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大丈夫です!側にいますから 7話
◆◆◆◆
風呂から上がり、服を着て鏡を見る碧。
自分を見つめながら、『僕は大丈夫!ちひろさんが治るまでシッカリするから!僕、頑張れ!! 』と喝を入れる。
「お風呂、神林先生や此上さんもどうぞ」
碧がそう言いながら戻ってくると、神林が食事の後片付けをしていた。
「わあ!神林先生、ごめんなさい」
慌てて、キッチンへ。
「ふふ、いいんだよ。俺達も食べたんだから」
「ありがとうございます」
碧はお辞儀をしてお礼を言う。
「碧ちゃん、ベッドは千尋と一緒に使ってるんだろ?寝る所ある?」
寝る所……で碧は神林と此上の寝床の用意をしなければ!と思い出した。
「神林先生と此上さんは僕が持ってきた布団使って下さい!僕はちひろさんの側に居たいから」
「布団あるの?じゃあ、それをベッドの横に敷いたら?俺達がソファーでいいよ」
「だ、ダメです!お客さんに」
「碧ちゃん、床で寝たら身体痛いし、風邪引いちゃうでしょ?ここのソファーフカフカだし、使わせて貰うよ?」
神林の優しさに碧は言われた通りにする事にした。
人の好意は素直に受ける。親や祖父達に教えられた事。
「はい。毛布とかありますから」
神林達の寝る場所を用意すると西島が寝ている寝室へ。
「此上さん、お風呂入りませんか?」
「碧ちゃん」
風呂から戻ってきた碧を笑顔で迎える此上。
「あの、ソファー使って下さい、毛布とか用意しました」
「ありがとう」
此上は場所を碧に譲る。
西島の顔が良く見える位置だ。
「碧ちゃんはどこで寝るの?」
「ここに居ます……布団あるから」
「千尋の側に居たいのか……」
可愛いなと此上は頭を撫でる。
「ちひろさんと付き合う前……僕、熱出して……その時にちひろさんに看病して貰ったんです。だから、今度は僕の番です」
「そうか、碧ちゃんは健気だね。千尋、だいぶ、落ち着いてるから大丈夫だよ」
碧が安心するように言葉をかける。
「本当ですか?」
「うん、俺はお言葉に甘えて風呂に行くから碧ちゃん側に居てあげて」
「はい!」
元気に返事をする碧。
此上は気を利かせてその場から離れた。
此上がその場から離れると西島の様子を伺うように顔を覗き込む。
熱のせいか頬が赤い。
その頬に触れる……、熱い。熱が碧にも伝わってくる。
額には熱を下げるシートが貼られていて、そのシートの上から触ってみた。
凄く熱く感じて、不安になるが此上は大丈夫だと言っていた。
病院にも行っているから大丈夫……なんだよね?
不安だけど、あまり心配して騒いでも迷惑なだけ。
「ちひろさん……」
大丈夫ですよね?と名前を呼ぶ。
碧の声に反応するようにピクリと身体が動いた。
「ちひろさん?」
目を覚ましたのかな?と名前を呼ぶ。
「あおい……」
呟くような声。
「ちひろさん、大丈夫ですか?」
目を覚ましたのかと顔を見つめる。
「……あおい……どこ……」
西島の手が何かを探すように動く。その手をしっかりと握る碧。
「ここにいます!」
すると、西島が目を開けて碧を見ている。
「ちひろさん、僕、側にいますよ?」
「うん……良かった……」
そう呟いて西島はまた目を閉じた。
「ちひろさん……?」
名前を呼んでも寝息が聞こえるだけ。
寝惚けていたのか熱でうなされているのか……碧は西島の熱い手をぎゅっと握り締めて、「僕、ここにいましから大丈夫ですよ?」と声をかけた。
◆◆◆◆
1人になるのが本当は嫌で怖くて泣きたくて、真夜中、目を覚ますとやっぱり1人で……
泣いても誰も来てくれない。
自分を自分で守るしかなくて、シーツの中に隠れるように頭からかぶって心臓を守るみたいに身体を丸めて眠っていた。
「千尋」
真っ暗な中、名前を呼ばれた。
知っている声。
「此上」
自分の名前を呼んだ相手の名前を呼ぶ。
「おいで、一緒に寝よう」
「此上」
シーツから出て彼に抱き着いた。
「大丈夫だから」
その言葉に安心出来た。
でも、その安心をくれる人は居なくなってしまった。
1人はいやだ……
真っ暗な中、丸くなっていると「ちひろさん」と名前を呼ばれた。
愛しい人の声。
「あおい?」
どこだろう?手を伸ばして探してみる。
すると、ぎゅっと手を握られた。
知っている感触。
自分より小さくてかわいい手がぎゅっと握ってくる。
「あおい……どこ?」
「ここにいます!側にいます!」
その言葉に安心できた。
ああ、碧が側にいる。もう、怖くない……1人じゃない。
良かった……凄く嬉しい。
西島は嬉しいと言葉にしたかったが、眠くて、眠くて……そのまま眠ってしまった。
◆◆◆
「碧ちゃん健気だね」
此上が寝室から戻ってきて神林に声をかける。
「きっと、本人はいっぱいいっぱいなんだうけど、シッカリしなきゃって思ってるみたいですよ」
「うん、そんな感じがする」
「篤さん、お風呂、先に入りますか?」
「いや、トオルと一緒に入る」
「は?」
「は?じゃない、一緒に入る」
此上は神林の腕を掴む。
「待って、ここ、千尋の部屋」
躊躇する神林にニヤリと笑う此上。
「なに?何か期待とかしてる?」
「し、してません!」
「してるんなら、その期待に応えてもいいけど?」
「だから!してません!」
言い張る神林。
「なら、一緒に入ってもいいよな?」
やられた!!と思ったが引き摺られて風呂場へと連れていかれた神林だった。
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