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もっと、僕に甘えてください。 12話
あ~、もう、何あれ……、あの場所だけお花畑じゃないの。春が来てる!!
ミサキは濡らしたハンカチを持ったまま、西島と碧を見ている。
碧くん、可愛いなあ。女の子みたい。
あんなに可愛い子がちーちゃんの恋人!!
ん?って事は私の弟にならない?
ま・じ・か・!!!
今度からあの可愛い碧くんに「お姉ちゃん」って呼ばれるんだあ。ああ、いいなあ!!ちーちゃん、グッジョブよ!!
ちーちゃんもあんな顔出来るんだなあ。
碧を見つめる西島の表情は優しくて、そして、ミサキが見た事もない笑顔を向けている。
碧くんって凄いなあ。私や神林くん、此上さんが頑張ってもあの優しい笑顔はさせられなかったのに。
ちーちゃん、今、幸せなんだね。
良かった……。
「ちーちゃん、私、帰るね」
ミサキは濡れたハンカチを西島に渡す。
「えっ?どうしてですか?お姉さん!!ぼ、僕がキチンと挨拶出来なかったから……」
碧は慌ててミサキを止める。
大きな瞳に涙を溜めて。
うわあ!!可愛いなあ。
「違うわよ、碧くん!用事あるんだよ。」
笑顔で碧を見つめるミサキ。
「碧くん、ちーちゃんをよろしくお願いします
。」
そして、そう言うと深く頭を下げた。
「お、お姉さん!!ぼ、僕こそよろしくお願いします」
碧も慌てて頭を下げる。
「うふふ、碧くんって可愛いなあ。ちーちゃんが好きなるの分かるな……私も碧くん気に入ったもん」
「ほ、本当ですか?」
気に入ったという言葉で碧は顔を上げて目をキラキラさせた。
僕を気に入ったってお姉さんが!!嬉しいです。
「うん、ちーちゃんの恋人が碧くんで良かった。これからも末永くよろしくね」
「は、はい!!!お姉さん!!」
碧の大きな瞳がキラキラと輝き、玩具を目の前にした小型犬みたいで、ミサキはああ、もう、本当に可愛いなと彼の頭を撫でなくなる。
でも、それをやったら、この部屋は出禁になると我慢。
「じゃーね、ちーちゃん」
ミサキは西島にひらひらと手を振る。
「本当に帰るのか?」
「2人の邪魔はしません!!」
ミサキはそう言うと玄関の方へ身体を向ける。
「んじぁ、今度、夕飯に呼んでやるよ」
「はっ?マジで?」
ミサキは目をクリクリさせて、振り返った。
「嫌ならいいけど?」
「い、嫌なわけないじゃん!!」
「じゃあ、碧と2人で接待してやるよ」
「接待って……ちーちゃん、私、取引先じゃないよ?」
「僕も頑張りますからまた来て下さい」
「うん、また来るね」
ミサキは2人に約束して、帰って行った。
◆◆◆◆◆
「お、お姉さん、僕を気に入ってくれたって言ってましたけど、本当ですかね?僕、上手く挨拶出来なかったのに」
ミサキが帰った後、頭を下げた時にぶつけた額を西島に冷やしてもらいながら、碧は少し不安そうだ。
気を使ってくれたのかも知れないって思ってしまった碧。
「凄く気に入ったみたいだな。碧が可愛いから……今度来たらまたお姉さんって呼んでやってくれよ」
「は、はい!!何度でも呼びますから」
「ニッシーの姉ちゃんは夏みたいやな」
碧の横にちょこんと座る諭吉。
「あ、確かに夏姉ちゃんみたいな感じがした」
「きっと、気が合うばい、、それよかニッシー、ワシ、腹減って死にそうばいマグロないんか?」
「諭吉、お腹空いたの?」
「夕飯の支度しなきゃいけないな」
「僕、手伝います」
「今日はだめ、おデコ、まだ冷やしてなさい」
「もう大丈夫ですよ?」
「心配だからダメ」
「なんや、ニッシーはほんとに過保護ばい」
諭吉に呆れられるが、碧の事になると過保護で結構!!と開き直る事が出来るのだ。
「俺は碧に甘くていいんだよ」
「開き直ったな?」
「そう!!だから、碧は座ってテレビ見てろ」
西島はそう言って立ち上がった。
「マグロが先ばい?ワシ、腹減っとうとばい、猫の方が人間より小さいとやけん、可愛いがれ!!」
「本当に……お前は……」
西島は冷蔵庫へ向かうと、ドアを開け中からマグロを取り出す。
俺は諭吉にも甘いよな……
自覚あるからいっか……
「おお!!さすが、ニッシーばい!!」
諭吉は自分用の皿の前でちょこんと待つ。
前足を揃えた待ち姿を見るのが西島は堪らなく好きだ。
マグロを皿に移すとガツガツ食べる諭吉。
「お前、ほんと、マグロ好きだな?飽きないのか?」
「ニッシーは碧を好きな気持ちに飽きるとや?」
「あ、飽きるわけないだろ?」
マグロと碧を一緒にしやがってええ!!と西島はちょっと怒る。
「そいと同じばい。飽きるわけなかろーもん」
諭吉はまた、ガツガツと食べ始める。
まあ……そんな所も可愛いと思ってしまう西島は碧にも諭吉にも甘い。
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