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もっと、僕に甘えてください。 14話

女々しいという言葉が良く似合う。本当に女々しいよな、俺。 「そりゃ、告白してないからだろ?自分の気持ちを言葉にしてないから女々しくもなるさ」 神林の気持ちを読んだような佐々木の言葉。 「折角、自分の中に芽生えた気持ちを相手に伝えないと未練残るんだぜ?」 ああ、その通りだよ。 未練タラタラ……これは此上さん、いや、篤さんに失礼だよな。 ちゃんと気持ち伝えて貰ったのにさ。 あああ、俺って本当にダメダメじゃーーん!! 神林は壁に頭を打ち付けたい衝動に駆られた。 「だーかーらー!!神林、考え込むなって!!」 佐々木の声に彼を見る。 「簡単だろ?気持ちに整理つけるだけだ!!お前、なんだかんだって此上氏を気になってる。そうじゃなきゃ、セックスしないからな。お前は今まで特定の恋人作らなかったし、誰彼構わず寝る事もしてなかった。西島に貞操守ってたって感じだったのに、やっちまったって事は心、傾いているってこった……」 そう言って佐々木は神林の背中を叩く。 そうかな?そうなのかな? 俺は彼に甘えてるだけじゃないかな? 寂しいから……。 彼の優しさに甘えてる。 キチン気持ち伝えてくれてるのに。俺は…… あああ!!これじゃあ、本当に思春期の少年じゃんかよおおおお!!! くそおおお!! 「本当にお前って見てて飽きないよな」 目の前で繰り広げられる百面相に佐々木は笑う。 「まあ、せいぜい悩め青年よ。ちゃんとアドバイスはしたからな?後は自分でどうにかしろ」 佐々木は時間も迫っているので、その場を去って行った。 アドバイスは貰った…… そう、後は自分で考えて行動するしかない。 で、出来るかな?そんな不安が過ぎる神林であった。 ◆◆◆◆◆ 神林は色々考えながら退勤時間になってしまい、まだ、心で迷っている。 今夜も此上は来るのだから、悩んでいては彼に失礼だと自分でも思う。 会社を出て、駐車場へ。 此上の姿をキョロキョロと探す。 「神林君!!」 名前を呼ばれ振り返る。神林の名前を読んだのは此上ではなく、ミサキだった。 「ミサキちゃん?どうしたの?」 どうしたの?と聞きながら、食事の事かな?と思う。 「神林くん、聞いて!!あのね、今日ね、ちーちゃんの部屋に行ったの!!」 ミサキは興奮しながら一気にそう言った。 「へ?千尋の家に?」 「そうなの!!あんなに部屋に呼んでくれなかったのに」 ミサキは声は興奮していたが、顔は嬉しくて堪らないというように目がキラキラ輝いている。 余程、嬉しかったのだろう。 「良かったね」 「うん!!それでね、碧くんを紹介してくれたの。恋人だって!!それも初めてなんだよね。恋人を紹介してくれるの」 「碧ちゃんを紹介されたの?」 「そう!!凄く嬉しい」 「碧ちゃん可愛いだろ?」 「うん、凄く可愛い。素直だし、ドジっ子だし、ちーちゃんも碧くんが大好きって見てて分かるんだ……」 「千尋は碧ちゃん溺愛してるからな」 神林はミサキの前でもイチャついていたのかと笑う。 「うん……ちーちゃんね、優しい顔してるの。笑ってるし……あんな顔出来たんだね……ううん、出来るようになったんだね。ちーちゃんのあんな顔見れると思わなかったもん」 ミサキの瞳は少し潤んでいる。 「うん、俺も知らなかった。千尋、あんな顔出来たんだなって」 「凄く嬉しい。ちーちゃん、いま、幸せなんだね。良かった……本当に良かった」 初めて会った時、無表情で誰とも目を合わせないし、笑わない子供だった。 絶対に笑顔にしてやるってミサキは頑張ってきた。 自分では笑顔にしてあげられなかったけど、ちゃんと笑ってる西島をみて、嬉しかった。 「それとね、また、部屋に呼んでやるって!!碧くんに変な事したら兄弟の縁切るぞっても言われたの。ちーちゃん、私をちゃんと親族だって思ってくれてたんだ……」 ミサキはそういうと涙をポロポロ零した。 「千尋、ちゃんとミサキちゃんを姉だって思ってたよ?アイツ、素直じゃないからさ……照れくさいんだよ弟っていう生き物は」 神林はミサキの頭を撫でる。 「本当に?私の事を姉だって思ってた?」 「うん」 神林の返事でミサキは更に泣き出す。 ハンカチをミサキに渡そうとポケットを探していると、目の前にハンカチが現れた。 んん? 驚いて、ハンカチが現れた方を見ると此上が居た。 うおおお!!! 思わず、叫びそうになる神林でした。

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