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もっと、僕に甘えてください。 5話

此上に引き寄せられて、そのまま抱きしめられた。 「君を困らせてる?」 神林は頭を振る。 「俺とセックスしたの後悔してる?」 その質問にも神林は頭を振る。 「そうじゃない……そうじゃないんです。俺、自分の事に精一杯でいつも、いつも、こうやって慰めて貰って……甘えて……すごい、勝手ですよね?」 「俺が好きでやってる事だよ?」 「それでも……おれ、勝手です」 「よしよし、ほら、落ち着こう……」 此上は神林の背中を優しくさする。 「おれ、ちひろがまだ、好きなくせにこんな事……」 「知ってるよ?知ってて君に手を出した……勝手なのは俺も同じだよ」 此上は神林の手の中にあるカップを取り、ベッドの側にある小さなテーブルに置く。 「それでも、手を出さずに居られなかった、最低なのは俺の方なんだよ?君が落ち込む事はないよ」 ギュッと神林を抱きしめる。 「落ち込みます……気持ちに気付かなかった……抱かれた時に気づくはずなのに。」 「君が流されやすいのを知っててやったんだ……最低だろ?」 「最低じゃないです……無理やりじゃなかったし、それに……」 「それに?」 「軽率かも知れないけれど、……気持ち良かったし」 神林の最後の言葉に此上は思わず笑う。 「セックス……かなり久しぶりだった?」 「ちょ、真剣に聞くの止めてくださいよ!!」 「あはは、ごめん!君が誰かに抱かれてなくて良かったよ」 「だから、そんな事を真顔で言わないで下さい!」 神林は此上の顔をみて、照れくさそうななんとも言えない顔をしている。 「泣き止んだね……良かった」 此上は神林の額にキスを落とす。 くっ!!この人はこんなキザな感じの事も平気でしてくるから、こっちが困るんですけど!!!恥ずかしい!! 「千尋が好きでもいいよ?」 「でも」 「だって、俺を好きにさせる自信あるし、ガンガン攻めるしね」 「えっ……とお、ガンガンですか?」 「そう、ガンガンね!」 此上はそういうと、また神林を組敷く。 「容赦なく抱くって事。身体が疼くくらいにエッチな身体にしてあげるよ?」 「だから、真顔でそんな恥ずかしい事言わないでくださいよ!!」 「それくらいの覚悟はあるって事」 「……うっ」 全く……って思った。この人、こんなに強引だったかな? 「でも……」 でも、千尋がずっと、好きだった人だ。 「でも?」 「千尋……アナタの事を好きでした」 「過去形でしょ?今は碧ちゃんって子と暮らしてる」 そうだけど…… そうだけど、また、この人に会ったら? この人とセックスしたって知ったら? 「千尋に嫌われるって思ってる?」 神林は違うを首を振る。 「千尋が傷つかないか……って」 「ほんと、優しいね」 此上は神林に覆いかぶさると、 「ちゃんとね、ケリはついてるんだよ。千尋の好きは恋愛対象の好きじゃないよ。寂しくて、側にいた俺に好意を寄せただけ」 「でも、」 「うん、かなり泣かれたな。あの子は自分を追い詰めるくせがあるから、病院の世話にもなってしまってね。それは申し訳ないって思った。辛い時に突き放しちゃったからね。」 「千尋と会わなくなった原因ってそれですか?」 「うん。避けるように留学されて、心配で追いかけていったら、喧嘩になったよ」 「……千尋、どうやって立ち直ったのかな?」 「あの子はね、ちゃんと強い子なんだ。本当はね……」 「知ってます……」 「ちょっと、途中でひねくれちゃったっぽいけどね」 「それも知ってます」 「千尋が嫌うとしたら君じゃなくて、俺だよ?だから、気にしなくていい」 「……そんな、気にします!」 「千尋ももう、大人だよ?」 そうだけど…… そうだけど…… 心の中ってわからない。 どれだけ傷ついてきたのかも。 「俺は君が好き、それは変わらないから」 そういってキスされた。 優しいキス。 俺を好き……? あ!!! 「じゃ、千尋を振った理由って俺ですか?」 ハッと気付く神林。 「そうだよ?」 えっ!!!ええっ!!! マジすか!! 「なに?急にまた、凹んでるね」 へこむよ!!そりゃあ、へこむ!! 病院のお世話になったのって俺のせいじゃんかあああ!!!! うわあ!!! 千尋!!!ごめん。 「なに、ジタバタしてるの?」 「大事な事に気づいたんです!!千尋が留学したのも、度々、精神的に参って倒れたのも俺のせいじゃないですか!!!」 神林はどうしようもなく、此上の下でジタバタと暴れる。 「さっきも言っただろ?君のせいじゃない!!」 グッと両手を押さえつけられた。 「でも」 「君のせいじゃない。君が傷つく事じゃない」 神林は涙目になる。 「ほんと、わかりやすくて、困るな」 此上は神林をそのまま抱きしめた。 ◆◆◆◆◆ あれ?ここどこだっけ? 西島は目を開けて周りをキョロキョロ。 ゆっくり起き上がると、少し頭が痛い。 周りの様子で自分の部屋じゃない事はわかった。 えっーと、どうしたっけ? ゆっくり起き上がると、 「うーん」 と隣から碧の呻き声。 シーツをめくると諭吉と一緒に熟睡している。 無防備な寝顔が可愛い。 髪を撫でる。 ……あ、そうか、昨夜、佐々木の部屋に来たんだ。 ふと、昨日の事を思い出し、自分が佐々木のマンションに居ると理解した。 でも、いつの間に寝たんだろ? 西島には昨日の記憶がない。 お酒飲んだ事は覚えてるんだけどな。 その後…… もしかして、俺、寝ちゃったのか?? あ!!くそ!!佐々木にからかわれるな。 ちょっと、落ち込む。 「んん、」 諭吉がググッと身体を伸ばして、目を開けた。 「ニッシー腹減ったばい!」 「起きて直ぐそれかよ……」 「ワシは猫ばい?本能のおもむくままばい」 そうですね!!って西島は笑って諭吉の頭を撫でる。 「なあ、俺、昨日どーした?」 「昨日、酒飲んで寝たな」 ヤッパリ!!と思った通りだったので、ちょっと、落ち込む西島であった。

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