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もっと欲張りになりましょう 13話

「えっ?部長直々にコーヒーいれてくれるんですか?」 驚く斉藤兄。 「えっ?そんなに驚く事ですか?」 「……なんか、いいですねえ西島部長さん……顔立ちも綺麗だし」 斉藤兄は西島の横に立つ。 「身長も高いし」 そう言ってニコッと笑う斉藤兄も西島と身長が変わらない。 「物腰も柔らかいし」 斉藤兄は西島へ手を伸ばす。 「うちで働かない?」 「は?」 西島は思わず固まる。こいつは何を言っているんだろう?って。 「ホストクラブ経営してるんです。いま、人手足りなくって星夜に手伝って貰おうかと思って来たんだけど、西島部長は話で聞くよりもカッコいいし、知的だし、いい感じ……どうですか?」 「どうですかって……」 西島は顔に手が触れる瞬間に身体をずらして、避けた。 「働くわけないでしょーが!」 と睨んだ。 「怒った顔も綺麗だねえ」 斉藤兄は斉藤に似て、あ、いや、斉藤がこの兄に似てるのか家系なのか軽い感じがする。 「斉藤もダメです!うちはバイト禁止ですから」 「大概の公務員ってそうだよねえ」 ニコッと微笑む斉藤兄。 「分かってるなら誘いに来ないでくださいよ」 「本当は久しぶりに飯でも食いに行こうかと誘いに来たんだよ、あいつ、LINEもメールも電話も最近無視するから、また、変な女に引っ掛かったかな~って心配して」 斉藤兄の言葉に変な女ではないけれど、変な男には引っ掛かってますよ?アナタの弟!と言いたかったが言葉を飲んだ。 「あ、ご飯は無理じゃないかな?体調不良で医務室に行かせたので」 「えっ?星夜ですか?」 「早退させた方がいいと医務室から電話貰ったばかりですから」 「医務室どっちですか?」 途端に斉藤兄は心配そうな顔になった。軽くても兄なのだなと西島は思った。 西島は斉藤兄を医務室へと案内する。 ◆◆◆◆◆ 「斉藤君、起きて……」 神林は斉藤の身体を揺する。 西島に電話したのは早退させるという連絡でもあったが、もし、車で来ているならば借りようと思ったのだ。 西島は車で出勤したようで鍵を後で持ってくると言ってくれた。 斉藤を起こして、西島に車の鍵を持ってこさせようとしているのだ。 「ん~」 斉藤は寝返りをうち、仰向けになった。 「ほら、起きて!」 身体を揺すると、 「ゆうちゃん……」 と両手を伸ばして神林に抱きついてきた。 「こ、こら、俺は佐々木じゃない!!!」 神林が慌てていると、 「神林、入るぞ……斉藤の兄が……」 西島がタイミング良く入ってきた。 「神林……」 西島の目の前にはベッドで抱き合う神林と斉藤の2人。 えっ?あれ?神林の恋人ってコイツ? えっ?佐々木は? えっ?あれ?あれ? 沢山のクエスチョンマークが頭に浮かんだ。 「千尋、違う!違うから!寝ぼけてるんだよ、コイツ!」 神林は自分を見て固まる西島を見て一瞬で理解した。 「あ、ああ、なるほど!」 西島は近寄り、神林に抱き着く斉藤の腕を外した。 「ありがとう」 斉藤から離れてホッと息を付く神林。そして、もう1人誰か居るのに気付いた。 「えーと?」 誰?って顔をして西島を見る神林。 「斉藤兄」 「は?」 「こんにちは、いつも星夜がお世話になって……兄の恵です」 斉藤兄はニッコリ微笑んで挨拶を交わす。

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