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愛されるという事。7話

「えっ?諭吉……」 出た相手が諭吉だったので驚いて名前を呼ぶ。 「えっ?諭吉?」 専務と此上の声が重なる。 「諭吉が出ました……でも切れました」 「何か言ってた?」 此上と神林は諭吉が話せるのを知っているのでつい、そんな事を聞いてしまったのだが「えっ?神林くんって猫と話せるの?」と不思議そうな顔の専務に言われて「あ、いや、きっと偶然に繋がったんじゃないですかね?触ってて」と此上は誤魔化す。 「あー、そうかもね……でも、あの猫ちゃん頭良さそうだから意外と分かってて取ったのかもね」と専務はそう言うと笑う。 その通りです!!と2人は言いたかった。 「あの、すみません、上司に用事あったの思い出して……電話してきます」 此上は専務に頭を下げて、リビングを出た。 もちろん、電話の相手は上司でもなんでもなく碧のスマホ。LINE電話かけると「なんや!さっき、風呂や言うたろーが!」と諭吉の声。若干切れている。 「ごめん、諭吉……電話出れるんだ凄いな」 「なんや、此上か……スマホに出る写真が神林と同じやけん、神林かとおもうたばい」 神林と此上のLINEのアイコンは2人で見に行った咲き誇る桜並木だった。 「あ、漢字読めるのかと思った……写真で覚えてるのか」 「ワシは猫やけん、文字なんかどーでもよか!ばってん、美味しい缶詰とかキャットフードの味とかの文字はわかるぞ!この前、ニッシーが注文しよったけん、頼んだとばい」 「さすが諭吉……で、千尋と碧ちゃんお風呂なのか」 「そうばい!今頃、ちちくりあいよっちゃなかかな?」 「諭吉……お前、どこでそんな言葉を!!」 「まあ、どこでんよかたい?なんか用な?」 「長崎にいるんだろ?」 「そうばい、ニッシーが角煮まんこうてくれんかった!猫にはダメとか言うてさ」 「諭吉、その角煮まんは俺が買ってあげるから俺のお願い聞いてくれる?」 「は!!そうか!此上はよかオスな!なんや、お願いって」 「明日、どこいくつもりなのかなって」 「明日?なんかペンギン水族館とかいいよったぞ?」 「ペンギン?」 此上はもしかして、ケーキ屋にいくのかと思っていた。あんなに美味しいって言ってたし、専務にどこにあるか聞いていたみたいだから。……ペンギン水族館なら違うのかと思った。 「なんで気にするとや?何かあったんか?」 諭吉はこういう時は敏感だ。野生の勘かな?と此上は思う。 「……長崎に千尋の両親が住んでるんだ」 「は?」 「この前、専務がケーキをご馳走してくれただろ?あのケーキは千尋の母親が作ったものだった」 「そのケーキ屋さんにおるとか?ニッシーの親は」 「お店を夫婦で切り盛りしているんだって」 「そうや……」と諭吉が話を続けようとすると「あ、あった!」と碧が戻ってきた。 「諭吉、何やってんの?」 諭吉の下にあるスマホを持つと「碧ちゃん?」と声が聞こえた。 「えっ?此上さん?」 驚いて耳にあてようとするのを誰かに阻止された「おい!邪魔するなよ!此上!碧に電話しやがって!」と此上に怒ったのは西島だった。 碧が温泉の写真を撮りたいと言い出して、スマホを撮りに戻ったのだ。 「千尋……」 「何?様子伺い?それとも土産の催促?」 「違う……あ、千尋」 此上はどうしようかと悩んだ。いま、言う?どうする? 悩んでいると「酒とカステラな!今から碧と風呂入るから邪魔すんな!」と一方的に切られてしまった。

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