264 / 526
もっと、僕に甘えてください。 11話
「適当に座ってろ、お茶入れるから」
西島にそう言われミサキはソファーに座る。
お茶を用意しようとする西島に碧は慌てて、
「ち、ちひろさん、僕がいれます!!」
とキッチンへ。
ちひろさんって呼んでるんだねえ碧くん。
ちーちゃんは碧って呼び捨てしてたし。
ちひろさんに碧かあ……、なんか、いいわあ。
ミサキはキッチンに並んで立つ2人に熱い視線を送る。
「碧は座ってていいぞ?」
「で、でも、ちひろさんのお姉さんです!!お、お客様だし、おもてなししなきゃ!!」
碧が緊張しまくっているのはとっくに気付いているが、更に緊張しているようで、その姿は可愛い。
「ありがと、じゃあ、一緒にしよう!碧、カップ出して」
「はい!」
一緒にしようって言葉が嬉しい。
碧は元気よく返事をして、カップを出してきた。
◆◆◆◆
「にゃーん」
諭吉がミサキの足元へと来た。
「ネコちゃん!!名前……えっーと、諭吉?」
「にゃん!!」
「かわいい!!返事したの?偉いねえ、イイコイイコ」
ミサキは諭吉の頭を撫でる。
「抱っこしても怒らないかな?」
諭吉にそう聞くミサキ。
「にゃん!」
諭吉は可愛く鳴くと、ミサキの膝に飛び乗った。
「あーん、可愛い!いいなあ、ネコ!」
ミサキは諭吉の頭をグリグリと撫でまくる。
西島と碧がお茶を持ってミサキの所まで来た。
「ちーちゃん、諭吉、人懐っこいね。可愛い」
「あ、お姉さん、諭吉の毛つきますよ?諭吉、超毛種だから」
ミサキの服を気にする碧。
お姉さん……
ああ!!いいわあ!!お姉さんって呼ばれるの。
ちーちゃんは呼んでくれないし。まさか、こんな可愛い男の子がお姉さんって呼んでくれるなんて思わなかったわ。
「碧くん、気にしないで?私、ネコ大好きなの」
「ほんとうですか?良かった」
「うん、それとね、お姉さんって呼ぶよりお姉ちゃんって呼んでみて?」
「えっ?ええっ?」
ミサキの突然のお願いに碧はたじろぐ。
やっぱり、こうきたか……
ミサキのお願いを聞いた西島は、案の定、彼女が碧をかなり気に入っていると確信した。
絶対に自分をお姉さんって呼んでって言うと思っていた。
「お願い!!」
ミサキにお願いされ、碧は恥ずかしそに、「お姉ちゃん」と呼んだ。
ぐはっ!!!!
くるわ、コレ!!!
頬染めてお姉ちゃんとか、やーん、もう!!お姉ちゃん、碧くんの色々と買ってあげたくなるじゃないのよ!!
悶えるのを我慢するミサキ。
悶えるミサキを見ながら西島は彼女が碧をかなり気に入ってしまったと確信。
交際は反対されはしないだろう。
でも、きっと、色々とうるさくなりそうで怖い。
「ミサキ、紹介するよ。佐藤碧くん……俺の恋人」
それは唐突だった。
碧は心の準備とかまだしていなくて、西島がサラリと自分を紹介するもんだから、目をクリクリとさせて西島をみた。
ち、ちひろさん……こ、恋人?
僕を恋人って……
ふあああ!!!!
恋人って紹介してくれるんですね。
ちひろさんんん!!
碧はミサキの方を向き、正座をすると、
「あ、あの、ぼく、ちひろさんとお付き合いしてます!!あの、あの、不束者ですがよろしくお願いします!」
と勢い良く頭を下げたものだから、
ゴンっ!!!
鈍い音が部屋に響いた。
「碧ー!!」
「碧くん!!」
2人は慌てる。
碧はおデコをさすりながら顔を上げる。
痛さで目は涙目。
「いたいですう……」
「見せてみろ!」
西島は碧を引き寄せる。
「私、ハンカチ冷やしてくるね!」
ミサキは慌てて立ち上がると自分のハンカチを出してキッチンへ。
「大丈夫か?」
碧のおデコは赤い。
「ううっ……やっちゃいましたあ」
碧の大きな瞳はさらにうりゅうと涙目に。
「き、きちんと挨拶できなかったです。恥ずかしいです」
「碧……」
本当に可愛い!!
西島はおデコを優しく撫でる。
「碧の可愛さは充分伝わってると思うぞ?」
「可愛さじゃないです、ドジな所ですうう」
碧はもう、穴があったら入りたい心境だった。
もっと、ちゃんと挨拶したかった。
本当に僕って、ダメダメだよおお!!
お姉さん呆れたかな?
大事な弟の恋人がこんなんじゃ嫌かな?
そんな心配が身体中を駆け巡る。
ともだちにシェアしよう!

