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素直になるって大事ですよ? 2話
◆◆◆◆
「碧」
エレベーターを降りると西島が待っていた。
「ニッシーはほんと、過保護ばい」
諭吉はパシンと尻尾で西島の足を叩く。
「ちひろさん、神林先生の恋人見ました!!!」
興奮したように碧は言う。
「えっ?マジで?なんで?」
西島も興奮したように聞き返す。
「迎えに来てたみたいです」
「マジかあ!!俺も一緒に降りて行ってたら会えたのか……残念、見たかった……っていうか挨拶したかった」
「見極めるとかニッシー言いよったもんな、ワシが見ても良か雄やったばい」
「凄く優しそうでしたよ、スーツで諭吉を抱っこしてくれる人に悪い人はいません!!ちひろさんがそうですもん」
ニコと笑う碧。
悪い人が居ないという基準に自分が入っているという事に照れる西島。
「背も高かったです。なんか東方神起みたいでした」
「東方神起?」
「夏姉ちゃんが好きなんですよ!!ユノに似てました」
「名前は知ってるけど、知らない……」
「後でパソコンで検索しますね」
碧は西島の先を歩く。
「とにかくカッコイイって感じなのか?」
「はい」
即答する碧に複雑な気持ちになる西島。自分以外の男を褒められるのは複雑になってしまう。
「でも、一番はちひろさんだって僕は思ってしまいました。神林先生の恋人もカッコイイんですけど、僕の一番はちひろさんだから」
碧は振り向き照れたように微笑む。
ぬおおおお!!!!こいつめ、抱っこしてやろうか!!ちくしょう!嬉しいじゃないか!!
西島はムラムラする気持ちを部屋まで押さえた。
◆◆◆◆◆
「ちひろさん、この人です」
碧はパソコンでユノを検索。
画面を覗き込む西島。
ああ、見た事ある……確かにイケメン……っていうか誰かに似てる。
じいっと食い入るように画面を見つめる西島。
「神林の恋人の名前聞いた?」
「あ、忘れてました」
碧はウッカリです。っと照れ笑いをする。
似てる……
思い出すとなんか、腹立つ……いや、立たないけど……ただ、あれから連絡の1つも寄越さない薄情な男の顔を思い出していた。
連絡するなって言ったのは自分だけど、でも、それでも世話を焼いてくれたのは彼だった。
子供の頃から甘えてた唯一の大人。
「ちひろさんどうしたんですか?」
黙り込む西島に不思議そうに首を傾げる碧。
「えっ?あ、似てる奴を思い出してた」
「えっ?こんなカッコイイ人、何人も居るもんなんですか?」
驚くように呟くが「あ……居ますね。ちひろさんが」とニコっと笑う。
あああ!!もう、こんにゃろー!!煽りやがってえええ!!!
西島はパソコンの電源を切ると、「お風呂入ろうか?」と碧を誘う。
「はい!!僕、着替え持ってきますね」
碧は嬉しそうな顔で返事をすると、着替えを取りに行った。
◆◆◆◆◆
自分の部屋に此上と一緒に戻ってきた神林。
部屋に着くなり、ギュッと此上に抱き着いた。
「今日は何か甘えたがりだね。嬉しいけど」
此上は神林の頭をなでる。
「ベッドに……って言いたいけれど、風呂入るだろ?」
「もうちょっとこのまま」
神林は回した手に力を入れる。
此上は髪にキスをすると、ギュッと彼を抱き締めた。
甘えると甘えさせてくれる。
本当にこの人は……優しい人。
ちひろが好きになった気持ちが分かる。自分のモノにして、手放したくない。
「篤さん好きです」
言葉にしないと勿体ない。そんな気がして言葉にする。
「知ってる」
此上はそう返す。
やっと、彼が自分のモノになったのだと感じた。
ずっと、ずっと、欲しかったモノ。諦めなくて良かったと此上は思う。
◆◆◆◆◆
「ちひろさん、ずっと何か考えてますね、やはり神林先生に恋人出来ちゃって寂しいんですか?」
湯船の中、膝に抱っこした碧からの質問で我に返る。
ちょっと、懐かしい人の事を考えていたのだ。
「寂しくないっていうと嘘になるな。中学から一緒だったし、俺の世話してくれてた唯一の友達だからな」
「佐々木部長は?」
「アイツは却下!!」
「いい人ですよ?佐々木部長……星夜くんの恋人ですし」
「まあ、あの2人はお似合いだな」
「ですよね!!僕も思います」
碧は嬉しそうに西島の方を振り返る。
「僕も……言って貰えますかね?」
「なにが?」
「僕とちひろさんがお似合いだって」
「似合いすぎると思う、こっち向いて座って」
西島にお願いされて碧は向かい合うように座り直す。
「寂しかったら碧が慰めてくれるんだよな?」
「はい」
「じゃあ、キスして」
キスを要求されて、碧は西島の唇に軽くチュッとキスをした。
「大人のキスがいいな?」
そんなお願いされて、碧は再度西島の唇に自分の唇を押し当てる。
すると、西島の舌が碧の口内へヌルリと入ってきた。
くちゅ、くちゅ、と舌を絡める度に音がする。
ディープキスに碧も慣れてきたのか自分から舌を絡ませてくれる。
エッチになってきたな……
嬉しい西島。
キスを沢山して、「やばい……明日仕事なのに……碧がめっちゃ欲しい」と碧の額に自分の額をコツンと当てる。
「僕も……ほしいです……」
お風呂の熱気のせいなのか、碧の頬がほんのり紅くて色っぽい。
このまま風呂でやれば碧がのぼせてしまう。
身体を素早く洗い、風呂を出た。
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