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もっと、僕に甘えてください。 8話
◆◆◆◆◆
「ゆうちゃんって凄いよね」
朝食を終え、西島と碧&諭吉を見送った後、斉藤が佐々木を見つめ、言う。
「エッチがか?」
「それもだけど、西島部長!」
「ああ、」
斉藤が言いたい事が何か分かった佐々木はニヤリと笑う。
「アイツが酒飲むと可愛くなるんだから、飲ませないのは勿体ないだろ?碧ちゃんだって喜ぶ!!」
「まーね、確かに可愛かったもんな西島部長」
「お前と碧ちゃんが居なかったら食ってるレベルだからな」
「ゆうちゃんの野獣ううう!!」
斉藤は正面か抱き着くと頭をぐりぐりと佐々木に押し付ける。
「野獣が好きなのは誰だよ?」
「俺でーす」
顔を上げて微笑む。
「ほーんと、仕事さぼってやりまくりたいもんだな」
佐々木は斉藤に軽くキスすると、
「仕事いきますか!!」
と斉藤を促す。
◆◆◆◆◆
部屋に戻ってきた西島と碧。
「疲れたばい!ワシは寝る」
諭吉は真っ先に自分の寝床へとまっしぐら。
「猫、まっしぐらかよ」
西島は笑う。
「ちひろさん、凄く楽しかったです。ありがとうございました」
碧は西島の前に立ち、深々とお辞儀をする
。
「俺も楽しかったよ。また、色々と行こうな」
「はい!」
ニコッと微笑む碧は可愛い。
「碧の実家にもまた、行きたいし」
「もちろんですよ!ちひろさんはもう家族ですよ?」
家族……
その言葉は随分昔に失っていたと思っていた。
「そうだったな」
西島はそう言って碧を抱きしめる。
「ちひろさん、夕食は僕が作りますからね。運転してくれたお礼です」
抱きしめられたままに言う碧。
「あ、食材買わなきゃダメだった」
「買い物も僕が行きますよ?ちひろさんは休んでてください!」
「いや、一緒に行こう……ううん、一緒に行きたい」
言葉を言い換えると碧は嬉しそうに笑うと、
「はい!一緒に行きましょう!!」
と元気に返事をした。
◆◆◆◆◆
2人でスーパーで仲良く買い物をする。
「碧、アイス持っておいで?」
碧はいつもお風呂上がりにアイスを食べているので、「はい!!」と目をキラキラさせながらアイスコーナーへと走っていく。
そういう所はまだ、子供。
本当に可愛いと思う。
西島が野菜を選んでいると、
「ちーちゃん!」
と知っている声が真後ろから聞こえ
た。
ゲッ!!!ミサキ!!
よりによってこんな所で、こんな時に!!
振り向くのを躊躇すると、
「ちょっと、無視しないでよ!」
ミサキが西島の前へと回り込んできた。
「ミサキ……」
「ちょ、何、露骨に嫌な顔してんのよ!」
「別に……何の用だよ?」
ぶっきらぼうに答える西島。
「めっちゃ、嫌そうじゃないよ!ちーちゃん大丈夫かな?って心配してマンション行こうとしたら、ちーちゃんの後ろ姿と神林くんの車みたから」
くそう!!
見られていたのか!!
「元気な姿見たからいいだろ?はい、帰った帰った!!」
西島は追い返すように手のひらで帰れとアピール。
「ちょっと、酷くない?」
とミサキが言った瞬間に、
「ちひろさん、アイスこれ買ってもいいですか?」
と碧がアイスの箱を手に戻ってきた。
あああ!!もう、タイミング悪いいいい!!
と西島は慌てるのであった。
碧に気付くミサキと、ミサキに気付く碧。
「あ!!」
それは2人同時に発せられた。
「こ、こんにちは!!あの、あの、この前はすみません、ちゃんと挨拶できなくて!!」
碧はミサキに深々と頭を下げる。
会った時にちゃんと挨拶できなかったのが悔やまれる碧。
「碧くん、いいのに、そんな!!」
頭を深々下げる碧に慌てるミサキ。
「でも、きちんと挨拶はしなきゃ、ぼく、社会人だし!!」
そう一生懸命に言う碧は悪いけれど、可愛い過ぎてミサキには社会人には見えない。
なんて、可愛いんだろ?なんてニヤニヤしたくなる。
「じゃあ、神林くんも一緒かな?碧くんが居るから」
ミサキはキョロキョロと店内を見渡す。
「なんで、神林なんだよ?あ?車か?車は神林が貸してくれたんだってば!」
「えっ?いないの?」
あれ?
碧くんが一緒なら居ると思ったのに……。
「ちーちゃんと碧くんは何してるの?」
そう聞かれて碧は困ったように西島をみる。
恋人だとはまだ、紹介されていない。
どう説明すればいいだろう?
「ミサキ、少し待ってろ!会計してくるから」
「えっ?」
「俺と碧が何してるか知りたいんだろ?」
「う、うん」
「じゃあ、後で説明するから」
西島にそう言われ、ミサキは素直に分かったと返事をして、自分の車へと戻った。
「ち、ちひろさん説明って?」
碧はその説明が自分との関係を言うのだと分かり、顔が赤い。
照れるし、焦る。
ぼく、ぼく、子供っぽいもん!!
今日の服……
碧は店内のガラスに自分の姿を映す。
どうみても子供っぽい。
「ち、ちひろさん、あの、僕、服着替えたいです」
西島の上着の裾を引っ張る。
「へ?なんで?」
「お、お姉さんに紹介するんですよね?僕を……僕、今日の格好子供っぽいから」
焦る碧。
碧の格好はいつもと変わらないのに、かなり焦っている。
子供っぽいからっていう理由も可愛い。
「ばかだな、碧……碧は俺にいつも、何着てもカッコイイって言うだろ?それなら、碧もそうだよ?碧は何着ても最高にカッコイイよ」
本当は可愛いと言いたかったのをグッと我慢した。
だって、可愛いといえば、さらに着替えると言って利かないだろう。
「ほ、本当ですか?」
「うん、本当だよ?」
西島は碧の頭をなでた。
西島がそんな風に言うならと、碧はそのままで良いと納得した。
でも、心はかなりドキドキしている。
お姉さん……僕を気に入ってくれるかな?
心臓がバクバクと音を立てて、身体が緊張で熱くなってくる碧だった。
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