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気持ちいい事しません? 7話

「どーした星夜!」 恵はシーツを剥がす。 「めぐちゃん俺帰る」 「えっ?泊まるんじゃ?」 可愛い星夜の突然の言葉に動揺する恵。 「ゆうちゃん明日から出張なんだって!3日も!!3日も会えない!だから、今から帰ってゆうちゃん充電する」 星夜は脱いだスーツを手にすると、着替え始める。 「よ、夜遅いぞ?」 「まだ、電車走ってるよ!それに、3日居ないからゆうちゃんがココに泊まれっていうから着替えも取ってくる」 なに?3日?3日も泊まってくれるのか?ゆうちゃん良くやった!! 「じゃあ、俺が送ってやるよ!その方が早いだろ?ゆうちゃんに一刻も早く会わせてやる」 「ほんと?だからめぐちゃん好き!!」 星夜は恵に抱き着く。 こ、今夜帰したら、きっと抱かれるんだろうけれど、3日一緒に居られるならば、一日くらい貸してやるぜゆうちゃん! 恵は車の鍵を持ち、星夜とマンションを出た。 ◆◆◆◆ 「良い尻してるよなトオル」 シャワーを浴びている神林を見た感想を素直に述べる此上。 「ちょ!」 神林は照れながら此上の方へ視線を向ける。 湯船の中、こちらをガン見する此上。そんなに見られたら恥ずかしくて身体を隠したくなってしまうじゃないか!なんて、思う。 「そんなに見ないで下さい!先に上がりますよ」 神林は視線に耐えられそうもなくシャワーを止めた。 「いいだろ?ずっと見たかった裸をやっと見れたんだから」 ずっと見たかったって……本当にこの人は直球過ぎて困る。 「もし……こんな関係にならなかったらどうしてました?」 「うーん、そうだな、無理やり拉致って監禁して毎日セックスして身体に教え込むかな?」 そう言ってニコッと笑う。 本気か?……毎日セックスって、もうやってるくせに……そんな事を考えたが言葉にはしない。 「それでも、嫌だって言ったら?」 「うんって言うまで離さないかな?」 此上は湯船から上がると神林の側に来て、彼の身体を引き寄せる。 「身体冷えるぞ、もう1回温まって」 抱き締められた胸に顔を擦り寄せる神林。 甘えるような仕草をする彼の頭を撫でる此上。 「本当に君は……」 そう言って抱き締める。 「篤さん……が不足してます……もっと、充電して下さい」 神林は此上の背中に両手を回す。 悩んでも悩んでも、この思いは尽きない……罪悪感ばかりが心に貯まりそうになる。 いつか、この思いを笑えるだろうか?西島に対して罪悪感を感じなくだろうか? 胸がきゅーと締め付けられた。 本当、馬鹿だよな……。彼に未練があるわけじゃない。此上を信じていないわけでもない。ただ、怖いだけなのかも知れない。 此上が好きだった西島を傷つけていたのが自分だから。もし、それを知られたらって、……そして、そんな事を考える自分が嫌になる。 西島は自分を恨んだり嫌ったりしない。分かっていても、どうしても小さな針が自分をチクチクと刺すのだ。 弱虫め!!ってチクチクと責めてくる。 いつになったら、チクチクとした痛みは消えるのだろうか? 此上が神林の顔を覗き込むように自分の顔を寄せてきて、そのままキスをしてきた。 直ぐにヌルりと舌が入ってきて、口内を掻き乱す。 神林も舌を絡めて、此上を求めた。 絡む度にくちゅくちゅと唾液の音がして、離れた唇は細い糸を引く。 「エロい顔」 此上は少し笑って、神林を軽々と抱き上げた。 「湯船で温まるか、人肌で温まるか二択あるけど?」 「人肌で……」 「即答!良くできました」 此上は嬉しそうに微笑んで見せると神林を抱き上げたまま、浴室を出た。 ◆◆◆◆ ああ、くそう!結構良いマンションに住んでるなあゆうちゃん! 恵は佐々木が住むマンションの駐車場に車を止めた。 「じゃあ、めぐちゃん、明日ね」 「着替え持ってきたらいいよ、待ってる」 降りようとする星夜を引き止める。 「着替えはめぐちゃんの貸してよ!スーツとかいいの持ってるでしょ?あれ着てみたい」 「いいけど、下着は?」 「めぐちゃんのでいいよ?えっ?めぐちゃんは嫌なの?」 「い、嫌なわけあるか!」 「じゃあ、いいじゃん」 星夜は車から降りる。 「ゆうちゃんに挨拶したい」 「今日はダメ!1分1秒足りたとも無駄にするわけにはいかないの!ちゃんと紹介するから」 星夜はじゃーね!と手を振ってマンションへと足早に入っていく。 そんなにゆうちゃんがいいのかあ!!! 恵はまだ見ぬゆうちゃんに嫉妬の炎を燃やす。 くそう!!変な野郎だったらソッコーで反対してやるからな。 恵は車を走らせ、自分のマンションではなく、経営する店へと向かった。

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