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もっと、僕に甘えてください。 21話

「いや、俺がそっち行くから!!」 「えっ?でも……」 「いいから待ってろ。仕事終わってから行く」 「分かった……」 西島はそう返事して電話を切った。 なんか、今日の神林……変だったよな? 妙に気迫あるというか……慌ててるっていうか? 少しの神林の変化に気付く西島。でも、その理由が此上だとはまだ知らない。 「神林が来るって」 隣に居る碧に告げる。 「えっ?今夜ですか?」 「うん」 「じゃあ、美味しいもの作らなきゃですね」 碧は嬉しそうに言う。 「あ、そうだな。飯食うだろうし……じゃあ、スーパー寄って帰るか?」 「はい!!」 碧は元気良く返事をする。 ◆◆◆◆ 「ヘイヘイヘイ!!どーしたよ、神林ちゃん」 目の前に居る佐々木がニヤニヤしている。 「今の西島だろ?何?西島んち行くのか?」 「お、俺んち来るって言うから」 「まあ、来て貰ったら困るよな?此上氏居るし」 分かってて、聞くなよな……と言いたいが言わない。もっと、からかわれそうで。 「でも、キスマークは隠して行った方がいいな。聞かれるぞ」 「え?」 神林は慌てて近くの鏡を取り、姿を映す。 シャツをずらすと確に赤い印がある。 あああっ!!もう!! 見える所は嫌だって言ったのに。 昨夜は激しいというか、かなりやられた。 痛くされたとかじゃなく、長い時間イチャイチャというか、なんというか…… 思い出すと顔が熱くなる。 「なになに?此上氏との情事思い出しちやった?顔赤いぜ?」 鏡を覗き込む佐々木の顔が映る。 「うるさい!!」 「仲良くていいじゃん?で?身体で確かめてどうだった?」 「…………」 無言で佐々木を見る神林。 「相性良いんだろ?で、付き合うのか?」 どうして佐々木はこうも勘が良いのだろうか? 隠してもバレるだろうし、「……まあ……そんな感じ……」と認める。 「へえ~良かったじゃん」 背中をバシンと叩く佐々木。 「お前さ、恋人作らないままジジイになりそうなタイプだからな……此上氏が現れてくれて良かった」 「なんじゃそりゃ……」 ジジイって……まあ、確に特定な恋人は要らないと心のどこかで思っていた。 西島が恋人を作らない間は……ってそう思って。でも、彼は恋人を作ってしまった。 凄く寂しい気持ちと、もしかして……いつか、 西島と……とほんの少し思ってた。何も出来ないくせに……告白さえ、出来ないのにどうこうなれるわけがなく、佐々木の言う通り、年取ってそのまま死にそうだなって、ふと思った。 ふと思った事を更に改めて考えて、「いつか西島と……」となんて考えていたのか俺!!!!と気付きのたうち回りたい気分になった。 なんじゃそりゃ!!!俺って意外と厚かましいんだな。 篤さんに悪い!!!昨日、気持ちを受け入れたのに!!この浮気者。 あ、いや、浮気者じゃないな…… 「おーい、神林戻ってこーい!!」 佐々木の声で我に返る。 「えっ?なに?」 「急に百面相始めるからさ……お前って学生時代からそうだよな?何か考えててると、色々と表情が変わって面白い」 「そんな……わけ……」 ないわけがない。此上に同じ事を指摘されたんだから。 「まあ、複雑なんだろ?此上氏と恋仲になって、西島の事とか?」 ズキンっと胸が痛くなった。 ああ、そうだよな。ちひろの好きだった相手…… ちひろ……どう思うかな? 「だーかーらー!!戻って来いってば!」 佐々木に肩を叩かれ、項垂れる。 「おいおい、今度は落ち込みムードかよ。忙しいなお前は!」 クスクス笑う佐々木。 「西島には碧ちゃんが居る!それにアイツももう大人だ。子供じゃない」 分かってる。分かってるけどどうしても考える。 「お前はさ、他人を先に考える癖やめろ。お前も幸せになっていいんだから。ラブラブ見せつけるくらいになれよ」 なんて、言われても神林は考えてしまうのだ。 「気持ち受け入れたんだろ?そしたら覚悟決めろ!!男だろ?」 佐々木はそう言って肩を叩くと、「じゃーな!休憩が終わる」と部屋を出て行った。 覚悟を決めろ…… 本当にそうだよな。覚悟を決めろ俺!!! 神林は自分自身へそう願った。 ◆◆◆◆◆ 覚悟を決めろ俺!!! そう思っているのに神林は此上に今夜は西島のマンションへ行くので帰りが遅くなると言えずにじっーとスマホを見つめている。 遅くなるって言うだけなのに。 声を聞いたら慌てそうなので、LINEで「今夜は遅くなります」と書いて此上に送った。 すると、直ぐに電話がかかってきて、神林はテンパる。

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