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僕はちひろさんの1番ですか? 30話

◆◆◆◆◆ 「碧、映画みよ?DVD借りてるんだ」 食事を終えると斉藤が碧を誘う。 「えっ?何の映画ですか?」 DVDと聞き、碧は興味津々。 でも、「変なやつじゃないだろうな?」と西島は不審そう。 なんせ、佐々木がAVを碧に見せた前例がある。 「新作ですよ、じゃーん」 高々と借りてきたDVDを掲げる斉藤。 「わあ~!僕、それ観たかったんですよ!」 碧は直ぐに飛びついた。 斉藤が借りてきていたのは洋画。 前に話題になっていた映画だったので、西島はホッとした。 また、変な物見せられなくて良かったと。 碧は斉藤と仲良くじゃれ合うようにテレビの前でスタンバっている。 見事に放置されている西島だが、楽しそうな碧を見るのは嫌いじゃない。 「ネコちゃん同士の絡みは可愛いよなあ」 嫌らしい目線を送る佐々木。 「お前なあ……」 「あの子らを酒の肴に地酒飲もうぜ」 佐々木は簡単な手作りツマミと酒を持って西島の側に来る。 二人か見えるソファーへと西島が座ると、待ってましたとばかりに諭吉が膝に飛び乗る。 「あ、本物のネコもいたな!諭吉も酒飲むか?」 「飲むばい!」 佐々木の言葉に嬉しそうに声を上げる諭吉の口を慌てて塞ぐ西島。 「お前はダメだ!アルコール強いんだぞ、コレ!」 「ん?西島ってネコと話せるの?」 「えっ?いや、諭吉、ビールとか飲もうってするから、あはは」 笑って誤魔化す西島。 佐々木は西島の分のグラスも用意する。 「水割りにする?お湯割りが良かった?」 「俺は飲まないって」 「なんで?」 「なんでって、別に……」 「お前さ、飲み会でも絶対に飲まないよな……飲めないわけじゃないのに」 「飲み会は俺が幹事とかやってるから、飲めないだけだ。」 「じゃあ、今日はいいじゃん?別に飲み会でも、幹事でもない。」 「だから、いいって!」 「1杯や2杯じゃ酔わないし、俺の部屋だし、気にする事ないと思うけど?お前がぐでんぐでんに酔ってるの見たのって18とか、それくらいだったよな?もう、大人だし、自分の酒の量くらい分かってるだろ?」 その言葉に西島はピクリと反応。 やはり、昔の事気にしてたのかな?って佐々木は思った。 「それにさ、接待とかあるだろ?多少は飲めないと」 「アルコールアレルギーと会社には言ってあるから、強要はされない」 「準備いいな相変わらず。アレルギーじゃないんだから、飲め!」 佐々木は強引に西島にグラスを持たせる。 「俺は強要させちゃうよーん」 ニコっと笑う佐々木。 自分がこんなに頑なに飲まない理由って何だっけって考えてしまう。 記憶があまりないのに、辛いというか切なくなったのを思い出す。 それが染み付いていて、お酒を飲むと思い出しそうで怖いのだ。 中身はまだ、子供なのかも知れないと西島は思う。 でも、もう……大人だ。 何が起こってもきっと、大丈夫だ。 あの頃みたいに小さな子供じゃないのだから。 西島は酒が入ったグラスを口にする。

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