うわあー!!!碧~~!!
めっちゃ抱っこしたい。
西島は直樹が居なければ抱きしめたであろう。
「なあ、碧………ちーちゃん先生の名刺のデザインとか……何で知ってるんだ?」
「えっ?僕も同じ会社なんですよ」
ニコっーと笑う碧。
あ、やっぱり。そうかな?って思った。
「しかも同じ課なんですよ?」
「へ、へえ~、なあ、いつから知り合いなんだ?っていうか、碧、急に引っ越すから……」
「あっ、そうでした。ごめんなさい、さよならも言わずに」
碧は直樹に頭を下げる。
「お、俺がさ、碧に意地悪したからかな?ってずっと思ってて」
「あっ………ごめんなさい。」
碧は嫌な気持ちは自分だけじゃなかったと今、知った。
「直樹くんは悪くないです。僕が弱虫で泣き虫だったから……直樹くんごめんなさい。嫌な気持ちでいたんでしょ?」
碧は直樹の手を思わず握った。
ふんわり、柔らかい碧の手のひら。
小さい時はよく、手を繋いでいたのに……
大きくなっている。
「碧……」
直樹も握り返そうとすると、
「はい!そこまで」
西島が2人の手を離した。
直樹は驚いた顔とガッカリした顔を交互に見せた。
コノヤロウ、ガッカリした顔しやがって!!!
「直樹って、昔、碧をあいちゃんって呼んでたよな?女の子って思ってた?」
「いえ、男の子って知ってましたよ。お風呂一緒に入った事ありますから」
お風呂だとおおおお!!!
たとえ、幼子同士でも、つい、メラメラと嫉妬が………
「男の子だと知ってても、碧は誰よりも可愛かったなあ」
直樹は思い出したのかニヤニヤしている。
なんか、それも、何だか嫌な西島。
段々と心狭い男になっていく……自分でも、そう感じてしまう。
「懐かしいですね。お泊りとかしてましたもんね」
「うん、碧、途中で泣き出すからおばさんが迎えに来たよね」
「えっ?そうでしたか?」
碧は恥ずかしそうに聞き返す。
「って、いうか碧、何で敬語なん?普通でいいのに」
「えっ?あっ、………懐かし過ぎて……直樹くん、大人っぽくなってるから、なんか、恥ずかしくて照れちゃう」
ふふっと可愛く笑う碧。
て、天使か!!!天使だろ?
感情がぐわあーー!!!と押し寄せてくる。
あんなに大好きで、居なくなった時は毎日泣いてた。
でも、その碧が目の前にいる。
あの頃と変わらず大好きだと思う。
たとえ、男同士でも………
ほら、いまは同性婚とか………
俺が恋人作らなかったのは碧、以上の人が現れなかったからだ。
「なあ~、碧………碧っていま、付き合ってる人とかいるのか?」
「えっ?急にどうしたんですか?」
ドキっとする碧。
付き合ってる人………
碧はちらりと西島をみる。
「だって、もう18だろ?碧は相変わらず可愛いしさ、なんかモテそう」
うん、モテそう………
女の子にも、男にも………
はっ!!だめだ!男とか!!
俺以外の男と………
「な、直樹くんは?直樹くんもカッコいいじゃないですか?」
「お、俺?俺は………」
俺はずっと碧が好き…………
そう!!俺は碧が好きだ。
直樹は碧を見つめて、
「もし、碧に恋人とか居なかったら、」
「………いますよ」
「そう、いたら……はっ?」
居なかったら俺と付き合ってって続けようとしたが、思っていなかった言葉が返ってきた。
「い、います………恋人」
そう言って俯く碧は耳まで赤い。
茹でダコのようだ。
…………な、なんだこの可愛い生き物は?
「いる………の?」
「はい」
再度確認すると、小さく返事して頷く碧。
はあああ??
マジで?マジでか!!!
「だれ?」
聞いたとしても、きっと自分の知らない人だろう。
でも、聞かないといられない。
「俺」
自分の斜め前からの言葉に直樹は固まる。
「は?」
直樹は俺と言った西島に視線を向けた。
「えっ?ち、ちひろさん……」
碧は頬を赤らめて西島をみた。
ちひろさん………言うんですか?
ほ、本当に?
そんな表情で西島を見る。
「碧の恋人は俺だけど?」
何か文句でも?と態度に出ていた。
これは宣戦布告。
直樹が碧に告白すると、見てわかった。
大人げないけど。
「うそ?」
直樹は碧と西島を交互にみた。
「う、嘘じゃない……です」
頬を赤らめた碧。
「マジ?」
聞かれた碧はこくんと頷く。
「い、いつから?ちょ、待ってよ!!いつから?」
直樹は驚きとショックで目眩がしていた。
グルグルと目が回る。
俺の天使があああ!!!
俺の碧があああ!!!
そう叫びたかった。
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