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大丈夫です!側にいますから。8話

◆◆◆◆ 「ほ、本当に一緒に入るんですか?」 風呂場まで連れて来られたのに往生際が悪い神林。 「一緒の方が節約にもなるだろ?」 此上は服を脱ぎながらに言う。 「それはそうですけど」 「ほら、脱いで!」 此上は神林の服に手をかける。 「じ、自分で脱ぎます」 「やっぱり一緒に入りたいんだ!」 クスクス笑う此上。 うう、この人はこうやってからかうの好きだからな…… 神林は仕方なく服を脱いだ。 ◆◆◆◆ 「それにしても千尋の住んでる部屋凄いな浴槽がデカイ」 此上の感想。 「ですね……千尋、風呂にはゆっくり浸かりたいとか言ってました」 「碧ちゃんと仲良く入っているって事か」 その言葉で神林は屋上でみた光景を思い出してしまった。 こ、ここでもやってんのかな? 想像したらヤバイ!!! 「トオル?」 俯き黙る神林の名前を呼ぶ。 「えっ?」 「えっ?じゃない!ほら、抱っこ」 此上は浴槽に浸かり、神林の方へ両手を広げる。 「ちょ、な、何もしないって」 「抱っこってしか言ってないけど?それともトオルは何かしたいの?」 神林の様子を伺うような視線。 「ち、違います!」 神林は浴槽へと入る。 「はい、上に乗って」 「……」 「抱っこだろ?」 おいでと手招きされ、此上の膝の上に背を向けて座る。 座ると後ろから抱きしめられた。 「篤さん!!」 何かされるのかと彼の名前を呼ぶ。 「抱きしめてるだけだろ?」 うっ!!そうだけど……何でかドキドキが止まらない。もしかして、何か期待とかしてるのか?と自分に問い掛けてしまう。 「トオルがずっと、寂しそうな顔をしてるのが悪い……イジメたくなる」 「は?何ですかソレ!!」 「可愛くてって意味」 「さ、寂しそうな顔なんてしてませんって!」 「してる!自分では気付いてない?」 「……知りません」 「本当、碧ちゃんといい、トオルといい……千尋を好きな子の共通点は健気」 「は?」 神林は思わず後ろを振り向く。 「健気で素直で可愛い……碧ちゃんを選んだ千尋はきっと、見る目あるんだろうけれど、俺からするとトオルの魅力に気付かなかった千尋はアホだ」 「何言って……」 「でも、トオルを選ばれたら俺が困った……千尋から奪わなきゃいけないから」 「篤さん……急にどうしたんですか?」 「トオルが寂しそうな顔をしている原因が千尋じゃなくて俺なら良いなって思っただけ」 見抜かれているのかな?と神林は思った。 西島を見る顔が優しくて……2人の中に入れないっていじけてしまった心を見抜かれてしまったのだろうか? 「千尋は弟みたいな感情でしか見てない……」 その言葉でああ、やはり見抜かれていたのかと思った。 「……ヤキモチですかね?この感情は……篤さんと千尋の特別な関係に少しヤキモチ妬いてしまったのかな?」 神林は素直に告白した。 「ヤキモチであって欲しいね俺としては」 此上は神林の後頭部に手を置くと自分の方へと近付けキスをする。 そのキスで魔法みたいにいじけて小さくなっていた心がフワリと花咲かせるみたい元気になってしまった。 単純だな?って思う。 そして、やはり此上には敵わないと思ってしまった。 ◆◆◆◆ 「碧、ニッシーはどうや?」 諭吉が側に来てくれた。 「大丈夫だと思う」 「大人やけん、熱くらいじゃどがんもならんやろ」 「うん……」 碧は西島を見ながら返事を返す。 「なあ、碧……ニッシーはきっと、まだ、甘え足りんとかもな」 「えっ?」 「ニッシーの中に親とはぐれた時のままの小さかニッシーが眠っとって、たまにソレが起きて誰かに甘えとおて出てきて大人のニッシーば困られよるとかもな」 「子供のちひろさん?」 「そう、子供ニッシーばい!たまに碧に甘えてくる感じがするやろ?」 「うん」 「それは子供ニッシーやないか?」 「……そうなのかな?じゃあ、僕はどうしたらいいの?」 「決まっとるやん、甘やかすとさ!ベロンベロンに甘やかしてやれ!そしたら元気になる」 「甘やかす……の?」 「碧も小さい時……まあ、今もけど、じいちゃんやら、父ちゃんやら、お兄ちゃんらに甘えてたやろ?抱っこして貰ったり、遊んで貰ったら寂しくなくなって元気になったやろ?それと同じばい」 「ちひろさん抱っこされたがってた!」 「碧がたまにニッシーの頭ば撫でるやろ?あん時とか嬉しそうな顔しとるばい?」 「そうなの?……僕も頭撫でられるの好き!」 「やろ?ニッシーもそうばい!大人になると頭撫でられる事無くなるしな」 そ、そうか!!ちひろさん……甘えたいのか!! 僕、ベロンベロンに甘やかします!! ちゃんと、頭撫で撫でもします!! 子供のちひろさん……そうだ。ちひろさんは子供の時に大好きなお母さん達と離れ離れになったんだ。 1人ぼっち。 凄く寂しかっただろうな? 甘えたかっただろうな…… 僕がいっぱい抱っこしてあげます! 碧は西島の手をぎゅっと握る。 「ちひろさん、僕は何時でもちひろさんから離れませんよ?一番大好きな人だもん!いっぱい僕に甘えて下さい」 耳元で囁く。 「あと、ちゃんと、怒ってもやれな?」 「えっ?優しくするだけじゃダメなの?」 「そうばい!躾!猫もちゃんと親からダメな事とか教わるとぞ?甘やかすだけやったら生きていけん!ダメな時は怒ってやれ!」 「う、うん……」 そ、そうか飴とムチって感じかな? 僕だって、たくさん怒られたもんね。 でも、それは意地悪とかじゃなくて……ああ、そうか諭吉の言う通りだ。 怒られた後、みんなを嫌いにならなかったのは怒るも愛情だからかあ。 「諭吉は凄いね」 碧は諭吉をみて、微笑む。 「碧より、年上ぞ?ニッシーよりもな」 「うん、そうだね」 碧はクスクス笑う。 「元気になってきたな碧も……しょんぼりしとるよりも笑ってる方が力の湧くやろ?」 「うん!」 「なら、笑ってると良か!」 「うん!ありがとう諭吉」 「おう!お礼はマグロで良かばい」 「ふふ、明日買ってくるね」 碧は諭吉の頭を撫でた。

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