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僕はちひろさんの1番ですか? 29話
「うるさい!!ごちゃごちゃ言うなら返せ!」
佐々木の前に手を差し出す西島。
「やだね!つーか、飲んでいけば?」
「いやだ!車で来てるんだ、飲めるかよ!」
「泊まっていけばいいだろ?星夜の部屋貸してやる。どうせ、夜は俺と寝てるから使わないんだよ……な、星夜」
佐々木は斉藤に視線をむける。
「あ~、いいじゃん、碧、泊まっていけば?俺、こっちに来てまだ、友達が家に遊びに来た事ないし、ましてや泊まりなんてさ……学生時代ぶりかな?」
斉藤はなんだか、楽しそうで、碧もつい、
「僕も泊まりたいです。僕もこっちに来てできた友達って星夜くんしかいないし、お泊りとか、たぶん、幼稚園ぶりくらいかな?」
なんて、わくわく顔。
そんな顔されたらダメとは言えなくなる西島。
「分かったよ。泊まればいいんだろ?」
と、折れてしまう。
「はい!決まり~。」
佐々木はニヤニヤしながら西島をみる。
結局はいつも、コイツに流される。
諦めさせるのも得意なら、その気にさせるのも得意。
仕方なく、佐々木の手伝いを始める西島。
◆◆◆◆◆
キスが上手いなあ…………
キスを何度も何度も、受けながら神林はそんな事を考えていた。
キスが気持ちいいとか思った事が無かったから、ああ、キスって意外と気持ちいいって、なんだか、この時だけ、冷静に考えてしまっていた。
唇が離れて、頭を撫でられた。
キスの先は……………
決まっている。セックス?
昨日みたいに、気づけばベッドで抱かれていたってパターン?
唇が離れてほんの数秒の僅かな時間で、そんな事を考える。
「じゃあ、おやすみ」
此上の言葉に、ん?って、首を傾げそうになった。
あれ?
おやすみって………えっ?帰るの?
「お酒…………は?」
此上はお酒買っていた。
あれ?飲んでいないっけ?飲んだっけ?
飲んだら乗れないよね?車。
「まだ、飲んでないから帰れるよ」
「えっ?帰るんですか?」
驚いて、つい、言葉にしてしまった。
そして、変な事言ったかも!!!って、少し焦る。
「………帰るって言ったら君は止めてくれる?」
「え?」
「昨日みたいに君を抱く………と思うよ?」
その言葉に神林は少し焦る。
くっ!!!まさか、そのつもりでしたとか、言えない。
俺、期待してました。とか、言えない!!!
「顔真っ赤……」
クスクス笑いながら、此上は神林をみている。
「そ、そんな事ないです!!」
慌て顔を伏せる。
「ふせないでよ?せっかく、可愛いのに」
此上は手を伸ばし、神林の顔に触れる。
「か、可愛くないですってば!!俺、三十路ですから」
「可愛いよ。年齢とか関係なくない?」
うっ!!この人って、ほんと、どの口が言うんだろ?
神林は更に照れてしまう。
「君が帰らないでって言えば俺は帰らないよ?」
そう迫られ、神林は顔を上げた。
「………意地悪ですね。此上さんって」
そう返すと、此上はヒョイと神林をお姫様抱っこをする。
「その顔が返事だと判断していい?」
「なっ!!ちょっ、下ろしてくださいよ!!」
お姫様抱っこに恥ずかしくて顔が熱くなる。
「下ろしてあげるよ?ちゃんとベッドでね」
そう言って此上は寝室へと向かう。
そして、言われた通り、ベッドに下ろされた。
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