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愛されるという事。4話

◆◆◆ やはり自分達の住む福岡と雰囲気が違う長崎。路面電車や上の方に家があったり、石畳だったり、そして異国情緒にあふれている。 観光する所は結構近くに集中しているので車をどこかに停めた方が便利そうなので駅の側で停めれる所を探した。 諭吉は直ぐに疲れたとか言い出すので碧は急遽、諭吉を入れて歩けるリュックをペットショップで買った。中から外が見えるように透明の窓があるタイプ。 狭いとのが好きだから諭吉は入りたがる。 「もう入るのか?」 と西島に言われ「ワシは観光は興味なか、美味い飯だけでよかばい」と諭吉らしい言葉で返す。 「ほんと、しょーがないなあ」と笑う西島。 よいしょとリュックを背負う碧。 「後で交代しよう」 西島は碧の頭を撫でる。 「平気です。諭吉軽いから」 「いや、食ったら重くなるぞ」 「あはは、確かに」 碧は笑い出す。 そんな会話を無視して諭吉はリュックの中でウトウト。 「でも、酔わないかな?」 歩くと揺れるリュック。酔わないか心配になってくる碧。 「酔ったら抱っこすればいいし、酔ったって訴えてくるから大丈夫だろ」 「そうですね」 ホッとする碧。こういう時、言葉が分かると便利だ。 用意は出来たのでスマホで調べた場所まで歩く。 西島と並んで観光というか旅行デートでワクワクしている碧。 一緒に居ても2人の事を誰も知らないから平気。 少しイチャイチャしてもきっと大丈夫。なんて考えてしまう。 でも、流石に手を繋ぐのは……と思う。 やはり、男同士手を繋いでいる人達はいない。男女のカップルか親子連ればかり。 男同士連れ立って歩いている観光客もいるけれど、それは友人同士みたいで手なんて繋がない。 ワガママ言っちゃダメ……困らせちゃう。 碧は繋ぎたい手でリュックのショルダーストラップ部分をぎゅっと掴む。 西島がふと、碧の肩を掴んで引き寄せた。 えっ?と思って西島を見ると碧を車道側から離して彼の内側へと移動させてくれたのだ。 ビュンビュン車が走るから危ないと判断したのだろう。 そういうば、普段も西島も彼が何気なく車道側に居る。 いつも、自分を守ってくれているという事に気付いて嬉しくなる碧。なおの事、手を繋ぎたいとかワガママは言えない。 「ありがとうございます」 嬉しくてお礼をいう。 「何が?」 「いつも、ちひろさんが車道側にいるから」 「そう?」 急な礼にキョトンとしている西島。 「僕、さりげないちひろさんの優しさ好きです」 えへへと笑って頬を染める碧。 西島もこういう事に気がついてお礼を言ってくる碧を羨ましいし、可愛いし、好きだと思う。 西島は彼の頭をグリグリと撫でて「ほんと、碧は俺に我慢という事をさせてくれない」と笑った。 えっ?どういう事?と聞こうとしたら、ショルダーストラップを握っている手を掴み、そのまま手を繋いだ。 ひゃーーー!!!と叫びそうになった碧。 「……手繋いだら碧恥ずかしいかな?って考えててさ」 西島はぎゅっと繋いだまま歩いていく。 碧はブンブンと頭を振りながら「僕、ぼく……あの、ぼくも繋ぎたかったから嬉しいです」と嫌じゃないという事と繋ぎたかったという事を伝えたかったが上手く言えていなかった。 ただ、西島も同じ気持ちで嬉しかった。 手を繋いで歩いていても誰も気にしていない事に気付く。 そうなのだ、自分が気になるから世間の目が気になるのだ。 他の人は自分達の世界に入っているのだから他人なんて気にしない。 手を繋いで坂をあがり、目的地の亀山社中まで歩いた。 いやはや、結構な坂道で若いとはいえ諭吉が重く感じられた。 「碧、交代しよう」 手が離れて背中が軽くなった。 リュックを西島は掴み勝手に下ろさせた。そうしなければ碧はいつまでも彼の性格上、背負っているから。 西島はサッとリュックを背負うとまた手を繋いでくれて歩き出す。 途中、途中の民家の敷地に野良猫が沢山いて和んだ。 猫を見つける度に碧も西島もスマホで写真を撮る。 凄く可愛いから思わず撮ってしまうのだ。 ここの猫達はのんびりしている。きっと、誰も彼らをいじめたりしないのだ。 毛並みも良く、ふくよかなので可愛がられているのだろう。 自由気まま……という言葉が似合う。 登りきって下を見るとなんとも綺麗な風景でこちらも写真を撮りまくった。 西島が碧の側から離れて誰かに話かけていて、どうしたのかな?と思ったら。 「ここ押せばいいですか?」と人の良さそうな男性がこちらを見た。 西島は碧の横に立って「お願いします」とその男性に言う。 2人での写真……。 碧は自撮りで西島と撮ってはいるがこうやって旅行先で2人並んで撮った写真はない事に気づいた。 何枚か撮って貰って西島は男性にお礼を言う。 「後で碧にも送るね」 「はい」 碧は凄く嬉しくて、後でプリントアウトしようと思った。 2人の写真を飾りたい。何故か今日1番のドキドキだった。

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