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もっと欲張りになりましょう 18話
「具合悪いんだろ?」
「大丈夫、帰る」
浴室を出ようとくる星夜の腕を慌てて掴む恵。
「離してめぐちゃん嫌い……何時もは反対しないのに……それにゆうちゃんにチンチン見た事もないのにクソとか悪口言うめぐちゃん嫌い」
腕を振り払おうとする星夜。
「悪かったって!」
「めぐちゃん反対するの?」
恵を見る星夜は涙目だった。
うっ、……やばい、星夜が泣いてしまう。
バカ兄は悲しいくらいにバカ弟の涙に弱いのだ。
「な、泣くな……な?」
「反対するの?」
詰め寄ってくる星夜の瞳はさらに潤んでいる。
ううう!!!ちくしょ!!ゆうちゃんめ!!
会った事もない佐々木に嫉妬する恵。
「反対するんでしょ?もういい!」
答えない恵に痺れを切らし、星夜は強く腕を払い浴室のドアに手をかける。
浴室の中での険悪ムードに気付いた悠紀はその場から避難し、少し離れた所から隠れて観察を続けた。
ドアを開けて浴室を出る星夜の身体を後ろからガッチリホールドした恵。
「わ、わかった、反対しないからとりあえず、落ち着け」
と後ろから言葉をかける。
もう少しで泣きそうな星夜は振り向き恵を見る。
「本当に?反対しない?」
「しないよ!しない!!」
「じゃあ、誓いのチュウ!!」
誓いのチュウはしてしまったら最後、その誓いは守らなければならない。
守らないとめぐちゃん大ッ嫌いとののしられ、その後に二週間近く口を聞いて貰えないという恵にとっては恐ろしい実刑を受けなけれなならないのだ。
恵は躊躇いながらも星夜にちゅっ、とキスした。
「じゃあ、帰らないな?」
「うん……あ、後でゆうちゃんに泊まるって連絡入れる」
く、くそう!!ゆうちゃんめ!!ゆうちゃんめ!!俺の可愛い星夜に……あんな事や、こんな事を……
嫉妬の炎がメラメラと燃え上がるがそれは気付かれないように微笑んで見せた。
星夜の身体を拭いて自分の服を着せてやる。
「髪、乾かそうな」
ドライヤーを手にリビングへと2人で向かう。
星夜を座らせて彼の髪を乾かし始める。
「めぐちゃんに髪触られるの好き……気持ちいいもん」
「俺も星夜の髪触るの好きだぞ」
乾かしながら恵はモヤモヤしている。
まさか、恋人が男だとは……俺以外の男が星夜のアナルに……
あああ!!折角ここまで調教してきたのに。擦り込みを幼い頃から頑張ってさ……そろそろ、食べ頃かな?って思った時に他の男に持っていかれるなんて……
神様……これは何の罰ですか?
恵は答えてもくれない神様へ問いかける程に動揺していた。
◆◆◆◆
「そういえば、斉藤兄が斉藤連れて行ったけど、連絡来たか?」
「は?星夜の兄?えっ?神林が連れて帰ってくれたんじゃ?」
「いや、兄だよ……弟に良く似た、ヤンチャそうな兄だった」
「あ~星夜の兄弟かあ……確か、妹も居るって聞いたな」
「アイツ、妹いるのか……じゃあ、真ん中か」
「兄弟の話はあまりしないけどな。両親はアメリカで妹と一緒らしい」
「へえ~、兄に挨拶しなくていいのか?」
「えっ?うん……そうだな」
佐々木はいつもの軽さがなく大人しく感じる。
「えっ?まさか遊び?」
「……西島はさ、碧ちゃんの親にちゃんと許可取りに行ったんだったよな」
「そうだけど……」
「あ、ここでいい」
佐々木は車を停めやすい場所を指さす。
シートベルトを外し、ドアを開けて降りる佐々木。
「じゃーな、ありがとう」
そう言ってドアを閉める彼は何か考えているように見える。
佐々木と斉藤がどうなろうが西島には関係がない事だけど……
佐々木にはイラつくけれど、でも……
斉藤もチャラいけれど、碧には優しくて良い友達のようだし。
仕事はちゃんと来るし、無断欠勤はしない。当たり前な事だけど、当たり前の事をしない大人は腐る程いる。
斉藤は仕事もそれなりに出来るし、努力もする。ムードメーカーな所もある。
とても、良い子だと思う。口にはしないけれど。
佐々木も長い付き合いで、そりゃあイラついたりするけれど、本当に嫌いだったらとっくに縁は切っている。
まあ……要するに気になる。すごーく、気になるのだ。
斉藤が朝から元気がなかった。体調不良もあるだろうけれど、何か悩んでいるようで……それに、碧の事を聞いてきた。
何か話でもあるみたいな雰囲気だった。
碧の友達だしなあ!!!!
西島はゆっくりと車を発進させ、佐々木の行く先を確認し、近くに空いている駐車場があったのでそこに車を駐車させ降りる。
佐々木……こっちに行ったよな。
彼が歩いた後を追う。
◆◆◆◆
髪を触られ、ウトウトし始める星夜。
「少し眠るか?」
「ん……」
頷く星夜をお姫様抱っこで恵は寝室へ連れていく。
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