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信じなきゃダメです 13話
意地悪……
此上からされる意地悪は嫌いどころか嬉しいとか、もうドMだろ?って神林は此上にギュッと抱き着いた。
もう、ドMでいいし!!
「篤さんのドS」
抱き着いた耳元で囁く。
その言葉を聞いて此上は笑う。
「好きな子は虐めたくなるからな、ごめん」
「篤さんになら虐められてもいいですよ、いくらでも」
「えっ?逆に喜んじゃうのか?それはお仕置きにもならないし、虐めがいがないな」
「基本、ドMなんで」
その言葉に此上は笑う。
「自分を追い込んでしまうタイプだもんな、トオルも千尋も……自分で追い込んでしまっても、後でちゃんと這い上がれる、それは凄いよ」
「褒めてますか?」
「褒めてるよ」
「……ありがとうございます」
「素直だね……」
此上は笑う。
「碧ちゃんと引き離されないか心配?」
笑った此上は真顔になる。
「心配ですよ!今、引き離されたら千尋、またおかしくなりますよ?……もし、そうなったら、協力して下さい」
「協力……?」
「あ、篤さんは雇い主を裏切る行為になりますけど、やっと心から笑えるようになった千尋が前みたいに戻るのは嫌だ」
神林は真剣だった。
もう、昔の彼には戻って欲しくない。
いつも、寂しげで何も見ていないような瞳。
その瞳に今は碧が映っている。
それを取り上げられたら、きっと……
「妬けちゃうね、やっぱり……本当に君は煽り上手だ」
「あ、煽ってません!俺は真剣なんです!!友人を助けたいだけです」
「……分かっているよ」
此上は神林の頭を撫でる。
「もし……そうなったら……そうだね。守ってあげるよ、それが俺の役目だから」
此上の言葉に神林はホッとして微笑む。
「じゃあ、俺の命令利いて貰おうかな?」
「は?」
命令?命令って何?
「ほら、等価交換ってあるだろ?代償ってやつ」
フフフと笑う此上。
「えっ?えっ?」
此上はベッドから降りると私物が入った鞄をゴソゴソと探り、ある物を手に戻って来た。
「これ、使ってもいい?」
「はっ?」
見せられたのはバイブと拘束具。
「使ってみたかったんだ……」
ジリジリと近寄る此上から逃げだしたい神林。
「つ、使う気ですか?」
「うん」
ニコッと微笑み、神林の腕を掴むと腕に拘束具を付ける。
「これね、手と脚をこうやって固定するんだよ?」
此上は神林の腕と脚にそれぞれ付けた。
脚を閉じれない体勢にされてしまった神林。
「や、無理です、こんな恥ずかしい」
首を振る神林に、此上は微笑むと、
「可愛いトオルを見たいなって」
「や、やっぱりドSだ篤さん!!こういうの趣味なんですか?」
「うん」
アッサリと認められ、神林はもう逃げられないと覚悟を決めるしかなかった。
◆◆◆◆◆
「ちひろさん?どうしました?」
抱き締めたまま、西島は黙っている。
「ん?何でもないよ、碧を充電してるだけ」
「そうですか……いっぱい充電して下さい」
抱き締めた碧は可愛く微笑む。
可愛い碧……絶対に手放さない。
何があっても手は離さない。
「碧、俺……絶対に碧を手放さないから……ずっと、ずっと、碧と一緒に居たい」
力を入れて言葉にする。
ち、ちひろさん!!
嬉しいです!凄く嬉しいです。
「僕もずっと、一緒に居ます」
「愛してる……何があっても俺を信じていてくれ」
「はい!信じます」
碧は嬉しくて背中に回す両手に力を入れる。
「なーんか、プロポーズごたっけどな、ワシのマグロばくれ!」
2人の足元で諭吉が叫ぶ。
ぷ、プロポーズ……
諭吉の言葉に碧は顔を赤くする。
「ゆ、諭吉のご飯忘れてました」
恥ずかしそうに笑って西島から離れる碧。
「ニッシー、先にマグロくれとったら邪魔せんやったばい」
諭吉は西島の足を尻尾で叩く。
西島はその言葉で笑った。
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