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信じなきゃダメです 3話

◆◆◆◆ 面倒臭い…… その言葉しか出て来ない。 心配ごとが頭から離れない……だから、余計な事は考えたくないし、やりたくはないのに。 佐々木は面倒くさそうにエレベーターを降りた。 星夜は大丈夫だろうか?朝、出掛けに額を触ると熱は下がっているようだったけれど…… 降りて直ぐのドアをノックすると、中へと入る佐々木。 「早かったな」 中に居た年配の男性にそう言われた。 「用って何?私用で呼び出すの止めてくれない?こっちは仕事なんだけど?」 迷惑そうに言う佐々木。 「こうでもしないとお前は電話は出ないか直ぐ怒って切るだろ?」 その言葉に佐々木はため息をつくと、 「で?」 面倒くさそうに言葉を発する。 この年配の男性は佐々木に父親で、会社を経営しており、今は佐々木にとっては叔父にあたる、父親の弟が社長をしている。 「良い見合い話があるんだよ」 また……それか。 離婚してから、何かにつけて次の結婚相手を見つけてくるのだ。迷惑でしかない。 「断っただろ?」 「諦めると思うか?」 思わない……と心で呟く。 「会社もいつかは……」 「やらないから!そんなくだらない理由で呼んだんなら帰る」 佐々木はくるりと体勢を変える。 「見合い断るなら、お前のとこと取り引きを止めるぞ?」 出た!!!!地味にくる嫌がらせ!!! 本当に腹が立つ……。 佐々木はまた、父親の方へ向きを変えた。 ◆◆◆◆◆◆ 「ほら、星夜、着替え」 星夜をベッドへ座らせて着替えを持ってきた恵。でも、星夜はポスンとベッドに横になり、ダルそうだ。 「キツいのか?」 恵は星夜の額に手をあてた。少し、熱くなっている。 「じゃあ、着替えさせてあげるから、身体起こして」 「めぐちゃん」 「ん?」 「仕事戻るの?」 「着替えさせたらな」 「……分かった」 星夜は少し寂しそうな顔をしながら起き上がると着ているスーツを脱いでいく。 「手伝うぞ」 「ん?いい、大丈夫!めぐちゃん仕事と戻っていいよ」 プチプチとボタンを外していく姿が昔、幼稚園に行きたくないと駄々をこねて、叱られて仕方なく制服に着替えていた幼い頃の彼と重なった。 ほっとけない……。なんだか、凄く泣きそうで元気が無くて、だから、恵は仕事場に電話を入れた。 今日はもう戻れないと……電話を受けた相手に伝える。 出た相手は愁だったので、「どうせ戻って来ないって思ってました」と言われた。 なので、星夜と一緒に居れる。 「戻らなくて良くなったぞ」 恵は星夜の着替えを手伝う。 「めぐちゃん……いいの?」 元気なく見えた星夜が笑顔になる。 それが恵には凄く嬉しい事だった。

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