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大丈夫です!側にいますから 6話

「碧ちゃん、ご飯食べよおいで」 寝室に神林が呼びに来た。 「で、でも」 心配そうな碧。 「碧ちゃん、千尋が心配ならまず、君が元気じゃなきゃダメなんだよね……ちゃんとご飯食べて、体力つけないと看病もね、体力使うんだよ?」 此上は碧の頭を優しく撫でる。 「はい」 素直な碧は返事をして、寝室を出て行く。 千尋、彼くらいに素直だったらな……。でも、素直じゃないのが千尋なのかもな。 「本当、何時まで経っても世話の焼ける奴」 此上は笑って西島の頭を撫でた。 ◆◆◆◆ 料理は温め直されていた。 「俺も一緒に食べていい?この量なら余ってしまうから」 神林は碧と向き合って座る。 「はい!1人で食べるのは寂しいから……あ、神林先生の彼氏さんは?ご飯食べてますか?」 碧が言う彼氏さんと言う言葉に照れる神林。 そうか、彼氏さんなのか……他人に言われて恋人である事を実感するというのは照れる。 「き、聞いてみるね」 神林は此上を呼びに寝室へ。 寝室へ行くと西島の側に居る此上が視界に入って……何となく声をかけにくい雰囲気を感じた。 西島を見る彼の顔が優しくて。 自分を見ている時も優しい顔はしてくれるけれど、西島に向けられるものと、自分に向けられる表情の違いを見た感じがして、声をかけられないのだ。 子供時代、当たり前に此上は西島の側に居て、彼を守っていた。あの頃、此上が西島を今みたいな顔で見ていた。 あの時、特別な感じがして、少し羨ましかった。 2人の中には入れない……そんな特別な空間。 「トオル、どうした?」 此上が神林に気付き、声をかける。 「あ、うん、碧ちゃんがご飯たべませんか?って」 「ああ、なるほど……本当、あの子は凄いね」 此上は立ち上がると神林の側に来た。 「そんな顔するな、千尋は大丈夫だから」 此上の手のひらが神林の髪をくしゃくしゃと撫でる。 「うん」 もちろん西島も心配だけれど、今、心配そうな顔をしているとしたら……此上に向けられた顔。 2人の間には入れないかも……という寂しさと……自分のワガママ。 ◆◆◆◆ 「あ、あの、えっと……」 碧は此上を見ながら、名前は何と言うんだっけ?と戸惑っていた。 「あ、此上でいいよ碧ちゃん」 碧の気持ちを察したのか名前を言う。 「此上さん……あの、ありがとうございます。神林先生も……」 碧は2人に深々と頭を下げる。 「2人が居なかったら僕、パニックでした」 「ふふ、驚いちゃうよね」 神林は碧に微笑む。 「ぼ、僕、ちひろさんを看病しますから……あの、2人は……お家……」 帰ってもいいですよ?と言いたいけれど、神林は会社の医務室の先生。居てくれると心強い。でも、迷惑かな?と悩んでしまう。 「碧ちゃん、もし、良ければ俺が夜は看病してるよ?碧ちゃん仕事あるでしょ?」 此上が申し出てくれた。 「うん、碧ちゃんが良ければ俺も残るよ?1人で不安だろ?」 神林も優しい言葉をくれる。 嬉しい!!凄く嬉しい。 看病はされた事はあっても、した事はない碧。 「い、いいんですか?」 碧は感謝で涙目になる。 「碧ちゃん……ほら、大丈夫だからね」 神林が碧の側にきて、頭をよしよしと撫でてくれた。 「はい……ぼ、僕……ちひろさん早く元気になって貰いたいです」 「うん、そうだね」 「じゃあ、ご飯食べたら碧ちゃんはお風呂入っておいで?」 「は、はい!」 素直な碧は食事を済ませるとお風呂へと向かう。 「本当、可愛いね」 此上は碧を見て微笑む。 うん、碧ちゃんは可愛い。強くて、素直で……千尋が選んだだけはある。なんて神林は考えていた。 ◆◆◆◆◆ 「碧、大丈夫や?」 浴室で服を脱いでいると諭吉が来た。 「諭吉いいい!」 碧はしゃがみ込むと諭吉を抱きしめる。 「こら、碧、風呂に入らんか!お前まで風邪引くばい」 諭吉に叱られ、碧は素早く浴槽に入る。 何時もは西島と入るから風呂場が凄く広く感じた。 諭吉はピョンと浴槽の縁に飛び乗る。 「ニッシーは大丈夫ばい!元気だせ!」 「うん、僕がしっかりしてないとダメだよね?ちひろさんに心配かけちゃう」 「そうばい!神林がおってくれるとやろ?ニッシーも子供やなかけん、熱も直ぐに下がる!」 「うん」 碧はじわりと涙を浮かべる。 やはりショックだった。 西島が抱き抱えられて、帰ってきた時は。 もし、部屋で倒れられたら自分はどうしただろう?泣いてるだけ? 神林と此上の2人は冷静で神林はお粥の作り方も教えてくれた。 大人って凄いなって思った。 パニックになりかけた自分をちゃんと気をしっかり持つようにしてくれた。 有難い存在。 僕!!もっと、しっかりしなきゃ!! これからだって、西島が倒れない保証はない。 それだったら、あの2人みたいに冷静に行動出来るようにならなくちゃ! 「諭吉、僕!泣かないから!」 そう決心して浴槽に浸かる碧だった。

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