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もっと、僕に甘えてください。 27話

◆◆◆◆◆ 「ちひろさん、僕じゃ神林先生の代わりにはならないと思うけど、僕、頑張りますから!!ちひろさんが寂しくないように頑張ります!!」 碧は何か決心したみたいな表情で西島を見る。 碧の目にも寂しそうに見えて……ヤキモチ妬くというよりも、可愛いと思った。 いつも、完璧に見える大人の西島が小さい子供みたいにしょんぼりとしているのだ。可愛くないはずがない。 「もっと、僕に甘えていいんですよ?」 「おお!!碧ちゃん凄い包容力だね。俺よりきっと、千尋を支えられるよ」 神林はそう言って碧の頭を撫でる。 「いいえ、神林先生程にはいきませんよ。だって、ずっとお友達だったんでしょ?絆ってあるじゃないですか!家族とか……その絆は他人にもちゃんとあるっておじ……祖父が言ってて、その領域は僕には超えられないのを知ってます。だから、僕は僕で……千尋さんを支えられたらいいなって」 ニコッと笑う碧。 その言葉に神林は完全に敗北したと感じた。 自分と西島が築いてきた関係をあっという間に超える事が出来るのは碧だけ。 子供みたいな顔をして、自分より大人だ。 ほんと……碧ちゃんには敵わないなあ。 「千尋、ここは碧ちゃんを抱きしめる場面じゃないか?」 からかうように西島に視線を向ける。 「ばーか、お前が帰ってからやるよ」 「何、照れてるんだよ?今更だろ?俺に散々、碧ちゃんの口説き方聞いてたくせに」 「ば!!ばかっ!!」 神林の言葉で西島の顔がみるみる赤くなる。 「えっ……僕の口説き方?」 碧は大きい目を更に大きくして神林を見ている。 「そう、碧ちゃんに恋したってうるさくってさ、どうやったら嫌われないかとか毎日うるさかった」 「ああ!!!神林ーーー!!」 それ以上喋るなと言わんばかりに大きな声で彼の名前を呼ぶ西島。かなり、焦っている。 「……ちひろさん」 碧の目はうるうると涙で潤んでいる。 嘘……ちひろさんが……ちひろさんが僕の事を相談とか……!! どうしよう!!嬉しい!!! 「佐々木とかにも碧ちゃんにちょっかい出すな!とか釘打ってたしなあ」 神林はニヤニヤ笑いながら話を続ける。 「もうう!!神林やめろ!」 耳まで赤い西島。 からかうとこんなに可愛くなるのか……と神林は嬉しくて、つい、からかうのを止められない。 テンパる西島に、碧がギュッと抱きついてきた。 「ちひろさん、僕……夢みたいです」 「へ?」 「僕……ずっと、片思いで終わるって思ってて、僕も夏姉ちゃんや星夜くんに相談してて……ちひろさんも僕と同じだったんですね……神林先生に相談してくれてたんですね。夢みたいです」 碧は背中に回した腕に力を入れる。 「だって、好きな子をどうやったら振り向かせる事が出来るかとか、俺は良く分からないから……」 初めて人を好きになった時も悩んだ。 悩んで、悩んで……子供だったから上手く解決出来なくて、相手を困らせただけだった。だから、少し、恋愛には臆病になっていた。 「……僕と、同じですね!!嬉しいです。ちひろさんみたいな大人でも、分からない事があるんですね」 碧は顔を上げて微笑む。 大きな瞳に自分が映り込んでいる。 こうやっていつも碧の視線の先に居たいと思う。 「分からない事だらけだよ……大人は余計な事を考えちゃう」 西島もギュッと碧を抱きしめる。 「千尋は特にね、慎重過ぎるくらいだよ。見てて心配だった。でもさ、もう考えなくても良いんじゃないかな?どうして良いか分からなくなったら碧ちゃんに聞けばいい」 神林に言われ、そうだな。と頷く西島。 「ほんと、碧ちゃん、この馬鹿よろしく頼むからね。凄く手がかかる」 「僕の方がもっと手がかかります……でも、僕がやれる事は全部したいです。僕も甘えたいし、僕にもちゃんと甘えてくださいね。約束ですよ?」 再度確認され、西島は照れくさそうに笑う。 「うん、お願いします」 そう返事すると、碧をギュッと抱きしめる。 ほんと、このバカップルめ!!! 神林は抱き合う2人を見つめながら、 此上に無性に会いたくてたまらなくなる。

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