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大丈夫です、側にいますから。 2話

◆◆◆◆ 会議が思ったより長引いてしまった。 まあ、忙しい方が助かる。 西島は休憩の合間に碧にラインを送った。 『仕事が長引くから部屋で待っていなさい 』 早目に終わらせて、碧の側に行きたいが我慢。 そのまま、会議室へ戻る。 ポケットに入れているスマホが微かに振動しているのに気付き、碧はスマホを取り出す。 ラインが来ている。西島からだと分かると周りを気にしながら開ける。 仕事が長引くという連絡。 ちひろさん……お仕事大変だもんね。 今日も僕が夕飯作ろう!お風呂も用意しなくちゃ……ちひろさんがゆっくり出来るように。 碧はよし!と小さく拳を握る。 ◆◆◆ 「星夜!」 仕事が終わり、碧と会社を出ると恵の声がした。 「めぐちゃん!」 「迎えに来た」 「ありがとう、あ、碧も送って貰っていい?」 「いいよ」 恵はニコッと碧に微笑む。 「こんばんは」 碧は頭を深々下げる。 「こんばんは碧くん、送っていくから乗って」 恵は後部座席のドアを開ける。 「えええ!!!!わ、悪いです!」 何故か1歩後ろへ下がる碧。 「なに?どうしたの?碧くん!お兄さんは怖くないよ?」 恵は愛想良く微笑む。 「いえ、あの、」 遠慮をしているのだが、 「早く帰るとその分部長に手の込んだ料理作れるんじゃない?」 斉藤に耳打ちされた。 西島が仕事で遅くなる話をしていたので、彼なりの気遣いだ。 「美味しい物作ってあげたいだろ?ほら!」 斉藤は碧の背中を押す。 確かに時間短縮にもなる。碧は有り難く後部座席へと乗り込む。 「ありがとうございます」 後部座席から深々と恵に頭を下げる。 「碧くんは良い子だね。ご両親の躾がいいんだね」 恵はそう言いながらキーを回しエンジンをかける。 「いえ、ふ、普通です」 「ふふ、何か緊張してる感じが可愛いね碧くんは」 ミラーで碧を見る恵。 本当、子供みたいで可愛いな。女の子みたいだし……こんな可愛い子と西島部長はエッチな事やってんのかな? いいなあ……あんな真面目そうな顔して、美少年抱いてるって……最高かも! 恵はニッコリと碧に微笑み、車を走らせた。 ◆◆◆◆ 会議はあれから直ぐに終わったのだが、他の処理が残っていて、結局残業になってしまった。 碧を先に帰して良かったと思う。 会社を出て歩いていると、真後ろでクラクションが鳴った。 振り向くとミサキがいた。 何してるんだ?と思った。 「ちーちゃん、送っていこーか?」 西島の真横に車を横付けして窓からミサキが顔を出す。 いい!と断ろうとすると、「千尋!」と名前を呼ばれた。 「神林」 「神林くん」 西島とミサキの声がハモった。 「あれ?ミサキちゃん、なんで?」 「丁度良かった神林くんも送ってあげるよ、乗って」 「えっ?で、でも、千尋と約束してるんじゃ?」 遠慮するように2人を交互にみる。 「してない!」 無愛想に答える西島。 「近くに用事があったの!いいじゃん、送ってあげるよ!ほら、乗って!」 ミサキは助手席のドアを開ける。 嫌だと拒否しようと思った西島だったか、正直、身体がダルい。 歩くと少し眩暈がするのだ。 なので、仕方なく乗る事にした。 でも、乗るのは後部座席で神林を巻き添えにするように先に押し込んだ。 「千尋、お前なあ」 押し込められた神林は文句を言おうとするが、西島が横に乗り込みドアを締められた。 2人が乗ったのを確認するとミサキは車を走らせる。 ミサキの車が会社を出た後、直ぐに後を追うように車が付いていく。 此上の車。 どうしたんだろう?と此上も不思議に思いながら後を追う。 ◆◆◆◆ 「僕、ここで降ります」 何時も寄るスーパーを指さす碧。 「えっ?お家まで送ってあげるよ?」 恵は碧が遠慮をしているのだろうと思った。 「スーパーに寄りたいから」 「ああ、そうか!買った物を運んであげようか?」 「いえ、マンションはここから直ぐなんです!だから大丈夫です」 恵の車は駐車場へと入る。 「本当に大丈夫?」 「はい!ありがとうございましたお兄さん」 碧はニコッと恵に微笑む。 お兄さん……と言われた恵は満更でもない。 ちょっと嬉しい。こんなに可愛い子からお兄さんとかて…弟萌?なんて、考えてしまう。 「碧くん、またね!」 「はい!」 「うち、遊びにおいで、星夜も居るし」 「あ!!そうだよ、今度こいよ」 斉藤も微笑む。 「はい!分かりました」 碧は元気に返事をして車から降りた。 深々と頭を下げ、立ち去ってゆく恵の車を見送った。 見送った後は買出し。 西島の為の料理を張り切って作る!! 碧は意気込んでスーパーへと入って行った。

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