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僕はちひろさんの1番ですか? 20話

いま、人生最大の危機だと思う。 もう、恥ずかしくて死ねる。マジで死ねるから!! 「ご飯食べないと仕事遅刻するよ?」 此上の言葉で神林は覚醒。 ああ、そうだ!仕事だ!! 顔を上げてテーブルの上をみると、純和食が並べられている。 相変わらず凄いなあ。 此上は料理がかなり上手い。元板前とか、コックとか、聞いたな。 西島が料理上手いのは彼に習ったからだ。 「なんか、此上さんの料理久しぶりです」 「そうだね」 此上も椅子に座り一緒に食事を始める。 「おいしい!!!」 食べて直ぐの感想。 「良かった」 此上は嬉しそうに笑う。 「弁当も作ってみたけど?」 此上はそう言いながらテーブルの上にお弁当箱を置く。 「えっ?マジで?」 「弁当とかかなり久しぶりに作ったから、楽しかったよ」 「久しぶり?」 「そう、ちひろに弁当作ってた以来」 「あっ……そうでしたね。ちひろの弁当って此上さんが作ってましたね」 懐かしい………そう思った。 西島の弁当はいつも、美味しそうで、佐々木が狙っていた。 「うん、自分には作らないし」 「そうなんですか?」 「そういうもんだよ?」 「ありがたくいただきます」 神林はお礼を言って弁当を受け取る。 そして、朝食を済ませて着替えをする神林。 着替えている間、キッチンで食器を洗う音が聞こえてくる。 後で洗うからって言っても、聞き入れて貰えなかった。 「途中まで送るよ」 着替えると、待ち構えたように此上がスーツに身を包み現れた。 ほんと、カッコいいよね、この人。 スーツ姿の此上に見惚れてしまう。 そして、この人と昨夜セックスしたのだと改めて思うと…………もう、完全に死ねるレベルだった。 車の助手席に座りシートベルトをつける。 それを確認すると、車は走り出す。 しばし、沈黙の車内。 どーしたものかと神林は悩む。 口を開けばきっと、色々思い出してしどろもどろになって余計に恥ずかしいだろうと想像。 それに何話す? うーん、と悩んでいると、 「昨夜、ちひろから電話あったよ」 と言われた。 「はあああ?」 驚き過ぎて変な返しになってしまった。 「俺が話す前にアクシデントで切れたけれどね。その後で碧ちゃんだっけ?彼から電話あったよ。公園のネコの心配していた 」 「えっ?えっ?話したんですか?碧ちゃんと」 「話したよ。少しだけどね。でも、あの少しの時間だけの会話でも、充分に彼の魅力が分かったよ。天然で可愛い子」 「………そうです。碧ちゃん、イイコだったでしょ?」 ほんの少し話した此上にも分かる碧の魅力。 ほらね、敵わない。 あっという間に誰でも虜にしてしまうんだ。 敵うわけがない。 神林は俯く。その俯いた瞬間に、ポフンと頭に手のひらが置かれた。 「そうやって、また、色々考えているんだろ?絶対に敵わないとか」 図星!! 図星過ぎて、もう、笑ってもいいかな?って思ってしまった。 「どうせ、女々しいですよ」 神林はフィと横を向く。 「そんな所も可愛いよね、君は」 クスクス笑う声。 くそ!!!どうせ、子供だよ!! 落ち込むというより、いじけてしまいそうだ。 「今夜何食べたい?」 「えっ?」 此上の質問に神林は少し驚いて彼を見る。 「好きな物作ってあげるよ」 「えっ…………と、すきやき……」 「すきやき?了解」 ニコッと微笑む此上。 えっ?あれ?………今夜も来るってこと? 「終わる頃に迎えに来るよ」 「………お願いします」 とりあえず、頭を下げた。 ◆◆◆◆◆ 「神林センセ!!」 「えっ?なに?」 神林が声をする方をみると斉藤がいた。 「あっ、ごめん、どーしたの?休憩?それとも具合悪い?」 「センセこそ、どーしたの?ずっと、呼んでたのに」 「えっ?ごめん……考え事してた」 神林は笑って誤魔化す。 仕事場で、ずっと、考えていた。 此上が何を考えているのかな?って。 今夜も来るって言ってたし………… えっ?えっ?それじゃ、今夜も? 今夜も………やる? うえええええ? あーーーー!!!! 「ちょ、センセ、どーしたの?具合悪い?」 神林が急に黙ったかと思えば頭を振って何やら顔が赤い。 「発情期かな?神林トオルくんは」 佐々木の声で我に返った。 斉藤しかいなかった部屋に佐々木がいつの間にか来てきた。 「えっ?発情期なんですか?神林先生」 真顔で斉藤が聞いてくる。 「違うよ!」 神林は冷静を装う。 「お茶くれよ。飯食うから」 佐々木はドカッと近くの椅子に座る。 へっ?もうお昼? 時計を確認する神林。 ちょうど、12時。って、事は斉藤もお昼か………… 神林は3人分のお茶をいれる。 「で、神林先生は何、悶てたのかなあ?」 お茶を受け取りながら佐々木がニヤリと笑っている。 「別に?」 何もないと、自分も弁当を食べようと包みを開ける。 「手作りですか?神林先生、美味しそう」 斉藤が弁当を覗き込む。 手作り…………早起きして、作ったのかな? 此上が弁当を作る姿を想像。 くっ!!!なんか、可愛いかも。 「顔赤いですけど、先生、具合悪いんですか?」 心配そうな斉藤。 「いや、なんでもない」 えへへ、と笑って誤魔化す。 「その弁当ってさ、誰作ったん?」 佐々木の言葉にドキッとする。 「えっ?神林先生が作ったんじゃないの?」 と聞く斉藤。 「首筋にシルシつけた人からかな?」 ニヤニヤする佐々木。 はあああ?マジでえええ!!! 神林は慌てて首筋を隠した。 キスマーク………つけられてた? ううっ、確かにいっぱい身体中にキスされた記憶がある。 「え~、神林先生恋人いたの?」 キラキラした瞳で自分をみる斉藤。 「う~、いや、あの、その、」 ど、動揺するな俺!!! 「トオルちゃん、動揺し過ぎ。カマかけただけなのに、へえ~」 佐々木がニヤニヤしながら近付いてきた。 カマかけた? うわあーーー!!!!やられたあ!!! バカ佐々木って、こんな奴だったのを忘れてたあ!! 佐々木は神林が着ているシャツを少しずらして、 「かなり、激しい相手みたいだな」 と感心している。 「み、みるなよ!!」 神林はシャツを戻して、触られないようにガードする。

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