343 / 526

信じなきゃダメです 5話

佐々木は普段からチャラチャラしていて、悩みなんて無さそうに見える。 学生時代もそうだった。 いつも、能天気でコイツ、将来大丈夫か?と思ったくらい。 自分の事は語らない。だから、彼が何を考えて、何に悩んでいるかなんて分からないのだ。 元妻から話を聞いた。 色々と星夜の事で相談に乗っている事と、佐々木に会社を継がせたくて裏から色々と手を回している事。 いつも、ヘラヘラしている彼から想像がつかなかった。 「あと、頼まれてる事もあるから確認に来たのだけど、まさか呼び出されてるとは思わなかったな、貴方達の会社とお義父さんがやっている会社って取り引きしてるんでしょ?本当にクソジジイでしょ?腹立つわ」 元妻はため息をつく。 「ほんと、可哀想……同情しちゃう」 彼女はそう言うと、「じゃあ、他にも用事あるから帰るわ」 と伝票を持ち立ち上がる。 西島は咄嗟に伝票を彼女の手から取ると、「お支払いします……佐々木の貴重な話も聞けたし」と言った。 「あら、ありがとう……2人とも……彼の助けになってくれたら嬉しいわ」 ニコッと西島と神林に微笑むと手を振って店を出て行った。 ハア…… 2人同時にため息が出てしまった。 初めて知る友人のもう1つの顔。ショックだった。 本当にショック……。 「千尋、帰らなくていいのか?碧ちゃん待ってるんだろ?」 ぼんやりと座る西島に声をかける。 「あ、うん」 慌てて立ち上がる。 「佐々木……ってさ、肝心な事を言わないからな……俺らにはいつの間にか励まされてたり、相談に乗ってくれてたり、あれって自分が雁字搦めだからなのかな?人1倍苦労してるからほっとけない?」 神林の言葉に西島は考え込んだ。 思えば、佐々木は高校生の時、1人暮らしをしていた。そういう理由からだったのか?と今、考えるとそう思ってしまう。 「千尋!」 名前を呼ばれ、肩を叩かれ、我に返る。 「お前、本当、考え込むと何も頭に入って来ないだろ?分かりやすいというか」 「ごめん」 西島は謝ると立ち上がる。 会計をして、店をでる2人。 「斉藤くんの事まで調べているのか……まだ、斉藤くんには話は行ってはいないみたいだけど、あの子が元気ないのはもしかしたら何かしら感じ取っているのかもな。あの子も鋭い所あるから」 「うん、そうだな」 神林の言葉に納得しながら、これから先の2人を心配せずにはいられない。 自分は碧の家族に許しを貰っている。 それは凄く奇跡な事なのだと、今更思った。 ミサキにも紹介出来た。彼女は碧を可愛がってくれるだろう……。 じゃあ、あの人は? 自分を無理やり親から離したあの人はどう思うだろうか? あの人にも佐々木の親の様に力がある。 もしかしたら、佐々木みたいに邪魔をされたりするのかな? そんな事をつい、考えてしまった。 碧を手放したくない。側に居たい。 誰に何を言われても離す気なんてない。 佐々木も同じ気持ちだろうか? 元妻に相談するくらにい大事なのだろう。 佐々木には借りがある。いつも、さり気なく手助けをしてくれて、碧の事も……佐々木は策士なのだと気付く。

ともだちにシェアしよう!