イカされてしまった…… 「後ろ弄っただけでイッちゃうトオルが可愛いよ」 なんだか勝ち誇った顔。 「な、なんか意地悪ですね」 神林は息を荒くしながらに言う。 「意地悪しているように感じる？」 「感じます」 「意地悪するとトオルが可愛くなるから仕方ない」 「は？何ですかソレは！！」 「小学生が好きな子を虐めちゃうのと同じ心理だよ。泣かせてみたいとか、色んな表情を見てみたいから意地悪しちゃうんだけど、嫌われるとは考えていないんだよ、純粋に自分の行動1つでコロコロ表情を変えてくれるのを見たい……」 「……本当、子供ですね」 一応、嫌味で返す。 「トオルが可愛いから仕方ないって言っただろ？もっと、俺の行動1つで表情変えて欲しいし、考えてて欲しい。他の男の事を考えないで欲しい……これが本音。でも、千尋を心配する君も見ているのは好きなんだ」 「矛盾してません？他の男の事考えていますよ？」 「いい表情するから」 「えっ？」 「学生時代から君が千尋を見ている時の顔は凄くいい顔しているんだよ……その顔好きなんだ」 「えっ？えっ？」 意外な言葉に神林は狼狽えてしまう。 「この子は千尋が本当に好きなんだなって……でも、諦めている、そんな顔」 「篤さん」 神林は此上を見つめる。 「千尋……元気無かったのは碧ちゃんの事考えていたからか」 「……多分、千尋も跡取りだし、そもそも千尋を無理やり引き取ったのは何故なんだろ？長男だから？」 此上は知っているのだろうか？神林は探るように聞く。 「さあ？詳しくは知らない。俺は千尋の世話を任せられただけだから」 本当にそうなのか、それとも言わないだけなのか。 無理矢理聞く事は出来ない。 踏み込んではいけない領域。 「トオルはもう平気なのかな？千尋が他の男の事で心配して元気がなくなるのは」 「……それは、恋愛感情が入った心配ですか？それなら、平気です。友達としての心配ならしますけど、一応、自分が千尋の親友だと思っているから」 真っ直ぐと此上を見た。 目を逸らさずにしっかりと。 黙ってした此上がフッと笑って。 「意地悪してごめん」 と謝った。