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信じなきゃダメです 17話

◆◆◆◆ 「熱、ないよ!」 「本当に?」 「うん、ほら!!」 星夜は体温計を恵に渡す。受け取った体温計の表示は確かに平熱だった。 「じゃあ、……あんまり無理するなよ?キツくなったら電話する事!」 恵は星夜に約束をさせる。 「りょーかい!」 ニコッと笑う星夜が可愛い。 可愛いから一日中、抱っこしてイチャイチャしたい!!看病という口実で着替えさせたり、触診と偽ってベタベタ触ったり……いや、偽らなくても触るけど。……って計画を立ててたのに平熱になって予定が狂った。 恵は仕方なく星夜を車で会社へ送る事にした。 まあ、どうせ今夜もうちに泊まるし、風呂に一緒に入ってイチャイチャすればいい。なんて考えていた。 ◆◆◆◆ 「ちひろさん……朝食食べないですか?」 「お腹空いちゃってさ、作りながらつまみ食いしたんだよ?碧、早く食べないと遅刻する」 心配する碧にそう誤魔化しながら西島は忙しく動く。動いていないと余計な事を考えてしまうから。 「つまみ食いですか……ふふ、ちひろさん、子供みたいで可愛いです」 碧はニコニコしながら朝食を食べている。 それを見ながら碧の弁当を作る。 「ごちそうさまでした」 碧は手を合わせてペコリと頭を下げて、食べ終わった食器を重ね、シンクへ。 「碧、着替えておいで、食器は洗うから」 「えっ?でも」 「夜、洗って貰うから」 「はい!」 交換条件を出され碧は納得したように着替えに向かう。 ……余計な事は考えない。西島は自分に言い聞かせる。 「ニッシー、ちゃんと食ったんか?」 「ん?食べたよ?」 「いつものニッシーらしくないやっか!いつもは碧と一緒に食うくせに……」 諭吉は野生の勘を持ち合わせているのか何か言いたげだ。 「大丈夫だって」 「ニッシーの大丈夫はワシ、あんま信用しとらんからな!」 「酷いな」 「何か腹に入れとけよ?狩りもできん」 「人間は狩りはしないから」 クスクス笑う西島。 「するやろ?仕事……仕事して、飯食うっちゃけん、そいは狩りやろ?」 あ……確かに!!って思った。 「大丈夫だって」 西島はしゃがむと諭吉の頭を撫でる。 「その大丈夫は自分に言い聞かせよっとやろ?本当にニッシーはしょんなかな」 「んん?しょんなかってどういう意味?」 「仕方ないって意味ばい!無理はすんな!無理そうやったら、逃げるとも良かばい?そやろ?」 「……そうだな」 西島は諭吉の頭をグリグリ撫でる。 「ちひろさん!用意できましたあ!」 碧が戻って来たので、西島は立ち上がる。 立ち上がった瞬間、視界が一瞬グニャリと曲がった気がした。 あれ? 西島は目を閉じて頭を振る。 「ち、ちひろさん!」 異常に気付いたのか碧が慌てて西島の側に来た。 「大丈夫!立ちくらみだよ?碧もなるだろ?急に立ち上がると目の前が暗くなるやつ?」 「……立ちくらみ……」 碧も経験はある。確かに目の前が一瞬だけ暗くなる。 「はい……あります。大丈夫ですか?本当に?」 視界はちゃんと戻っていて、碧の心配そうな顔が見える。 「大丈夫!ヤバイなあ!オッサンになってるのかな?」 西島は笑って碧の頭を撫でる。わざと明るく言って心配そうな碧を安心させる。 「ちひろさんはオッサンじゃあありません!!」 心配そうな顔からいつもの碧の顔に戻り西島はホッとする。 「じゃあ、そろそろ仕事行くか」 「はい!」 「じゃあ、その前に碧を充電させて」 西島はギュッと碧を抱き締める。 「僕もちひろさん充電します!」 碧もギュッと西島を抱き締める。 抱き合う2人を見上げる諭吉は、西島が心配だった。 本当、ニッシーは心ば開かんばい……閉じとっても自分ば追い詰めるだけとに……ドMっちゅうやつだな、ニッシーは!! 2人仲良く出勤していくのを見送る諭吉。 全部、毛玉吐き出せは良かとに……と思う。 色々考えていたら眠くなってきたので、お気に入りの場所へといき、丸くなり眠る諭吉。 ◆◆◆ やばい……頭痛がする…… 西島はとりあえず、頭痛薬だけでも飲もうと神林の所へと向かう事にした。 碧とは会社に着く前に別々に行動する事にしている。勘ぐられても困るし、同性愛に冷たいのを知っているから余計な中傷を避けたいし、碧がそれで傷つくのは嫌だ。 フラフラしながら歩いて行く。 少し、寝かせて貰おうかな?会議は午後からだし。 なんて、考えていた。 ◆◆◆◆ 「碧、おはよ!」 碧が歩いていると後ろから声が聞こえてきた。声の主は星夜。 「星夜くん!大丈夫なんですか?」 振り向いて勢い良く声をかけた。 「うん、大丈夫」 笑顔の星夜を見て、ホッとする碧。 「君が碧くん?」 見知らぬ男性から声をかけられた。 誰だろうと、男性を見る。 西島くらいの年齢で派手めな格好。派手だけれど、男前だ。 「星夜の兄です。よろしくね碧くん」 ニコッと微笑み挨拶された。 「え!!星夜くんのお兄さんですか?」 噂のお兄さん!!確かに聞いた通り、派手で星夜に雰囲気が似ている。 「碧くん、驚くと目がかなり大きくなるんだね?落ちそう」 クスクスと笑う彼は優しそうに見える。 「星夜と仲良くしてやってね」 「は、はい!!こちらこそ!」 碧は勢い良く頭を下げた。 「あはは、碧くん、素直で可愛いねえ」 恵は碧の頭を撫でた。 この子が西島部長の……へえ、ショタコンなんだあ、西島部長。 恵は碧の頭を撫でながらそんな事を考えていた。

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