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大丈夫です!側にいますから。10話
◆◆◆◆
碧は夢をみた……
自分が大人になって此上みたいな逞しい身体になり、西島を守る騎士になる夢。
「えへへ、ちひろさん……ぼく……ナイトさまです」
なんて寝言を言って此上と神林を和ませた。
◆◆◆◆
「まぐろおおおお!!!!」
早朝に響く諭吉のマグロコール。
その声で碧は目を覚まし、神林と此上は驚いた。
「えっ?マグロって言った?」
此上はキョロキョロと辺りを見る。
「諭吉です。マグロが好きなんで……お腹空いたのかな?」
寝室に入ってきた諭吉を抱き上げる神林。
「諭吉……ご飯」
碧がフラフラと起き上がる。
「碧ちゃん起きちゃった?諭吉にご飯はあげるから碧ちゃんは顔洗っておいで?」
眠そうな顔で頷く碧。でも、また、コテンとその場に倒れる。
「まだ、時間早いからな」
クスクスと笑う此上。
◆◆◆
「マグロあるかな?」
神林は冷蔵庫の中を覗く。
「マグロううう」
諭吉は神林の腕からピョンと飛び降り、冷蔵庫の中へ顔を突っ込む。そして、奥からマグロが入った容器を口に咥えて引っ張り出した。
「凄いね諭吉」
神林はその容器を取り、諭吉専用の皿にマグロを乗せた。
「マグロばい!」
諭吉はガツガツとマグロを食べる。
ん?マグロばいって言った?
神林は諭吉の頭を撫でながら首を傾げる。
「諭吉はマグロ好きだねえ……ふふ、可愛い。千尋も凄く可愛がってるもんな」
諭吉はマグロを平らげて口の周りを前足でゴシゴシと擦っている。その姿が凄く可愛い。
「猫……飼いたくなっちゃうなあ」
諭吉は神林の手をペロりと舐める。
「本当、可愛い!!」
諭吉の頭を撫でる。
「美味かったばい」
諭吉はスルリと神林の手からすり抜けて行った。
んん?いま、何って言った?
あれ?きのせい?
神林は首を傾げながら立ち上がる。
「朝食作らなきゃ!!」
神林は不思議そうな顔をしながら朝食を作り始める。
朝食の匂いが寝室にも届く。
碧はその匂いで目を覚ます。
ちひろさん?
毎朝、自分より先に起きて朝食を作ってくれる西島。碧は西島かと思い起き上がる。
「起きた?」
此上の声。
ベッドへ視線を向けると西島が眠っている。
そうだ!ちひろさん熱出してるんだ!!
「ち、ちひろさん」
ベッドの側に行く。
「熱は下がってきてるよ?大丈夫」
「ほ、本当ですか?」
碧は西島の額に手を当てる。
確かに昨日よりは熱くはない。
「碧ちゃん、顔洗っておいで、トオルが朝食作ってるから」
この匂いは神林先生だったの?あ!!ちひろさんのお粥!!
碧はバタバタと急いでキッチンへ。
「おはよ、碧ちゃん」
「か、神林先生おはようございます!あの、ちひろさんのお粥」
「ああ、作りたいって言ってたもんね。うん、一緒に作ろうか?でも、その前に身支度しておいで」
「は、はい!」
碧は素直に洗面所へ顔を洗いに行った。
「本当、素直だな」
後ろ姿を見送りながら和む神林。
◆◆◆◆
身体が熱くて、喉が渇く。
そして、このだるさ……寝返りを打って西島は目を開けた。
……ここ、どこだっけ?
ボンヤリとした視界には見なれた部屋が映る。
俺の部屋?
あれ?いつの間に……どうしたっけ?
ミサキと会った、でも、会いたくない人に会った。
そして、懐かしい人にも会った。あれ?夢だったのかな?
でも、言い合ったような?
「此上……」
「なに?」
返事が直ぐに来た。
へっ?
声がした方を見ると此上が居る。
んん?あれ?夢?
「どーした?」
顔を覗き込まれた。
「喉渇いた」
とりあえず、今の自分の要求を言葉にする。
「待ってろ」
髪をクシャクシャに撫でられた。
感触があるから、夢では無さそうだ。
「ニッシー大丈夫や?」
ポスンと諭吉が上に乗ってきた。
「諭吉」
諭吉は西島の額に肉球を当てる。プニとした感触と冷たさを感じた。
「碧が心配しとったぞ?」
「碧……なんで?」
「熱出してるけん、此上だっけか?抱っこされて帰ってきた」
「は?」
「意識なかったもんな」
「今なんて?此上になに?」
「抱っこされとったぞ?お姫様抱っこ、碧の好きなやつ」
「はあああ?!」
西島は思わず叫んでしまった。
「千尋、どうした?」
此上が西島の雄叫びを聞いて慌てて戻ってきた。
マジで?此上に抱っこ?
「此上……」
「どーした?」
近くにくる此上。
「なに碧の前でお姫様抱っことかしてんだよおおお!!!」
思わずシャウトする。
恥ずかしさで死ねる!!枕に顔を埋めて足をバタバタして、恥ずかしさに悶えるレベルだった。
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