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もっと、僕に甘えてください。7話
キスが上手いから流されそうだ……
神林は流されそうになるのを我慢し、彼をおしのけて、
「今はだめです!!!」
と叫ぶ。
「今はダメって事は後からならいいって事でいいのかな?例えば今夜とか」
ニヤリと笑いながらに言う此上。
確かに、今はダメって言ってしまい、そんな風に捉えられえしまうって、気付いた。
恥ずかしさに黙り込む。
「違うって言わないって事は今夜いいって事だね。」
此上はそう言ってベッドから起き上がる。
「朝食作ってあげるよ」
「あ、今日は俺が作ります!」
神林も慌てて起き上がる。
「んじゃあ、裸エプロンしてくれる?」
「はあ?」
「いいじゃん、やってよ」
冗談なのか本気なのか、クスクス笑いながら此上はベッドサイドに立つ。
何も身に着けていない、逞しい身体が嫌でも視界に入り、神林は目のやり場に困る。
「なに、照れてるの?」
照れる神林の頭を撫でる此上。
「て、照れますよ!」
「俺はトオルには真っ裸で居て欲しいけどな」
「い、嫌です!!風邪引いちゃうじゃないですか!」
神林はベッドの下に落ちている自分の下着を掴む。
「着ちゃうんだ?」
「き、着ちゃいますよ!!此上さんもパンツはいてくださいよ!」
「だから、篤だって」
「……篤さん、パンツはいてください。」
神林はそう言って此上に下着を渡す。
此上は仕方ないといった感じで下着をはくと、シャツを羽織って寝室を出た。
今夜も……
神林は彼が言った今夜もという言葉で頭が埋め尽くされた。
そして、昨日、告白された事と、西島に悪いなっていう気持ちも一緒に思い出して、また、落ち込むのであった。
◆◆◆◆◆◆
「ニッシー泣き止んだか?そろそろ、飯ば食いたかぞ!」
諭吉がベッドの周りをウロウロして、ご飯を催促している。
雰囲気ぶち壊し……なんて、思うが、こういう時の諭吉は便利だ。きっかけを作ってくれるから。
「だから、泣いてないって!!」
碧から離れる西島。
「はい。ちひろさんは泣いてないです。」
もちろん、泣いてないなんて本気で碧も思っていないが、言い張る西島を尊重する。
「泣いてなかなら良かやっか、飯ばい!」
諭吉はドアに向かう。
「ふふ、ほんと、諭吉って、食いしん坊」
碧は笑ってベッドから降りる。
碧の言葉で、本当に諭吉と会話出来ているんだと、西島は嬉しくなる。
本当に良かった。
諭吉が寂しがっていて、碧もきっと、心のどこかで寂しかったはず。
「ちひろさん、行きましょう?」
笑顔で呼ばれ、西島もベッドを降りてドアへ向かう。
キッチンへ向かい、2人と1匹は固まる。
キッチンで、斉藤と佐々木がいちゃついている。
いちゃついているというか、ヤル一歩手前。
「碧、見ちゃダメだ!」
西島は慌てて碧の両目を手のひらで隠す。
そして、2人に咳払いをして、お前ら何やってんだ!!アピールをする。
「あ……」
咳払いで西島と碧に気づく2人。
「わりぃ、先に星夜食ってる」
慌てる感じもなく、続けようとする佐々木に、
「いや、ベッドでやれよ!」
と言い放つ西島。
「ゆうちゃん、俺も碧と西島部長に見られながらヤルのは流石に……」
流石の斉藤も碧を目の前にして、最後まではヤレない。
純粋な子供も汚い大人が汚していくような感じがするから。
「って、いうか、お前ら仕事だろ?」
「仕事の前の1発ってなかなか、いいぞ、今度、碧ちゃんと朝からやってみたらいい」
「断る!」
冷めた目で佐々木を見る西島。
「とりあえず、1回イッてくる」
佐々木は斉藤を抱えあげて、寝室へ。
あの、変態野郎ども!!!
西島はここにはもう、泊まりくるのは良そうと誓うのであった。
「碧、大丈夫か?」
西島は碧の両目を覆っていた手のひらを外す。
「はい。ちょっと、ビックリしました」
斉藤と佐々木の行為はそこまでじっくりと見てはいない碧。抱き合う2人をみて、ビックリして目を閉じていたから。
その後に西島の手のひらの感触と体温を感じた。
「ほんと、あいつらは……」
「人間は万年発情期やけんな」
諭吉の言葉に西島は笑う。
テーブルの上に朝食が用意されていて、席に着く。
「佐々木部長と星夜くん待ちましょうか?」
席に着いた碧は2人を気にしている。
「待ったらワシが死ぬばい!!マグロ!!マグロば食いたか!!」
諭吉がテーブルの下で叫ぶ。
「お前、朝からマグロって……他所の家で遠慮なしか?」
「いやばい、マグロ食べたいばい!マグロうううう!!」
「こら、諭吉、騒ぐな!!」
西島が注意すると、
「マグロは冷蔵庫にあるぞ」
と佐々木が戻ってきた。
冷蔵庫にあるという言葉で、諭吉は冷蔵庫の前で落ち着きなくウロウロし始める。
「お待たせ!!碧、食べずに待っててくれたんだ?」
斉藤も戻ってきた。
「早かったな」
「俺が早漏って言いたいのか?」
西島の言葉に諭吉にマグロを与えながら佐々木が言う。
「西島部長、早かったのは挿入してないからです!!ゆうちゃんは決して早漏とかじゃありませんから!!」
斉藤は佐々木を庇う発言をする。
「俺は挿入すると長いからな、遅刻するし、星夜もヘロヘロになる」
「いや、そんな生々しい話は聞きたくないから」
西島は碧の両耳を塞いでいる。
変な話は聞かせなくない。
「あ、碧が居たね」
斉藤も碧の存在に気付き、ちょっと、気にしたようだ。
でも、真っ赤になって恥ずかしがる碧を見たいなあっ!!なんても思う。
◆◆◆
「昨日、俺、途中寝ちゃったみたいで悪かったな」
西島は佐々木に一応、謝る。
普段なら謝る事は考えていないが、他人の家で酔って寝てしまうのは流石に大人のする事ではないと反省。
「いや、いいよ。たまには酔っていいんじゃないか?お前、飲み会は飲まないしさ、そんなんじゃストレスたまるだろ?また、来いよ。俺んちなら気にしなくていいからさ」
佐々木の優しい言葉に西島は驚く。
それと、同時に違和感も感じる。
こいつが、こんな事を言う時は必ず裏がある。
本当に裏がないかと、じっーと佐々木を見つめる西島。
「お前、何だよ、その目は……!!碧ちゃんだって、昨日楽しそうだったぞ?ほら、こっちで、友達んちに泊まりに来たりとかした事無かったみたいで、星夜もオッサンよりは年近い子とたまは遊びたいだろうし」
そう言われて、昨夜、碧が嬉しそうだったのを思い出した。
そうだな……。
碧だって、友達と遊んだり……まあ、寂しいけどさ。
今度は碧を見つめながら、
「楽しかったか?」
と聞く。
「はい!!」
笑顔で答える碧にたまにはいいかな?って思った。
「まあ、たまにはいいかな」
と答えた西島。
もちろん、佐々木に裏があるなんて、西島は気付かないでいた。
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