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大丈夫です!側にいますから。 3話

◆◆◆◆ 「ミサキ、道が違う」 車でも行き来をする自宅への道。間違う筈もない。 「だって、ちーちゃん拉致しないと話聞いてくれないもん」 「拉致ってお前」 「電話は直ぐ切るし、ラインとか既読スルーするじゃない!」 「お前がくだらない話持ってくるからだろ?」 「くだらくないもん!」 「ミサキちゃん、前みて!前!!」 反論しようと後ろを見るミサキに慌てる神林。 「話くらい聞いてやれよ千尋」 「うるさい」 あからさまに不機嫌そうな顔になる西島。 こういう所は昔から変わらない。子供みたいだ。 「か、神林くんには当たらないでよ!関係ないんだから」 西島は答えもせずに無言で外を見ている。 あー!!くそ、乗らなきゃ良かったかな?そしたら、碧に早く会えるのに。 「話は聞いてやるから、マンションへ帰せよ、碧が待ってる」 「あ、碧くんと約束してたの?ごめん」 「そうだよ」 約束ではないが、前約があると分かれば開放してくれると判断した。 「本当?話聞いてくれる?」 「聞くよ、だから」 早く帰せと言いかけて、眩暈を感じた。 座っていても眩暈がするなんて…… 「千尋?」 神林は何かに気付いたように西島の名前を呼ぶ。 「なんだよ?」 まだ、眩暈がするが何でもないような素振りを見せる。 「どうしたの?」 ミサキも気にする素振りを見せた。 「聞くから、Uターンしろよ」 命令口調で言う西島。 丁度、大きなレストランが見えて駐車場があった。 ミサキはそこでUターンしようと駐車場へ入る。 西島は何気にレストランへ視線を向けた。 ガラス張りの建物で、明るい店内が視界に入る。それと、同時にある人物も視界に入った。 「ミサキ!ここで止めろ!」 「えっ?」 急に大きな声を出す西島に驚くミサキ。 「お前……嘘ついたな!」 「えっ?なに?」 ミサキはキョトンとして、車を止めた。 止まった瞬間に西島はドアを開けて出て行ってしまった。 何が起こったのか神林もミサキも分からない。 急に怒ったような態度。 神林は西島が見ていた方向をみた。 「あっ、」 見た覚えがある人がレストランにいた。 誰かと食事をしているようだ。 ミサキも神林が見ている方向を見た。 「えっ?嘘、お父さん……なんで?」 ミサキの視界にも食事をする自分の父親の姿が入った。 西島が急に怒ったのは……父親が見えたから。 きっと、嘘ついて連れて来られたと誤解したのだ。 ミサキも知らなかった。父親がここにいるなんて…… 神林は慌てて、西島の後を追う。 ◆◆◆◆◆ ふざけんな馬鹿!! 西島は怒りながら急ぎ足だった。 もし、連れ戻されて会う事になるのは嫌だった。 走っても良かったけれど、身体が怠くて歩くのも精一杯だ。 どこを歩いているか分からなかったが、とにかくあの場所から離れたい。それだけ。 急に目の前が明るくなって、クラクションが鳴った。驚いてクラクションの方を見ると車が直ぐ側まで来ていた。 やばい!!と思った瞬間に「千尋!!」名前を呼ばれて腕を掴まれた。 掴まれた腕を引き寄せられ、間一髪で車が通り過ぎた。 「お前、信号赤だろ!」 自分の名前を呼んで、引き寄せてくれた人物に怒鳴られた。 聞いた事がある声。 懐かしい声。 1度も忘れる事はなかった声。 「此上……」 なんで?なんで……ここにいるのだろう? 「千尋!」 神林の声がした。 神林は西島の後を直ぐに追っていたが、フラフラと赤信号で歩き出した西島に間に合わなかった。 でも、素早く彼の腕を掴んだのは此上。 えっ?いつの間に?と神林も驚いていた。 「なんで?」 西島はゆっくりと此上の方を振り返る。 「赤信号は止まれだろ?ちゃんと教えただろ?」 子供みたいな叱り方。 いや、赤信号の事じゃなくて……なんで、ここにいる?と聞きたかったが、その場に座り込んだ。 「千尋!」 神林が慌てて側に来た。 「お前やっぱ、具合悪かったんだな?」 神林の言葉で此上は西島の額を触る。 「さわんな!」 嫌がる西島だったが、上手く力が入らない。 「トオル、車運転して」 「えっ?」 「そこに停めてる」 此上が視線を向けた方向に車がある。 神林に車の鍵を渡すと、此上は西島をヒョイと肩に担いだ。 ふわりと身体が浮いたと思ったら身体が反転したように視界が変わった。 視線の先はアスファルト。 えっ?あれ? 何が起こったか直ぐには理解出来なくて。 気付くと誰かの車の後部座席に突っ込まれていた。 「な、なに?」 何が何だか分からないけれど、自分を押さつけてる此上が上にいる。 「お前、熱すごいぞ」 「は?」 「だから、このまま病院にいく」 「何勝手な事」 西島は押さえつけられた手をはらおうとするが力が入らないし、この男はボディガードも兼ねていたから、力が強い。 「道は?」 神林が後ろを覗き込む。 「そのまま進めば大きな病院がある」 「分かった」 神林はエンジンをかけて、車を走らせた。 「いやだ!病院はいかない!神林、車停めろ」 「停めなくていい」 「ふざけんな!離せよ此上」 「やーだね!離して欲しかったら自分で振り解けばいいだろ?」 コノヤロー!!と西島はイラッとくる。 「子供か!」 「千尋がな!」 ジタバタしても振りほどけない。 眩暈がまた襲ってくる、 気持ち悪い…… 「吐きそ……」 「えっ?」 此上と神林の声がハモる。

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