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僕はちひろさんの1番ですか?27話
玄関の前でふと、考える。
どうして、此上はまた、来たのだろうか?
そして、どうして自分も受け入れたのだろうか?
彼が自分を抱いた理由が知りたいから?
それとも、何か別の感情が彼にあるのだろうか?
そう考えて、神林は頭を振る。
そんなわけない!!
何の感情があるというのだろう?
あるのなら、それは何の感情だろう?
自分の事なのに分からないでいる。
「入らないの風邪ひくよ?」
真後ろから此上の声。
えっ?帰ったんじゃ?
慌てて振り向くと、ビニール袋を下げて立っている此上がいた。
「えっ?あれ?帰ったんじゃ?」
「冷蔵庫にね、飲み物無かったから買い出し。あと、お酒もね」
買い出し…………えっ?ええっ!!
そうか、なるほど!!此上さんは黙って帰る人ではない。
なんか、ホッとした。
「くしゅん!!」
安心したのか、本当に風邪引いたのか、くしゃみが出た神林。
「ほら、湯冷めしちゃっただろ!」
此上は上着を脱いで神林に着せてくれた。
そして、ドアを開けて、二人で部屋へと戻る。
なんだあ~。買い物だったのかあ。
なんか、安心したらニヤけてしまった。
「なんで、外にいたの?」
部屋に戻ると、そう聞かれた。
「えっ?いや、あの…」
なんて、説明しよう?
「もしかして、帰ったって思った?」
うっ!!そうです!
図星な事を聞かれて更に何って返せばいいか困ってしまう。
「それって、ちょっとは寂しいって思った?」
此上が近くにきて、手が伸びて神林の頬を触れる。
寂しいって思った神林は素直に頷く。
「………それは、凄くうれしいよ」
此上の顔が近付いて、唇にキスされた。
キスされて、逃げる事も振り払う事もできるけれど、できないでいる。
すると、ギュッと抱きしめられて、キスが次第に激しくなる。
◆◆◆◆
碧は玄関のチャイムを押す。
手にはお土産。
チャイムを押して直にガチャと鍵を開ける音がして、ドアが開いた。
「碧、いらっしゃい!」
物凄い笑顔の斉藤が出迎えた。
「こんばんは~」
碧は深々と頭を下げる。
「わざわざ、ありがとう。碧と、西島部長&諭吉」
斉藤は碧の後ろに立つ西島と、腕に抱かれている諭吉をみる。
「諭吉~、元気か?相変わらずモフモフ」
斉藤は諭吉の頭を撫でる。
「まぐろおおおお!!!」
諭吉は斉藤がマグロをくれた事を覚えているから、雄叫びをあげる。
「あ、こら、諭吉!」
西島は慌てて諭吉の口を塞ぐ。
「おーす、マグロあるぞ!」
佐々木が顔を出してそう言ったので、諭吉は目をキラリと輝かせて、西島の腕からぴょんと飛び降りた。
「あ、こら!」
慌てる西島と碧。
「あがってけば?」
佐々木に促され、碧と西島はお邪魔する事にした。
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