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僕はちひろさんの1番ですか? 25話
「千尋って不器用なんですよね。素直になれないっていうか」
学生時代の西島は今より無愛想で、あまり笑った顔をみた事が無かった。
理由を知るまでは、もったいないなあって、思っていた。
笑えば女の子にモテるだろうし、友達だって増えただろう。
だから、「笑えばもっと、友達も増えると思うよ?もったいないよ?」
って言った事があった。
彼の答えは、「笑わないでも、神林は俺といるじゃん?それでいい」
だった。
凄く嬉しくて、泣きそうだった。
友達は多いのが凄いってわけでもないし、煩わしさは倍になる。
「寂しがり屋のくせにいじっぱりだし、此上さんも苦労したでしょ?」
「そうだね、でも、可愛くて仕方なかったよ。精一杯強かってて、泣くのを我慢していた」
「俺………千尋が泣くとこ一度も見た事ないなあ」
「友達には見せたくないだろ?男の子だし」
「でも、俺は見せて欲しかったなあ。そりゃ、何も出来ないだろうけど、側にいる事は出来るから」
本当にそう思う。辛いのに泣けないのはどんなに苦しいか、自分に置き換えてみると、凄く嫌だ。
泣いて変わるわけじゃない。でも、何か変わるかも知れない。
「君が友達として側にいてくれて良かったと思う。きっと、彼が壊れてしまわなかったのは君の存在も大きいだろうね」
「………えっ?そんな事………千尋が強いだけですよ。俺は何もできなかったし、今もできない」
神林の中で、もし、西島に何かできる人がいるならそれは碧だと思っている。
「いいや、君が思っているよりは凄く存在が大きいよ、ありがとう」
此上にお礼を言われると照れてしまうし、嬉しくなる。
ふいに此上の手が伸びて、神林の顔にふれる。
ドキッとした。
昨夜と同じ手のひらの温度を感じる。
そして、気づく………あ、そうだ、二人っきりだ。
まさか、キス?
キスとかされる?
神林は少し身構える。そして、
「頬にソースついてた」
と手が離れ微笑まれる。
ぐわああああ!!!ソースかよおおおおお!!!
俺のばかばかばか!!!
何、身構えてちゃってんだよおお!!
「あ、あの、ご、ごちそうさま。食器後で洗うんで、流しに置いて置いてください。そ、それと、お風呂入ってきます」
心落ち着かせる為に逃げたい。
逃げれるならどこでもいい。
神林は重ねた食器をシンクに置き、逃げるように風呂場へ。
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