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もっと、僕に甘えてください。 13話
◆◆◆◆◆
「で、此上氏ってセックス上手いの?」
佐々木のストレートな質問に飲んでいたお茶を吹き出しそうになる神林。
「話聞くって、それか!!」
「重要だろ?身体の相性って?」
「お前……」
「星夜とは身体から入ったけど、今はアイツ無しじゃ考えられないしな。心で繋がってるとか言うのはジイサンになってからだろ?現役の時はまずは身体の相性」
キッパリと言い切り佐々木がなんか、清々しいとも思えるから面白い。
「神林って快楽に弱そうだしな」
「な、なんだよ、ソレは!!」
「身体もだけど、ココも」
佐々木は神林の心臓辺りを指さす。
「愛情不足って感じ。西島もそうだけど、アイツは複雑な環境だったしな。神林の場合は気持ちを隠すタイプで、本当に好きな相手に何も言えずにいる……」
その言葉に少し、ドキリとした。
佐々木は鋭い。もしかしたら西島に片思いしていたのを気付かれてるかも知れないのか?なんて、今更ながら心拍数が上がってきた。
「で、付き合うのか?」
「……」
自分が分からないのだ。どうしたい?此上と付き合いたいのか?
「付き合っちゃえば?」
「おま、そんなアッサリと……他人事だと思って」
「他人事だろ?俺の事じゃない。例えば俺の場合なら付き合う」
「……お、俺は……よく、分かんなくって」
「まあ、だから悩んでるんだからな」
「そうだよ」
「んじゃあ、今夜また、セックスして考えてみれば?」
「は?お前……本当にセックスの事ばかりだな。発情期か?」
「星夜専門のな……セックスって子作りの為だけじゃないと思うしな。快楽もあるし、満足もあるし、独占力もある……相手が自分で気持ち良くなっているの見ているのもいいしさ」
「お前っていいよな。本能のおもむくままで」
「当たり前だろ?人生って1度っきりで、好きな相手と思いっきりセックス出来る年数って決まってるんだぞ?人は生まれて人生の半分はシニアなんだから、今しかねーだろ?」
「その力説ぶりを仕事にいかせよ?もっと出世しそう」
神林は佐々木の言葉に笑ってしまった。
「出世は後からでいい。上に行けばクソ忙しくなるだろ?今だって充分に忙しいのに、コレ以上
忙しくしくなると星夜とイチャつけなくなる」
「斉藤君をかなり溺愛してるんだな」
話している間に斉藤の名前が何回出てきただろうか?
「してるよ?アイツ、可愛いから」
「リア充死ねって言いたくなる奴の気持ち、なんか今なら理解出来そうだな」
「お前自身もリア充になりゃいいだろ?此上氏と似合ってると思うぞ?何が不満なんだ?此上氏の」
「ふ、不満なんか無い」
「じゃあ、言い方変える。何に遠慮してる?西島か?」
チクっと心臓を針で刺されたような感覚がした。
「図星?別にいいだろ?西島には碧ちゃんが居る。今更、此上に未練も何もないだろ?」
「でも……」
でも、西島が好きな相手なのは変わらない。
確かに今は碧が居るから、此上には気持ちは無いだろう。それは、分かっているのだ。
「それとも、お前自身が西島にまだ未練あるとか?」
「……!!」
ああ、やっぱり、バレていたのか。
神林は次の言葉を上手く返せず黙ってしまった。
「本当にお前と西島って嘘つけないよな。きっと、そうだろうなってずっと思ってたぞ?高校の頃から……お前は何も言わないから気付かないフリしてた。思春期だし?根掘り葉掘り聞かれるのも嫌だろうし、優しいだろ?俺」
佐々木はそう言ってニヤリと笑った。
「片思いは切ないもんだけどさ、1番楽しいのが片思いだからな。妄想の中なら傷つかない。思春期男子の悪い所」
「思春期...は、過ぎてるよ」
「今も似たようなもんだろ?恋愛も人生も奥手だと誤魔化しきかない年齢になってるだけでさ。楽な方を選べる歳はもう過ぎてるんだから、覚悟決めろよ」
「覚悟って?」
「西島をキッパリ諦める」
とっくに諦めている...って思っているのは自分だけかも知れない。
実際、諦めろって言葉にされたら、凄く怖くなった。
どうして、怖いのだろう?良い大人なのに。
本当に思春期男子だな。
神林は笑いたくなった。
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