236 / 526

僕はちひろさんの1番ですか?17話

「落ち着いて」 電話の向こうからの優しい声は少し笑っている。 「どうしたの?何か用事」 相手が切り出してくれたので、何を言いたいか碧は思い出した。 「はい、あの、ちひろさんが公園の猫にご飯あげてるのを頼んでて」 「公園?あっ、あげてたみたいだよ?」 此上は神林と公園近くで会ったので、そういう事かと理解した。 「本当ですか?良かった」 「旅行行ってるの?」 「はい!」 「楽しい?」 「はい!とっても!!」 「そう、旅行楽しんでね。トオルには電話あった事伝えておくから」 「はい!!お願いします!おやすみなさい………あ、ちがう!!失礼しますうっ!」 くっ!!また、間違った。 碧は神林や西島と話す感覚でおやすなさい。と言ってしまい、顔が熱くなる。 「はい。おやすみなさい」 相手も神林みたいに返してくれた。 優しいなって感じた。 「で、では、切ります」 碧はもう、恥ずかしくってどうにかなりそうだった。 これが会社の電話だったら先輩達に叱られている。 恥ずかしさで、ベッドへダイブ!! シーツに顔を埋めて足をバタバタさせて、1人悶える。 ううっ、僕って!!アホの子みたいな電話しちゃって!!! もっと、日本語……たくさん、習おう。 碧はそう決心する。 でも、電話の人誰だろう? 神林さん、1人暮らしじゃなかったっけ? 兄弟?親戚?お友達? んん? でも、なんか、違う感じしたなあ。もっと、親しそうで………もっと、親密な……… あっ!!!彼氏? か、彼氏かな? 碧はそういきつき、また、1人悶える。 トオルって呼んでたもん。そうだよ、きっと!!うん!! うわあ~!どんな人かな? 声、凄く優しそうだった。 なんか、ちひろさんみたいな感じがした。 見たいなあ~。碧の好奇心がにょきにょきと顔を出す。 ちひろさん、知ってるかな? 「碧?どーした?もう眠いのか?」 真後ろから西島の声。 身体を起こすと洗った諭吉をタオルで包んで抱っこした西島が立っていた。 ◆◆◆◆◆ ほんと、可愛いな。 電話を切った此上はほんの少し話しただけで碧の可愛さが分かった。 素直で純粋。 可愛くて天然。 昔の西島のようだった。 此上は西島を引き取られる前から知っていた。 引き取られる前は素直で笑顔が可愛くて、愛らしい子供だった。 愛されて育った子供。 そんな感じだった。 あの頃の西島をそのまま、大きくしたような感じを受ける碧。 なんとなく、西島が碧に惹かれたのが分かる気がした。 此上は電話を置くと、寝ている神林の髪にキスをして、 「ほんと、君はバカだよね……いつも、1人で悩んでいるんだから」 そう呟いた。 ◆◆◆◆ 「気持ち良かばい~、ニッシー次は腹ばせろ!」 ドライヤーで毛を乾かして貰っている諭吉。 諭吉はドライヤーが大好きである。 「毛は乾いただろ?」 「嫌ばい!!もっとせろ!」 諭吉はお腹を見せてアピール。 「ほんと、ワガママ」 そう言いながら西島は諭吉にドライヤーをかけている。 「諭吉、ドライヤー好きなんです」 碧も側でドライヤーをかけられている諭吉のお腹をワシャワシャと触る。 「碧、神林は何て?」 西島は思い出したように神林の名前を出す。

ともだちにシェアしよう!