263 / 526

もっと、僕に甘えてください。 10話

◆◆◆◆◆ 西島のマンションに着いた。 ミサキは西島がここに住んでいるとは知ってはいるが、駐車場までしか来た事がない。 決して部屋には上げてくれなかった。 それは凄く寂しい事で、まだ、信用されていないという証と、家族だと認めてくれていない証だった。 彼はいつも、線を引いていて、他人がその線を越えるのを嫌がった。 もちろん、彼本人もその線を越えようとはしてくれなかった。 初めて会った時、彼も自分も子供で。 特に西島は目さえ合わせてくれなかった。 世話係りの此上の後ろにいつも隠れていて、まともに話したのは出会ってから、随分経っていたと思う。 それから、次第に目も合わせてくれるようになったし、会話も増えた。 ミサキは弟がずっと欲しかったから西島が家に来た時は凄く嬉しかった。 大人の事情とか子供のミサキには関係なくて、ただ、自分に弟が居るっていうのが心から嬉しかったのだ。 もっと、心許して欲しいと思っていた…… そしたら、なんと部屋に初めて上げて貰えるという幸運にめぐり会えてミサキのテンションはマックス!!! 車を停めて、西島と碧が荷物を持って降りてきた。 碧くん……も一緒なのね…… うん、……いや、もう、とっくに気付いてたんだけどね。 ミサキは西島のマンションへの道のりで色々考えていた。 碧とスーパーに居る時点で、察しなければいけなかったと結論に達したのだ。 同じマンションに帰るって事は1つしかない!!! あの可愛い碧くんはちーちゃんの恋人なのね!! そうなのね!! くうう!!だから、あの時、神林くんと居たんだ。 神林くんちーちゃんと会ってたもんね。 付き合っていたのは神林くんじゃなくて、ちーちゃんの方か。 なるほど!! ミサキも車から降りる。 碧がぺこりとミサキに頭を下げる。 あああ、なんて可愛いんだろ碧くん。 ちーちゃん良くやったわ。 ミサキは西島の肩を抱き、良くやったと言いたい衝動をグッと我慢した。 そして、西島と碧の後ろをついて、部屋へ。 西島は鍵を開けて、碧を先に入れた。 そして、ミサキの方へ振り向くと、 「お前……そのニヤけた顔やめろ!」 と言った。 「へ?私、にやけてる?」 「かなりな……もう、察してるんだろ?俺と碧の関係」 「察してるから、こんな顔なのよ」 「……お前、碧に抱きついたり、テンションマックスで接するなよ?怖がるから」 「や、やだな!!ソンナコトシナイヨ?」 「なんで、カタコトなんだよ?とにかく、変な行動すると二度と部屋に入れないからな」 二度と部屋に入れない…… そのニュアンスからすると、今後は部屋に入れてくれる可能性があると取れる。 マジかちーちゃん!! お姉ちゃん嬉しい。 「しない、しないから入れてよ」 ミサキがそう言うと玄関に入れてくれた。 「にゃー」 玄関に入ると直ぐに諭吉が鳴く。 「きゃー、ネコちゃーん」 ミサキはしゃがむと諭吉を撫でる。 「ほら、お前が上がらないと俺が上がれないだろ?」 西島はミサキにさっさと上がるようにと要求。 「あ、あのお姉さん……」 碧がカチコチに固くなって挨拶をしようと必死だ。 「碧、先に荷物をキッチンに持っていって」 「は、はい!」 碧はビニール袋をよいしょ、よいしょと運んでいく。 その姿は本当に微笑ましい。 「ミサキ、くれぐれも変な事するなよ?変な事するなら兄弟の縁切るからな」 西島の言葉…… 兄弟の縁…… 縁ですとおおおお!!!! マジですか!!ちーちゃんって私をちゃんと兄弟とか思ってくれてたのおおお? お姉ちゃん嬉しい!! ミサキはハグしたい気持ちと嬉し泣きな感情をグッと堪えた。 後で悶えよう……そう心に誓う。 初めて入る西島の部屋。 きちんと生活していると見てわかる部屋。 掃除もされてるし、所々にあるファンシーな猫グッズは碧のものだろうと思うミサキ。 同棲してるのかあ…… そうかあ…… そりゃ、部屋に呼んでくれないわね。 この部屋で碧くんといちゃこらして生活してるのね。 こりゃ、たまりませんなあ。 同棲感溢れる部屋にミサキのテンションは上がりまくりであった。

ともだちにシェアしよう!