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第26話

◆◆◆ 「碧ちゃん起きてる?」 寝室のドアの向こうから此上の声。碧は風呂から出ると直接、寝室へと来ていた。話を聞くのは何だか申し訳ない気がして。 「起きてますよ?」と碧はドアを開けた。 するとそこには西島をお姫様抱っこした此上が立っている。 やはりお姫様と騎士みたいに見えてカッコイイ。 此上は体格が良いからなおのこと。身長があって筋肉ないとこんなにカッコ良く見えないもんな……なんて碧は羨ましくなる。 「ちひろさん寝ちゃったんですね」 「そうなんだ」 此上はそう言って笑うと部屋に入る。 「ごめんね碧ちゃん、ちひろと水入らずの所邪魔しちゃって、コイツも碧ちゃんとお風呂入れなかったって拗ねるし」 此上はよいしょとベッドへと西島を寝かせる。 「起きたらお風呂入れてやって」 「はい、分かりました」 ニコッと笑って良い返事をする碧。 「ちひろさん今日、ちょっと元気なかったみたいですから……此上さんが来てくれて良かったです」 ああ、碧も気付く程なのかと此上は思った。それならもっとちゃんと聞き出せば良かったかな? 「帰り、何か言ってたの?」 「あ、いえ……そんな気がしたので。此上さんになら話そうだから」 「碧ちゃんに心配させて、アホだな千尋は」 此上は碧の頭を撫でる。 「話は此上さんの方が上手く聞けるでしょう?大人のアドバイスも出来るし……さっき、諭吉とお風呂で話していたんです。僕はそういうの出来ないからちひろさんの側に居ようって」 碧は眠っている西島を愛おしそうに見つめる。 「そうばい、ニッシーは肝心な所でヘタレんなるけんな、コイツもワシらと同じで怖い事は怖い事って覚えてるけん、臆病になってしまうとさ」 ベッドの端で丸くなっていた諭吉がそのままの姿で会話に入ってきた。 さっき、西島が動物と人間は忘れる事の違いを言っていたのにその動物に指摘されている。それは凄いな……と此上は笑いそうになる。微笑ましいという意味で。 「そっか、やっぱ、怖い事だってまだ思ってる部分があるんだな」 「恐怖心はなちょっとやそっとじゃとけんばい?危険を感じとかんば生きていけんし」 「そっか、じゃあ難しいかな?」 「いんや、頑張りしだいやなかか?心開いてくるぞ?ワシら動物も。コイツは大丈夫って根気よく教えれば良かたい、今日がダメやったら明日頑張れば良かし、明日がダメならそん次ばい!根比べたい」 諭吉の言葉に「凄いな諭吉」と尊敬な視線を送る。 「よかよか、今日の飯のお礼ばい、また持ってきたらアドバイスやるばい」 諭吉は顔を上げて此上の方をみる。 「諭吉師匠!そうさせてもらいます」 此上は深々と諭吉に頭を下げた。 「そうですね、今日ダメだったら明日頑張ればいいんですね。僕、ちひろさんが元気になるように頑張ります」 碧もやる気満々に此上に宣言をする。 「ありがとう碧ちゃん。本当に君が居てくれて良かった……君は千尋の支えになっていて、いつもならまた病気になる所を君が支えているから千尋も普通で居られるんだと思う。俺も頑張るよ」 碧の頭をワシャワシャと撫でる。 「じゃあ、帰るよ」 「はい!玄関までお見送りしますね」 そして、此上は碧に見送られて帰って行った。 寝室に戻ると碧は西島の隣に入り込む。 彼の隣で自分なりに彼を守っていこうと決心する碧だった。

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