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もっと欲張りになりましょう 14話

「斉藤兄?えっ?こ、こんにちは」 神林も戸惑いながら挨拶をする。 「この会社って顔雇用?」 真顔で質問する斉藤兄。 「えっ?」 「西島部長といい、アナタといい……いい感じだから、メガネ取ってみて?」 斉藤兄は神林に近づく。 「メガネ?えっ?なんで?」 どうしてそう言う事を言うのか理解出来ず神林は近寄られて、思わず後ろへ下がる。 「神林もダメです!働きませんから!」 斉藤兄と神林の間に入る西島。 「ちぇ、ダメか」 斉藤兄はフィと横を向く。 「えっ?働く?えっ?なに?」 訳がわからない神林は西島と斉藤兄を交互に見る。 「私、ホストクラブ経営してまして、随時スタッフ募集中で……まあ、1番欲しいのは西島部長なんだけどなあ……」 斉藤兄はマジマジと西島を見る。 「やりません!!」 顔色変えず真顔で返す西島。 「そういうとこいいんだよ!客に誘われても行かない感じで……最近のホストって直ぐに客と寝るんだよね……枕営業って禁止だし、それじゃあ風俗になる。見つける度にクビにしてる」 その説明でスタッフが足りないのはそういう事かと西島は納得。だが、しかし、働く気はない。 「神林も俺も働かない!もちろん、斉藤弟も!」 「はいはい、分かってますよ西島部長」 斉藤兄は西島には微笑む。そして、寝ている斉藤を抱き起こす。 「この前お持ち帰りして良いですか?今日、自分休みなんで看病出来ますし」 神林を見る。 「あ、はい……」 思わず返信する。 「ん……」 抱き起こされて斉藤は目を開ける。 「おはよ、星夜」 弟に微笑みかける斉藤兄。 「おは……えっ?めぐちゃん?」 斉藤弟は兄をじーっと見つめ、ようやく目が覚めたのか、「めぐちゃん!」と兄に抱き着いた。 「星夜、久しぶりだなあ」 兄弟2人の包容に西島と神林はそんなに会って居なかったのか?と思ったが、 「うん、一ヶ月振り」 という斉藤弟の言葉で、一ヶ月かーい!!と心で突っ込みを入れた。 「体調不良なんだってな、俺、休みだから家来い看病してやるから」 「めぐちゃん休みなの?久しぶりの休みでしょ?いいの?」 「ばーか、可愛い弟の看病だぞ?いいに決まってる」 「めぐちゃん優しい」 ニコッと笑う斉藤弟。 「くっ!!星夜……お前本当、可愛い!!」 斉藤兄はギュッと弟を抱きしめる。 あ……他所でやってくれないかなあ? いちゃつく兄弟2人を見つめる西島と神林。 「斉藤、お前、早退していいから帰れ」 もう面倒くさくなった西島はそう言い放つ。 「えっ?西島部長いつの間に?」 ずっと、居たよ……って言いたいけれど会話するのも何だか疲れて頷くだけ。 「早退して良いって言うから行こう星夜」 神林から斉藤弟の上着を受け取る兄。 「じゃーね、西島部長」 斉藤兄は西島に手を振り、斉藤弟を支える。 「お大事に」 一応平静を装い、頭を下げる。 そして、斉藤兄弟が出ていくと、疲れたように椅子に座る。 なんで、こうも兄弟って似ているのだろう? しかも、兄は佐々木タイプ…… ん?待てよ? 西島は斉藤の兄へのあの甘えっぷりはドン引き……いや、凄かった。 ブラコンってやつか? 佐々木に惹かれたのは兄にタイプが似てるから? あ、でも、アイツ、俺に言い寄ってたよな?えっ?じゃあ、俺もあんな……軽そうに見えるって事か? いーやーだあ!!!! 1人悶絶する西島の前にマグカップが差し出された。 「お疲れ様」 ニコッと微笑む神林の顔を見て、なんだか安心した。 良かった……俺の近くにはまだ、まともな人間がいる。 「ありがとう」 西島はマグカップを受け取る。 「なんか、凄いモノみたって感じだったな」 ふふと笑う神林。 「疲れた……」 「だな、気に入られてたっぽいから」 「出来たら気に入られたくないタイプ」 「そうだね……あ、しまった、佐々木に連絡しとかなきゃ」 「いいんじゃないか?斉藤が自分で言うだろ」 西島はコーヒーを飲みながらハア~と息をついた。 ◆◆◆◆ 「そういえば、何でめぐちゃん会社に居たの?」 斉藤兄の車の助手席で質問する斉藤弟。 「ん?最近、星夜が連絡くれなかったから、どーしたのかな?ってな」 「めぐちゃん優しいね」 ニコッと兄、恵に微笑む。弟、星夜。 「大事な弟だしな……何食べたい?」 「ん~あんまり、食欲ないんだ」 「でも、食べないとダメだぞ?じゃあ、お粥作るよ」 恵は星夜の頭をくしゃくしゃと撫でた。

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