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僕の一番はちひろさんなのです。11話

「出会ったのは会社に入ってからですよ?ちひろさんがちーちゃん先生って僕もさっき知りましたから……凄い偶然ですよね?」 頬をほんのり赤く染めて、微笑む碧の顔は恋する顔だ。 ああ、こんな顔するんだ?って初めて知って、こんな顔をさせるのは自分じゃなくて、別の男。 ショタコンかよ、ちーちゃん先生!!! 睨みつけたいけど、度胸がない。 こんなオッサンのどこが?って言ってみたい気もするけれど、西島はオッサンの部類には入らない。 今日の西島のスタイルは大学生でも通りそうなくらいに若くて爽やか。しかもイケメン。 あーー!!!くそ、俺より背が高いし、ガタイもいい。おまけに金持ってそう。 まだ、学生の自分と比べ物にならない。 「ちーちゃん先生………碧が好きだったの?」 「は?だったって、まさか幼稚園の時か?馬鹿な事いうな!!俺はあいちゃんが碧だとは知らなかった。女の子だとずっと思ってたよ。俺だって、あいちゃんが碧だって、さっき知ったっていうか思い出した」 「いつから………好きになったの?」 それ聞くのか?と西島は思った。 凄く不満そうな顔の直樹。 きっと、もの申したいんだな?って西島にもわかる。 「えっ?ちょ、聞くんですか直樹くん!!!」 恥ずかしい。と顔を更に赤める碧。 「気づいたら?じゃダメか?気づいたら目で碧を追ってたよ。好きだって自覚したのは同僚に碧を盗られそうになった時だ。あのクソ野郎……」 佐々木を本気でクソ野郎とは思ってはいないが、どうしてか顔を思い出すと自然と口から悪口が零れてしまう。 「ち、ちひろさん……」 嬉しいです!!と言葉を続けたかったが、嬉しすぎて話すと泣きそうだったので、言葉を飲み込んだ。 「真剣なんですか?」 「当たり前だ!!遊びで付き合うわけねーだろ!!俺がそんなチャラい男だと思ってんのか?碧を傷つけたりするわけない。」 ふざけんな!!そんな瞳で直樹を見つめる西島。 ああ、本気なんだな。って感じた。 「碧の両親にもちゃんと付き合ってるって報告してるからな」 「あ、挨拶してるんですか?」 「そりゃ、するだろ?上司が部下に手を出したんだから、ちゃんと責任はとる」 手をだした………… て・を・だ・し・た!! 手を出したの?ちーちゃん先生!!!! 頭の中はグルグルとその事が回りだした。 キスとか? えっ?その先も?えっ?もうやっちゃったわけ? 「やったんですか」 ストレートに聞いてしまい、西島にゲンコツを落とされる直樹。 「お前、やっぱ、斉藤と同じ臭いする」 「えっ?香水同じなんですか?直樹くん、香水つけてますか?」 碧は身体を少し前のめりにして、直樹に近づくと鼻をクンクンさせる。 「ば、違うよ碧」 その仕草が凄く可愛くて西島は和んだ。 「えっ?えっ?違うんですか?」 ますます、キョトンとする碧。 「似た者同士って意味」 西島から説明受けて、理解したのか碧は首まで真っ赤になって俯いた。 碧が俯いた時に首の後がちらりと見えた。 そのには赤いシルシ。 良くみると、首筋にあと、ふたつ。 あっ…………… もう、聞かなくてもわかる。 やってる!!確実にやってる。 俺の碧があああ!!!! 大好きな初恋の相手が既に非処女になっていた事は直樹が生きてきた中で1番のショックかもしれない。 泣いてもいいですか? って、誰に聞いてんだよ?俺。 「碧もちーちゃん先生好き?」 その質問をしてしまった自分に後悔する事になる。 碧はパア~と顔を輝かせて、そして、ふんわりと笑った。 「はい!大好きです。ちひろさんは僕の初恋ですから………僕の1番なんです」 頬を赤く染めて……そんなに幸せそうに笑って……ああ、色々心配しなくても、もう一瞬でわかる。 愛されていると。 凄く凄く愛されていなければこんな顔をしない。 俺は碧にこんな顔させる事出来るかな? 収入とか、大人とか関係なくて、そこに有り余るくらいの愛情がないとこんな顔は出来ない。 直樹は西島を改めて見てみる。 …………全てにおいて勝てる気がしない。 よく言うじゃないか、好きな子が恋人に泣かされてたりしたらさ、俺の方が愛してるのに、とか、泣かさないのにとか……… ちーちゃん先生は碧を泣かさない。碧を凄く愛している。 目に見えないものの量なんて計れないのに自分の方が愛してるなんて、エゴだよな。 「………そっか、良かった。碧の初恋だもんな」 笑って碧を見ると、 「あ、ありがとう直樹くん!!嬉しい」 碧は目を輝かせてお礼を言った。 「友達に好きな人の話出来るとか嬉しいです!!直樹くんは偏見とかないんですか?」 その言葉で無邪気そうな碧も色々考えているのか……と思った。 「ウン、ないよ?あるわけない………俺は応援するよ?」 あるわけない。自分だって碧が好きなんだから。 「嬉しいです!!えへへ、僕って幸せ者ですね」 ふにゃりと顔を崩す碧。 こんな表情も凄く可愛くて好きだ。 「あの、直樹くん、メアド教えてください!!また、会いましょう」 「へ?あっ、うん!!いいよ、ラインとかしよう」 直樹はスマホを取り出す。 「……ぼく、まだ、ガラゲーなんです。ライン出来なくて……メアドと番号教えてください」 恥ずかしそうに携帯をだす碧。 あ~、もう!!なんで、いちいち可愛いかな碧は!!! この瞬間を写メりたい直樹である。 でも、嬉しい。碧とまた連絡が取れる。 いくら恋人がいても、また会いたいと思うし、せっかく繋がったのなら、その縁は切りたくはない。 だから、番号とメアドを交換した。 後は少し話して、喫茶店をでる3人。 車に乗り込む2人に手を振り、見送った。 あ~あ、碧、凄く可愛くなってたなあ~。 直樹も家へと向かう。 ポケットのスマホから音楽がなり、メールを受信した事を知らせる。 開けると碧からで、 「直樹くん、会えて良かったです。僕を忘れないでいてくれてありがとう。福岡にも遊びに来てください!」 と書いてあった。 くそ!!!!碧~~。 俺も会えて良かった。覚えててくれて嬉しい……直樹はそう、叫びたかった。

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